お世話になっております。
会社法、改正されるされると言われながらも、ずるずるとここまで来ています。
一昨年の秋に、会社法改正されますよ~とこのブログにも書いていたのに・・・
ようやく昨年の11月に改正法律案が国会に提出されたので、そろそろ改正点について、少しずつですが小さな論点でも実務に影響しそうな部分を拾って行きたいと思います。
さて、昨夜、増資することになったという社長様からご連絡いただき
急遽書類を見てほしいとのことで、午前中はその書類のレビューをしておりました。
VCからの投資を受けるというもので、議事録は先方が下書きしてくれた模様。
さて、非公開会社が増資して新株発行するときの手続きですが、
募集事項(何株発行し、いつまでにいくら払い込んでもらうか等)を株主総会(または委任を受けて取締役会)で決議した後、会社法上の原則は、
①株式を引き受ける者への募集通知
↓
②引き受ける者による申込み
↓
③申し込みがあった者への割当て決議(取締役会、取締役会を置かない会社は株主総会)
↓
④割当て通知(払込期日の前日まで)
↓
⑤払い込み期日をもって出資
という手続きを踏むことになっています。
ただし、これには特則がありまして。
発行会社と出資して株式を引き受ける者との間で「株式総数引受契約」を結べば、①~④を省略することができます。
よって、初めから誰がいくら出資してくれる、ということが決まっている場合は(というか、多くは決まっています。)、引受契約方式の方がぐんと楽なので、実務上よく使う手法であります。
ここで注目すべきは・・・
契約方式にすれば、③の割当て決議まで省いてしまっていいのか?それはなぜか??
ということです。
というのも、譲渡制限株式の場合、株式を譲渡する際には必ず取締役会や株主総会など定款で決められた機関の承認を得なければなりません。会社のあずかり知らない所で自由に株式を譲渡されてしまうと、会社にとって好ましくない株主が流入してきてしまう可能性がある、という趣旨からほとんどの非上場の会社がこの譲渡制限をつけています。
しかし、新株発行の際にはこの引受契約方式を使うことで、誰に株式を割り当てるか?という割当決議を経ずに、契約を締結する代表取締役の権限で新たな株主が入ってくるということになってしまいます。
株式の譲渡と新株発行の引受契約方式時とに差を設ける理由がない、という疑問の声は立法時から出ており、私も「確かに。」と思っておりましたので、会社法上必要ではないけれど、引受契約で行うときでも募集事項の決議の中に割当者のお名前を盛り込んでしまうか、次号議案で引受契約締結の承認議案を別で設けて、そこで誰に割り当てるか、という決議をする形で議事録を作っていました。
今回、会社法の改正で、この部分の是正がされる予定です。
「株式総数引受契約を締結する場合でも、譲渡制限株式の場合は契約承認決議が必要!」と覚えておいてください。ただし、「定款に別段の定めがある場合はこの限りでない。」という但書きつきなので、定款でこの契約承認の決議を排除したり、承認機関をアレンジしたり、とういことが可能になると思われます。
あまり大きな話題にはなっていない部分ですが、実務上はこのようなシーンはかなり多いと思われますので、要注意です。
●改正案(2項新設)
(募集株式の申込み及び割当てに関する特則)
第205条 前2条の規定は、募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。
2 前項に規定する場合において、募集株式が譲渡制限株式であるときは、株式会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、同項の契約の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。