秋晴れの休日


地域住民主催の秋の祭に、兄の健一とやってきた


夏の花火大会は仕事、先日の拓篤の家の近くでの秋祭りは親戚のおじさんに捕まり飲み明かし


そんなこんなで、健一と一緒に年中行事を何もしていなかった




「何食べたい?」


健一は目を輝かせながら、少し背伸びをして前にいる人混みの先を見ようとする


「何がある?」

と問いかけた時、何かを発見したのか


「ちょっと待ってろ!」

と言って、人の群れを掻き分けて健一が入っていった




少しした後、消えていった人の中から飛び跳ねるように出てくる


空に向かって伸びる糸を手にし、糸の先には青空に栄える赤い風船


「ほら!」


笑顔で突き出された糸に


「何で風船?」

と問い掛けた


すると、拍子抜けしたのか、受け取られない風船を健一は見つめる


「お前、赤い風船好きだろ?昔、よく赤い風船欲しいって、遊園地とかで言ってたから」


そんな昔のことを覚えてはいない


それに、風船を貰って喜ぶ歳でもない


ましてこの風船は……


「これ、お祭りに来た子供に、無料で配ってるやつでしょ?」


祭りの宣伝チラシに、確か書かれていた


健一は大きく頷いた後

「うん、だから、お願いして貰ってきた」

と、自信満々の笑顔


何故そんなことで自信満々なのか分からず、ため息混じりで人の群れを指差し

「返してきなさい」

「え~っ!」


言われた健一は、不満そうな声を上げる


しかしその声に少し冷ややかな目を向けると、がくりと肩を落として再び同じ群れの中に入っていった




確かにそこに入るのを確認したのだが、風船を返しに行ったはずの健一は


「お~いっ!」

と、消えていったところとは違うところから何かを抱えて現われる


そして、数分前と同じように

「ほら!」

と言って抱えていた物を突き出してくる


子供が砂遊びで使う小さなバケツサイズの容器に、山盛りにされたポップコーン


何も、こんなに大きいサイズでなくても……

とは思うが、香ばしい匂いに誘われて、お腹が一鳴き


先ほどの風船のこともあるので、これは素直に受け取った




手が空くと、またもや

「ちょっと待ってろ」

と言い、別の方向へ消えてしまう


少しして現われた健一の手には、紙皿に乗ったフランクフルトが2本


マスタードのついている方を取り、ケチャップのみのフランクフルトを皿ごと渡してくる


「マスタード、無い方が良いんだよな?」

と問い掛けられ、頷きながらそれを受けとった


受け取ったは良いが、片方はポップコーンもう片方は紙皿


フランクフルトの串は、何で持てと?


「お兄ちゃん、フランクフルトが食べられない?」


そう言うと、健一は慌ててポップコーンの容器を掴み

「ごめん」

と言ってポップコーンを抱えた


楽になった状態でフランクフルトに噛り付くと、少し離れた場所からベルのような音


「あそこは、何やってるの?」


他の場所よりも、その音のする方は明らかに人が多い


「福引き、だったかな?」


お祭りで食べ物を買った時に、ピンクの紙を貰うらしく、その紙の枚数で福引きが出来るとチラシにあったことを思い出す


「お兄ちゃん、紙は何枚?」

「ん?三枚」


確か、三枚で一回福引きができたはず


「お兄ちゃん、やってくれば?」

「え?お前は良いの?」


もともと健一のお金で買った物なのだから、健一がやるのが当たり前である


「良いよ、お兄ちゃんやってきて」

食べ終わったフランクフルトの串とポップコーンを奪い、福引きの人の方に健一を押し出した




人の中に入って間もなく、今までとは明らかに違う激しいベルの音


音の後、その場の人たちが歓声と拍手


拍手の嵐の中、モーゼの十戒のように人が左右に分かれ、真ん中に出来上がった道を健一が歩いてこちらに向かってくる


何やら凄い景品が当たったようだが、当てた健一は何だか嬉しそうではない


「何が当たったの?」


落ち込む雰囲気に、恐る恐る聞いてみると、封筒を見せながら

「商品券」

と答えた


別に落ち込むほど嫌な景品でもない


何故そんなに落ち込むのか分からず

「何が欲しかったの?」

と聞いてみた


すると、恨めしそうに後ろを見た後


「特賞の、白菜三個」


意外な答えに、口がぽかんと開いて閉まらない


その様子に、健一は勢いよく言ってきた


「最近寒いから、鍋にしたかったんだよ!でも、白菜高いから、買えないし……」


貰った商品券で白菜くらい買えるだろうに……


「商品券で買えば?」

と言うと、今更気付いたようで、ぽんと手を叩いて

「そうか!」

と明るくなった


「何鍋食べたい?」

「えっと……グラタン!」

「だからぁ、鍋!なぁべっ!!」


怒ったような顔の後、すぐに歯を見せて笑った


その健一の笑顔に、ちょっと安心する


妹の好きな物ばかり買って、楽しいのかと言う疑問があったのだ


秋晴れの休日、肩を並べてスーパーへ向かった











はい、終了!



なんか、中途半端な終わり方で申し訳ないm(_ _)m




従兄弟のタク編が糖度高めだったので、ほのぼの兄妹編にしたかったのだが……


こりゃ、萌えポイントも何もない(;^_^A