いつもより早めに目覚まし時計が鳴る


早起きには目的があるため、今日ばかりは兄の健一に起こされずに目を覚ます


目覚まし時計を止め、着替えて一階に降りた




キッチンでは、いつものように兄の健一が朝食の支度をしている


ただ少しいつもと違うところは、まだ早いが誕生日プレゼントにと先日渡したエプロンを着けているということ




鼻歌混じりでフライパンを振る後ろ姿に

「おはよう」

と声を掛けた


「えっ!お、おは、よう……」


フライパンを振るう手が止まり、何事かと言わんばかりの表情でこちらを見ている


その様子を尻目に炊飯器の蓋を開け、食器棚から丼を取り出してご飯を盛った



「えっ!朝からそんなにっ!」


健一の驚いた声にクスリと笑い、流しで手を洗う


「私が食べるんじゃないよ」

「……じゃあ、なんで……?」


何が起きているのか理解できず、目をパチパチさせて丼を見つめる健一


そんな健一の横で手を軽く振り水気をきって、冷蔵庫から梅干しを取り出した



「この間の雨の時、後輩にちょっとお世話になって、そのお礼に、おむすび作って持っていこうと思ったんだ」


その説明でようやく合点がいったのか

「なんだ」

と、安心したようにフライパンを動かし始めた




ご飯を冷ますために丼に盛ったのだが、握るにはまだ熱つそうだ


湯気の上がるご飯を見つめ、大きめのおむすびを2つで良いかなぁ、などと考えていると

「お世話になったって、何があったんだ?」

と、後ろから問い掛けられた


「ちょっと、車の水飛沫から庇ってもらったの」

「へぇ、ずいぶん男前な後輩だな」

「そうなんだよ、ビックリしちゃってさぁ……」

「でも、いくらなんでも多すぎないか?」


フライパンで温めていたウインナーをお弁当箱に入れるために近づいてきた健一が、丼のご飯の量を改めて見て言ってくる


「そうかな?」

「そうだよ」


ご飯の量を減らしてはみるが、やはり少ない気がしてご飯を戻す


「男の子だもん、これくらい食べられるよ!」


ガシャン!


独り言のつもりで言った言葉の後、突然大きな音がして思わず音の方へ顔を向けた


「お、お兄ちゃん!どうしたの?」


視界にはフライパンが床でひっくり返り、力なくだらんと両手を下ろした健一の後ろ姿が飛び込んでくる


「その後輩って、男、なのか……?」


質問したのはこちらなのに、その答えの代わりに質問が返ってきた


まあ、状況を見れば、音の正体がなんであるかは把握できたので、素直に答えを返す



「うん、男の子」


答えを聞き、小刻みに震える肩


「そ、その後輩、今度家に連れてこい……」


肩だけでなく、声も震えていた


「なんで?別に彼氏じゃないし…」

「か、かかかか彼氏ぃっ!」


『彼氏』と言う言葉に動揺したのか、裏返った声とともに振り返る


「そんなもんだったら、家にあげるかぁっ!」


まだ見ぬ彼氏像を思い浮べてか、健一は拳も震わせた


何をそんなに憤っているのか分からないまま

「じゃあなんで?」

と問い掛けると、一瞬はっとした表情になり顔を背け口を尖らせる


そして、横目でこちらを伺い、目が合うと視線を外す


何だかはっきりしない態度に腹を立てそうだったが、はっきりしろ!と言う前にボソボソと言い始めた



「お前の作るおむすびを食べる奴が、どんな奴か見たかったから…」

「…………それだけ?」


そんな理由で梶を家に連れてこいなどとは、くだらなすぎる


呆れてそれ以上何も言うことができず、ため息とともに額に手を当てた


すると、その姿を見た健一が背けていた顔を上げる


「俺だって……俺だってぇっ……」


何か言葉を続けたそうではあるが、なかなか次の言葉に繋がらない


「俺だって、何?」


痺れを切らし次の言葉を促すと、意を決したように真っ赤な顔で言ってきた



「俺だって、お前の作ったおむすび、食べたことないんだぞ!」

「………………」




何を叫んだかと思えば、そんなこと


ぽかんと口を開けていると、子供のように拗ねた表情を見せ再び勢い良く顔を背けた



それだけの理由で、梶にやきもちを焼いたということか


たったそれだけの理由で家に呼ばれ、健一の怒りにさらされる梶を思うと不憫である


それに、そんな単純な理由なら、いくらでも叶えることはできる




「良いよ、今回はお兄ちゃんのおむすびにする」


そういうと、健一の顔は見る見るうちに明るくなり、満面の笑みをこちらに向けた


「マジでぇっ!」


驚きと喜びの交じる声が朝のキッチンに響く


おむすびを食べられることがそんなに嬉しいのかと言いたくなるほど、健一は上機嫌で床に転がるフライパンを拾い上げた


無邪気に喜ぶ姿に、今日ばかりは兄ではなく弟を持った気分になった














はい、終~了~!




昨日、なうにても言いましたが


今までで一番自信無いですorz




今回のは、どこに萌えれば良いんだって感じだよ(_ _;)


しかも、小説っていうより、まんま妄想だし……




7月に書いた、第一弾の鈴がお兄ちゃんだったらという妄想小説で


今回も優しいお兄ちゃんを期待した方、すいませんm(_ _)m




本当は、優しいお兄ちゃんのシチュも考えてたんだけど


シスコンの健一お兄ちゃんをどうしても書きたかったの




第一弾の時に一番人気だった健一お兄ちゃんがこんなことになって


本当に申し訳ないorz




今回のは、感想とかは期待しないよ


苦情がきたら、へこむから