人生というギャンブルで負けない考え方 - 書評 - こう考えれば、うまくいく。 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

人生というギャンブルで負けない考え方 - 書評 - こう考えれば、うまくいく。


自己啓発、自己投資、という言葉が広く一般的なものとして定着しています。
概念的にはまったく新しいものではなかったはずですが、会社に頼った人生設計をしていては将来の不安は拭い去れない、という時代認識が多数派になったことによるものでしょう。

著者の日垣さんは本書のまえがきでこう書かれています。

日本や世界の経済状況がいかなる事態になろうとも、個人としてその情勢を正確に分析したうえで、抜け道、と言って聞こえが悪ければ、将来に結びつく道をきっちり早目に見つけ出す。そういう力だけは、サラリーマンにも自営業にも主婦にも学生にも必要だと思う。(p.13)

そのために必要な投資が「自分への投資」なのです。
日垣さんは「本書は、自己啓発の本ではない」とわざわざ断っていますが、上記のような力を身につけている途上にある人(本書によってスタートラインに立つ人も含む)にとっては、自己を啓発する本にもなり得る一冊です。

ちなみに、日垣さんは「自分への投資」をこう評しています。

「人生はギャンブル」たらざるをえないものだから、もちろんそれなりのリスクはある。自分への投資は、ミドルリスク・ハイリターンくらいだろう。(p.12)

一般的な投資の世界では、ミドルリスクでハイリターンを得られるような投資機会など、そうそう転がっているものではないお得な投資でしょう。
とはいえ、自分への投資においても、すべてが「ミドルリスク・ハイリターン」になるとは限りません。
そもそもの考え方、やり方が間違っていればとんでもない「ハイリスク・ローリターン」投資になってしまう可能性もゼロではありません。

(僕も含めて)自己啓発や自己投資に興味のある人は、「自分の時間とお金と自由くらい、自分で制御したかった」という日垣さんの気持ちに共感するところがあるはずです。
そのためにはどのように考えればいいのか、ということについて日垣さんが気前よく明かしてくれたヒントを本書でシェアさせていただきましょう!


本書は大きく三つの括りで構成されています。

Ⅰ 心もリッチになる働き方
Ⅱ 心もリッチになる情報力
Ⅲ 心もリッチになる予測力

それぞれが、さらに3つずつのヒントから構成されていますので、全部で9つのヒントが提示されていることになります。
ここでは、その中から個人的に「いいね!」ボタンを押したいポイントを少しずつ紹介させていただきます。


1 週休三日で成果を四倍上げる――と考える

ショートカットをして、たくさんの経験を積むことは無条件によいことであると私は思う。
まず第一に、そうしないと、無駄に失われる時間とエネルギーが多くなりすぎる。
第二に、ショートカットすることで、豊富な成功体験ができる。
第三に、学校教育はローリスク・ローリターンだが、ショートカットはノーリスク・ハイリターンである。
第四に、やる前に諦める、というパラダイムと縁を切れる。短期間でゴルフを上達してから「やらない」のと、最初から「やらない」のとでは、雲泥の差だ。
第五に、遅々として20年かけて何者にもなれないよりも、三ヵ月で速習してから、それが人生の目標たりうると確信できたなら本物のプロをめざしてダイナミックに上達してゆけばいい。
そういう道筋が「よく見える」ことこそ、ショートカットの真骨頂なのである。(p.46)

まだまだ一般的には徒に「努力」をありがたがる傾向が見受けられますが、無駄な努力を重ねても何にも生まれません。
そうした「無駄」を避けるために、日垣さんは「ショートカット」を推奨されています。
もちろん、なんでもかんでも手を出してとっ散らかしてしまっては「ショートカット」で身につけられるものも身につかず、何をやっているのか意味が分かりません。
ノーリスクでハイリターンを得たり、三ヵ月で速習して向き不向きを見極めるためには、それなりのやり方は必要です。
その辺の事例は是非本書でご確認を。

個人的にだいぶ痛いのは、二年も書評を続けてきていて、果たしてどれくらいのリターンが得られているのだろうか…ということですけどね(汗)
書評の上達にも「ショートカット」は有効なはずですが、そもそもできていないのかもしれないと思ったり。。
※リスクはとっていませんから、リターンが得られていなくてもご愛嬌で済みますけど。


2 情報はまだ全然足りていない――と省察する

なぜ古典を読んだほうがトクなのか。
第一の理由は、分母の問題である。
第二の理由は、確率の問題である。
第三は、あなたや私が読みたい本が、新刊である必要があるのか、という問題である。
第四の理由として挙げるべきは、羞恥心の問題である。(p.108~p.109より抜粋)

情報化社会と言われ、情報の洪水で溺れないために、なんていう整理術っぽいキャッチフレーズが雑誌の特集などで見られますが、日垣さんは「(情報は)今でも少なすぎる」とお感じになっているそうです。
これは「情報」の定義の問題かなあという気がしないでもないのですが、不要なノイズも含めて「情報」だと思えば、雑誌のキャッチフレーズのようなことが必要になるのでしょう。
一方で、そうしたノイズを除いた、本当に必要な「情報」に焦点を絞って考えれば、まだまだ不足しているし、「情報」に対する飢餓感があるからこそ様々なキュレーターの存在にスポットライトが当たるのではないかと思います。

実践! 多読術  本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)「古典」については、例えば僕の読書や書評に関する考え方に大きな影響を与えてくれた成毛眞さんの『実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ』では、(キュレーターという観点を意識すると)そんなものを読んでいる暇はない、と一蹴されていますが、個人的には日垣さんの考え方に一理あると感じます。
特に、成毛眞さんと違い、読書のバックボーンが圧倒的に薄い僕らは、読むべき古典を読んでいないことによる「羞恥心」の問題は非常に大きいのではないでしょうか。
少なくとも僕は、実は読んでいない古典的名著がたくさんありますので、「羞恥心」から、こそっと読んでいたりします(笑)
また、そういう若手ビジネスパーソンに向けては、古典的名著のキュレーションも有益なのではないかと思ったりしているのです。
(多くの先人の方々が多数紹介されている中、今の時代に改めて紹介するに当たって、新たな付加価値が付いていれば、ですが)


3 人生はギャンプルだ――と正しく認識する

私は、人生にはリスク計算が肝要だと心得ている。リスクよりベネフィットが大きく上回るとき、行動に踏み切る。やぶれかぶれは必敗への最短距離である。もちろんリスクを引き受けるときには、それを分散させる。余裕のある人とない人が同じリスクを背負った場合、確実に後者が負ける。そうしたことを、私は親として子どもたちにしっかりと教えたいと願ってきた。(p.153)
人生はギャンブルなのだから、そのギャンブルとどうつきあっていくかを親が子に教えなければ、いったい誰が教えるのか、という話になる。
人よりたくさん勉強して塾に投資しつついい大学を出る……という発想がギャンブルでないと言い張る人は、ちょっと前に出てきてもらいたい。(p.156)

日垣さんは、お子さんを連れてマカオのカジノへ旅行に行かれるそうです。
うちとはお子さんの年齢がまったく違うので比べ物になりませんが、単に遊びに行くのではなく、遊びの中にこうした発想を見出せるように導いていけるのであれば、僕も子どもが理解できるようになれば連れて行ってあげたいと思いました。
まあ、僕自身が行ったことないんですけどね…(笑)

パチンコという愚かなギャンブルに嵌ったことのある僕ですが、基本的にそういう胴元が勝つように仕組まれている(制御されている)ギャンブルは、人生を学ぶ題材としては適さないと思います。
お子さんをマカオに連れて行く日垣さんも、次のように宝くじには否定的です。

年末ジャンボ宝くじに手を出す人は、それを買った帰り道に交通事故に遭う確率のほうが高いことを知らないか、知ろうとしていないだけだろう。一年以内に交通事故で重傷を負う確率は0.92651%、年末ジャンボで一等が当たる確率は0.00001%である。(p.156)

こういうリスク計算をできるかどうかが、人生を勝ち抜く知恵としては大切です。
そこを踏み超える「度胸」がいい結果をもたらした例はあるかもしれませんが、再現性もなければ参考にもならない話でしかありません。
自己啓発本で考えれば、そのように再現性に乏しいものは評価が低いですよね。

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)余談ですが、マカオのカジノという件を読んだとき、頭にふと沢木耕太郎さんの『深夜特急〈1〉香港・マカオ』が浮かびました。
マカオのカジノで大負けした場面(同書の中で個人的にはもっとも好きな場面です)で、沢木さんは次のように考えます。

やめて帰ろうという判断は確かに賢明だ。しかし、その賢明さにいったいどんな意味があるというのだろう。大敗すれば金がなくなる。金がなくなれば旅を続けられなくなる。だが、それなら旅をやめればいいのではないか? 私が望んだのは賢明な旅ではなかったはずだ。むしろ、中途半端な賢明さから脱して、徹底した酔狂の側に身を委ねようとしたはずなのだ。(同書p.170)

日垣さんからは「賢明な」生き方を学んでいるところです。
リスク計算云々とかではない、こうした「酔狂な」生き方がしてみたい人は、日垣さんの本ではなく、沢木さんの本を読んでみて下さい。


経営でもギャンブルでも、誰もが出来る必勝法はないと思っています(あるならそれで生活できる人がもっといていいはずです。)
しかし、必ず負けるための必敗法は存在します。
負けてもいい!と心底思っている豪胆な人は別ですが、僕を含めた小市民な多くの人は、表面的にはどう言っていても、できれば勝利の確率を高めたいと思っていることでしょう。

日垣さんの考え方は、まさにそんな僕らに必要な、必敗を避け、勝利の確率を高めるための考え方です。
ライフスタイルによって合う合わないという部分はあるかもしれませんが、これも一つの「ショートカット」です。
自分の時間とお金と自由くらい、自分で制御したかった」という希望を叶えた日垣さんの考え方、参考にさせていただきたいですね。

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■ 関連リンク

著者公式サイト: ガッキィファイター
著者Twitter: @hga02104


■ 基礎データ

著者: 日垣隆
出版社: 文藝春秋 2010年12月
ページ数: 256頁
紹介文: サラリーマン時代最後の給料より、今年の年収は20倍になった。自分でものを売れない人に先はない、1年の書籍代500万円でトクをする、「情報洪水」などウソである、日垣流「人事評価」と「賃金評価」、リッチな情報力とリッチな予測力。週休3日で4倍の成果を上げる方法

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日垣 隆
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読んでもらいたい! と思うのなら読んでおこう ■書評■ 『すぐに稼げる文章術』 (2010年10月2日)


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