今日から行動するための5つの教え - 書評 - 絶対ブレない「軸」のつくり方 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

今日から行動するための5つの教え - 書評 - 絶対ブレない「軸」のつくり方


「やりたいことをやって夢を実現させよう」という声が多く聞かれるようになりました。
自己啓発本大好きな僕たちは、それぞれの方の実体験に裏付けられた、そうした主張を読みながらこうも思うものです。
「好きなことをやって、それがうまくいけばいいけれど、世の中そんなに甘いものじゃないさ。」

それはある意味真実でしょう。
誰しもが傍から見た場合の「成功」に辿り着けるわけではありませんし、むしろ辿り着ける方が少数派でしょう。
しかし、本人の視点で見た場合、傍から見た「成功」を基準に判断する必要はないはずです。
死の間際などになって「自分の人生、やりたいことをやれて幸せだった」と思えるかどうかが大切です。

それでは「そんなに甘いものじゃないさ」と言いながら、本当に自分のやりたいことを抑えてしまう人と、それをやれてしまう人との差は一体どこにあるのでしょう。
さまざまな要因はありますが、その中でも大きな要因として「自分の中の軸が確立できているかどうか」「自分の軸を信じて動けるかどうか」があると思います。
本書の著者である南さんは、僕と同年代ですが、そうした自分の「軸」をしっかりと見据えた生き方を実践されています。

南さんの夢は「メジャーリーグの球団オーナーになる」ということですから、夢はいまだ実現されていません。
しかし、常にこの夢を軸として持ち続けていたからこそ、常識では躊躇してしまうような行動も取れたのでしょうし、それだからこそ、傍から見ればとんでもない結果も手に入れてきています。

例えば、南さんは、スポーツビジネスの世界に飛び込むためにと、メジャーリーグ30球団すべてのGM宛に手紙を送ってしまいます。
何のコネも実績もない状態からスポーツビジネスの世界で「成功」していく入り口として、まずはメジャーリーグの球団で職を得るところから始めてみよう、と考えるところまでは多くの人が辿り着けるかもしれません。
しかし、こうした南さんのような行動を実際に起こすことができる人となると極端に少なくなります。
(メジャー30球団に手紙を送るなんて日本人の若者は少ないどころか、南さん以外にいなかったはずですが。)

南さんは、この行動の結果として職を得ることはできませんでしたが、実際に何名かのGMには会えていますし、その後に繋がる印象を残すこともできています。
日本でのメジャーリーグ公式戦開催などの仕掛人であるジャック坂崎さんも南さんをこう評しています。
 彼が素晴らしかったのは、大半の人間がやってもないのに諦めるところを、自分の手と足でドアをこじ開けたところ。自分の進むべき道を思い悩む人間にとって、彼の行動力から学べることはとても多いはずだ。(p.64)
「そんなに甘いものじゃないさ」と分かったようなことを言いながら、結局何も行動を起こしていないのが僕らです。
そして、どこかでそんな自分が嫌だと思い、変わりたいと思うからこそこうした本を読み続けてしまうのでしょう。
そこで今回は、本書を読んで「今日から行動するための5つの教え」をまとめてみたいと思います。


その1 思いだけじゃ駄目
 結論から言うと、このときの自分の考えは甘過ぎた。
 「スポーツの仕事をしたい」という、ぼやっとした目標設定がすでに間違いだった。野球でも、サッカーでも、オリンピックでも、エージェントでもいい、とにかくスポーツの仕事がしたいという思いだけ。目的意識が不明確なまま、ただ行動していただけだった。
 自分の力を過信していて、まったく戦略を持っておらず、自分の力だけで進んでいこうともがいていた。(p.49)
僕自身を含め、大半の人が賭けるべき想いすら確立できていないのが現状かもしれません。
想いや軸の大切さは強調しすぎても強調しすぎということはないくらいですが、一方で、それだけあればいいというものではないことも同じように強調しておかなければいけません。
とんでもない行動力を見せる南さんですが、この出発点というか土台となる認識を持っていなければ、行動力が成果に結びつかないということを教えてくれています。
その行動は何に繋がるためのものなのか、を見失わないためにも、今一度自分自身を見つめなおしてみましょう。

その2 完璧を目指さない
 楽天イーグルス時代に学んだ、優先順位を決めるための究極の方法は、「捨てるものは捨てる」と決めること。新しいことを始めるならば、最初から100点満点を狙う必要はない。
 まずは70点を目指すのだ。(p.86)
行動できない自分を分析してみると、思ったことが完璧にできそうもない(100点満点を取れそうもない)ことに対する恐れがどこかに巣食っています。
個々の仕事では「80点を100点にする労力をかけるくらいなら、80点でまずは試せ」と部下に言い、自分自身もそうしているはずなのに、どうにもおかしな話です。
本書を読み「実は行動しなければ0点かもしれない」と思うことで、最初の一歩を踏み出せるような気がしてきました。

その3 助言は試してからもらう
 ジャック氏の言葉から学んだのは、
 「自分で最初のアクションを起こす前に人に頼ってはいけない」
 ということ。自分でトライしたうえで、人にアドバイスを求めるのはよいことだし、ダメだったから人の助けを得ようとすることも重要なことだ。
 しかし、何も行動を起こしていない人は、そのアドバイスを100%理解することもできなければ、人の助けのありがたみを実感することもできない。(p.94)
これも仕事に置き換えてみると、同じ事を部下に指導しているはずなのに…という点です。
部下のいる人ならそうだと思いますが、自分の考えもないままに聞きにくる部下や後輩に対しては「やってから聞きにくるように」という指導をするはずです。
それがこと自分の人生におけることとなると……。
どうしてこうも、仕事と自分の人生とで矛盾した言動を取ってしまうのだろうと、自分の未熟さを見せ付けられます。

その4 「ダメだ」と言われることを恐れない
 無駄な行動なんてない。
 しかし、多くの人が「ダメだ」と言われることを怖がっている。自分の行動を肯定してもらえないこと、否定されることを恐れてアクションを起こせずにいるのだ。(p.103)
ああ、これナンテオレ?的なご指摘です(汗)
僕自身がそうだというわけではないですが、特にわりと学歴の高い優等生タイプに多そうです。
東大に合格した際「あなたは(受験に失敗して)浪人した方がよかったかもしれないね」と高校の教師に言われたことがありますが、こういう点を心配していたのでしょう。
今でも、浪人すればよかったとは決して思いませんが、学業ではない「教え」というものは時間が経ってはじめてそれを実感できるものなんですよね……。

その5 「無言実行」は格好よくない
 ある意味リスクヘッジでもあるが、違った見方をすれば、「無言実行」を美徳とする文化を隠れ蓑にして、リスクを取らない道を選択しているだけのようにも感じる。
 「有言」することで生まれたリスクによって、人はプレッシャーを感じる。しかし、このプレッシャーこそが、行動を起こすための最初の原動力となる。(p.195)
これは、上のことと多少つながるところがあります。
「ダメだ」と言われることが怖いので「有言」せずに「無言」で始めて、できてから始めて「いやあ、実は…」なんてやる。
「努力していることを見せない」美徳も同じ心理だと思いますが、こうした意識から脱却しなければいけませんね。
無言実行して成し遂げたことは「ああ、自信がなくて途中で逃げ出すかも…って思ってたんだね」くらいに評価されちゃうものだと思っておきましょう。


南さんの夢が実現するかどうかは分かりませんが、同時代を生きる等身大の姿からは、大いに感じさせられるところがありました。
大きく捉えると「思い込みを捨て、自分の軸をしっかり意識すること。自分の夢のサポーターは必ずまわりにいることに気づくこと。とにかく一歩目を踏み出すこと。(p.70)」という3点が大事なのですが、特に「とにかく一歩目を踏み出す」ところがキモだと思いました。

そして、それを阻害するのは「格好良く見せたい」という僕らの自意識です。
最初の一歩は大きなものである必要なんてなく、どんなに小さなものでもよいということ、数多の自己啓発書の教えるところでもあります。
格好良くなんてなくていい、自分が死の間際に「自分の人生、やりたいことをやれて幸せだった」と思えればそれでいい。
そう言い聞かせて、まずは小さな一歩を有言実行してみよう、そんな気にさせてくれる一冊でした。

変わりたいと思いながら一歩が踏み出せずに現状に甘んじている人、「そんなに世の中甘くないよ」と達観したかのように自分を抑えてしまっている人には、ぜひ読んで欲しいと思います。


追伸:
実は、「そこまで「やりたいこと」なんてないよ…」という方も少なくないかもしれません。
僕自身、「やりたいこと」は何だ?と考えると、はたと考え込んでしまいます。
しかし、南さんは「どんな人にも絶対にやりたいことはある。まだ自分で自分を正しく分析できていないだけで、誰もがみな、やりたいことを持っているのだ」と断言します。

まずは「自分の「強み」について、身近な人に聞いてみる」ことから始めるとともに、どんなに細かいことでも「やりたい」と思ったことを書き出してみるといいようです。
ライフログノートに書き連ねて考えていくべきことが、また一つ増えました。

※ 本書は著者の南壮一郎様より恵贈いただきました。厚く御礼申し上げます。

人気ブログランキングへ 

■ 関連リンク

著者ブログ: 外資金融、プロ野球、そして次は人材ビジネス...
著者Twitter: @swimmym


■ 基礎データ

著者: 南壮一郎
出版社: ダイヤモンド社 2010年12月
ページ数: 256頁
紹介文:
カネなし、コネなし、実績なしのどん底から楽天・三木谷社長を20分で口説き落とし、「楽天イーグルス創業メンバー」へ!イチローのエージェントも認めた「突破力」と、夢への「一歩の踏み出し方」とは

絶対ブレない「軸」のつくり方
南 壮一郎
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 893


■ 他の方の書評記事

ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~:
【読書日記】やりたいことを軸にする3つのステップ-「絶対にブレない「軸」のつくり方」
tokuriki.com:
絶対ブレない「軸」のつくり方 (南壮一郎)
IDEA*IDEA~百式管理人のライフハックブログ~:
【書評】 絶対ブレない「軸」のつくり方

人気ブログランキングへ