スパルタで学ぶ、仕事における5つの心得 - 書評 - 人生を決めた15分 創造の1/10000 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

スパルタで学ぶ、仕事における5つの心得 - 書評 - 人生を決めた15分 創造の1/10000


エンツォ・フェラーリ―――。
特に車が好きではない、まったく興味がないという人でも、創業者の名前を冠したその官能的なまでに美しい車のこと、あるいはフェラーリというブランドは聞いたことがあるのではないでしょうか。
悲しいかな、自分が乗っていること姿がまるで想像できないような僕ですが、経営―特にブランディング―という観点からも大変興味深いのがフェラーリです。

あの官能的なまでに美しい車を日本人がデザインしていた……この事実がまず衝撃でした。
今では有名となった奥山さんですが、もしエンツォ・フェラーリのデザインが採用されずプロジェクトが中止されていたら一体どうなっていたでしょう。
奥山さんは、採用されたエンツォ・フェラーリのデザインを15分で描いたそうです。
しかし、その15分は奥山さんの人生の中で最も凝縮された15分だったと言います。

もちろん、ただ集中して15分で描ききった、奥山さんの天才的な感性が爆発したなんて単純な話ではありません。
そこまでには、没になりながらも自分自身の中に何かを積み上げていった、10000枚にも及ぶスケッチの存在があったのです。
「人生を決める15分」は偶然にやってくるのではなく「1/10000の創造」の中から必然的に生まれる。そんな意味を込め、このタイトルにした。(p.11)

本書は、とことんまでに仕事を突き詰め、成果をあげてきた奥山さんによる仕事論であり、日本の若者に向けられたメッセージです。
どのような世界であれ、一流と呼ばれるまでに上り詰められた方の仕事観を学ぶことは、これから成果をあげていこうと頑張る僕らにとって大いに意味があります。
また、本書が何より魅力的に映るのは、そのメッセージの内容もさることながら、全ページに散りばめられた奥山さんのスケッチです。
実際の仕事の成果の一部を視界に入れながら読むメッセージは、単なる文字以上に強いインパクトをもって僕らに迫ります。

スパルタ教育は決して全面的な悪ではない。人間はその成長過程のどこかで、厳しくされた方がいいと思っている。(p.32)
もちろん、竹刀をもって無闇に体罰をちらつかせる…なんて時代錯誤なやり方を賞賛するわけではありません(笑)
ただ、それに近いようなプレッシャーが感じられるような厳しい環境というのが必要な時期というのはあると思っています。
奥山さんは「軍隊式教育」と書かれていますが、僕が奥山さんのお考えを学びたい、紹介したいと思ったのは、この一文を読んだときでした。
そこで、ここでは「奥山式スパルタで学ぶ、仕事における5つの心得」をまとめてみます。

心得その一 自分を信じられるくらいに、自分を知ること
僕には特別な才能などない。それは自信を持って言い切れる。でも、志と誠意だけは世界一でありたい。
それに、仕事は大好きだし、今のところ体力もあるから、努力を厭わないのは当たり前だ。それが当たり前だと思えるのは、それは僕が自分のことをよく理解しているからだと思う。(p.11)
まずやるべきことを「自分を知る」ということだと断言されています。
そのためには、昨今、揶揄されがちな「自分探し」をすることも、方法さえ間違わなければ必要なことであると肯定的です。
ただし、スパルタな部分を忘れてはいけません。
そのあとには、努力を厭わないことを当然と思えるほどに好きになれる仕事に打ち込むことが、一流になるためには必須なのです。
「自分探し」が揶揄されるのは、ここにつながらない人が多すぎるからなんですよね…(遠い目)。

心得その二 自分の中に良識を持つこと
常識ではなく、良識を持つ。周囲が変われば常識は変わるが、良識は不変だ。世間がなんと言おうと、良識にこだわる。(p.35)
これも仕事に対する強い想いがなければ難しいことです。
奥山さんは「クライアントの本当の成功を願う誠意」をご自身の良識として掲げられています。
そのために専門家や自社、チームの「常識」を乗り越えていけるかどうかが、他と一線を画すようなアウトプットにつながるのでしょう。
組織にいると、どうしても組織内の「常識」に巻かれてしまいがちです。
常にそれに従えないのなら組織を出て行けという話にもなりかねませんが、本当にそれが必要であれば組織の常識よりも自分の良識を大切にしなければいけないというのは、やはりとんがっています。

心得その三 自分を信じて自信を持つこと
やることをやっているのに競争に勝てないのは、自分を信じる心が弱いからだ。サボってきたなら負けても仕方がないが、やることをやったのなら自信を持とう。胸を張って勝負しよう。そうすれば、たとえ状況が味方せずに、期待した結果が得られなくても、後悔することはない。好きなことが見つかるまでは、ふらふらしていても構わないが、いったん自分の好きなことを見つけたら、死ぬほど努力して、心の底から「負けたくない」と思うべきだ。(p.75)
ここでも、揺るがないくらいの自信を持てるように、死ぬほどに自分で突き詰めていく姿勢が重視されています。
「この程度で…」という甘えの精神は一切許されません。
逆に言えば、それくらいできなければ「本当に好きな仕事」ではないということかもしれません。
ホリエモンこと堀江貴文さんも『君がオヤジになる前に』の中で、同じような仕事観を語っていたことを思い出し、一流と目される人たちの仕事観に共通するところを見た気持ちです。

心得その四 ストーリーが生まれるほどの熱意を持つこと
それらの商品の特徴は、背景としてのストーリーがある点だ。フェラーリのファンなら創業者エンツォ・フェラーリのエピソードを1つか2つはたちどころに挙げられるだろうし、ビンテージワインの好きな人なら、そのワインにまつわる話をとうとうと述べることができるはずだ。(中略)
お客さんの生活を豊かにしたいと願う姿勢があれば、そこには自ずと何らかのストーリーが生まれるはずだ。(p.107)
ブランディング、競争戦略(差別化戦略)におけるストーリーの重要性はさまざまなところで語られています。
そして、そうしたストーリーを生み出すのが現場の個々の「人」であることも、類書をお読みになった方であればご存知でしょう。
それぞれのストーリーが生まれた背景には個別の要因が存在することも確かですが、どんなストーリーにも欠けていないのが「熱意」だと思います。
ブランディングにつながらなくても、例えば社内でいつまでも語り継がれるような武勇伝も、担当者やチームが案件に対して並々ならぬ熱意を注いだ結果ではないでしょうか(飲み会などでの武勇伝は別ですよ…笑)。

心得その五 ムダに見えてもやってみること
考えてみると、人生にはムダなことはない。その時は回り道やムダに思えても、後になれば必ずその経験が生きるものだ。理屈ではムダに見えても、興味が持てたり、やりたくてムズムズしたりした時は、やってみるべきだと思う。それが自分の可能性の幅を広げ、選択肢を増やすきっかけになることもあるのだから。(p.116)
効率的な仕事術を追求したり、それぞれの仕事に意味を見出したりすることが重視される傾向もありますが、特に若いうちには一見ムダに思えるようなことにも積極的に取り組むべきです。
こうした考え方も一流の方には共通する考え方で、たとえば羽生善治さんも全く同じ事をおっしゃられています。
ただ、ムダに思えることにも積極的に取り組むというのは、自分を忙しくさせることにもなります(暇だからやる、というレベルでは意味がないです)。
僕自身、やってもやらなくてもいいような、半ば趣味に近いような仕事も抱えています。
それでも、僕にとっても組織にとっても、まったくムダになることなんてないだろうということは確信しています。
仕事で成果をあげたければ、とにかく何でも熱意をもって真剣にやってみる、という姿勢が大切でしょう。


近年、ワークライフバランスという概念が広がっています。
選択肢が増えるという意味で、そうした生き方をしたい人が選択できるように社会や会社の制度を整えたりすることは必要ですし、重要です。
ただ、個人的には、仕事で一流になりたいと思うのであれば、思いっきり「ワーク」に偏って「バランス」をとらなければならない時期が若いうちには必須であると思っています。
それは、本書で奥山さんが語るような、懸命に突き詰めて仕事をするという想いであったり、死ぬほど努力する、ということと同じかなとも思います。
考え方が同じなだけで成果が同じにならないところに、まだまだ僕の仕事に対する想いに甘さがあるということなんでしょうけどね…orz

ぜひ奥山さんのスケッチを眺めながら、熱いメッセージを受け取ってください。
これから、自分の好きな仕事で成果をあげていきたいと思う、若い人たちにお薦めします。

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著者公式サイト: 奥山清行 / KEN OKUYAMA オフィシャルサイト


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是非、それぞれのブロガー独自の視点を比べて楽しんでもらいたいと思いますが、さらに、本書をお読みいただき感想を聞かせていただけたら、非常に嬉しいです。

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■ 基礎データ

著者: 奥山清行
出版社: 武田ランダムハウスジャパン 2008年5月
ページ数:152頁
紹介文:
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