■書評■ モノを捨てればうまくいく 断捨離のすすめ | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

■書評■ モノを捨てればうまくいく 断捨離のすすめ


僕は基本的には"物持ち"なタイプだと思う。
別に高価なものを持っているとかそういう意味ではなくて、文字通りただやたらと物がある印象。
他人から見ればガラクタのように見えるものも"大事に"とっておくようなところがあるのだが、それらが整理整頓されて置かれてるわけでもないから性質が悪い(汗)
広くもない自室を見渡すと、「広くもない」と知覚するのはもともとの広さ以外に要因があるのは明らかだ。

とはいえ、それをよしとして何も感じていないとか、むしろ物が溢れかえっていることが幸せだ、ということではなく、一応「シンプルな空間がいいなあ」とか「片付けなきゃなあ」といった心理的プレッシャーは感じている。
そんなとき、たまたま仕事上で大量に書類などの物を捨てざるを得ない状況になったので、断腸の思い(大袈裟だな…)でばさばさと捨てたのだが、単に空間が綺麗になったという以上にすっきりした気分の自分に気がついた。
その上で読んだのが本書なので「断捨離」への導入は非常にスムースだった。

断捨離とは: ひと言で言えば、断捨離とは「不要・不適・不快」なモノを断ち、捨て、離れること、その過程のなかで「モノと自分との関係を問い直すこと」。
 もう少し簡単に言えば「今、自分の手元、周囲にあるモノは、本当に今の自分に必要なのか?」と考え、行動することです。
 それも、「理屈」で考えるのではなく、「モノを捨てる」という「引き算のアクション」を起こすことで「これは本当に今の自分に必要なのか?」を考え、自分にとって必要なモノ、適切なモノ、快適なモノを選んでいくことです。(p.26)

捨てることは目的ではなくて、捨てるという行為を通して自らの身の丈を考えるということかと。
今回、オフィスの書類を捨てるのは、捨てるということ自体が目的化していたので、自らの身の丈を考えるという段にまでは至らなかったが、日々プレッシャーを投げかけてくる自室のものたちとの関係は問い直す必要がありそうだ。

ただ、これまでだってそう思ったことは幾度となくあるわけで、そのたびに「捨てられない自分」が顔を出してきた結果が現在の状況を作り出したのだ。
(同じように感じられる方は、少なくないのではないだろうか。)
まず本書で「捨てられない自分」に巣食う3つの感情を理解しておきたい。

「もったいない」から: 「もったいない」が価値を発揮するのは、「まだ使えるから使う」場合です。
 「使わないけど、まだ使えるからとっておこう」というのは、モノを主役にした考え方です。(p.50)

この意識は間違いなくあるなあと。
「もったいない」と思う感覚は間違いなく大切なんだけれど、思うタイミングが間違っているということらしい。
モノを捨てることを考えるタイミングで思うのではなく、そもそも無駄なモノを取り入れないように入り口の段階でこそ大切にすべき感覚なのだ。
「まだ綺麗だから…」「一回しか使ってないし…」そう思うことは何度でもあり、そう思ったからこそ仕舞いこまれているものたちがいくつも頭に浮かぶ。
ここは「ごめんね」と「ありがとう」の気持ちを駆使して断行すべしだ。

「もしかして」「いつか」使うかもしれないから: 「いつか」や「もしも」の機会はたいていこないと考えていいでしょう。
 「今」の自分にとって必要か、適切か、快適かを考えたら、「もしかして」「いつか」は捨てない理由にはなりませんね。(p.55)

「いつか」なんてずっと来ないというのは、数多くの自己啓発書に書かれていて頭では分かっているはずなのに…という典型的な例。
必ず消費されていく消耗品の買い置きならともかく、そうでないものは「いつか」が訪れてから買ったって遅くないわけで。
言うは易し、行うは難しなんだけど、ここも断行すべきポイント。
特にクローゼットと本棚にこうした感情に基づくモノたちが巣食っている予感。

「知識」コンプレックスだから: 書類や書籍が必要以上に多い人は「知識」へのコンプレックスがあるかもしれません。(p.124)

あまりに図星でドキッ!!(汗)
読書人にとって本棚は自分の履歴書のようなものなので、ある程度は仕方ないというか、それは「今」の自分に必要な範囲。
ただ、そうじゃなくて単なる知識コンプレックスに起因するようなものも、確かにあるだろうなあと。
オフィスの書類はその典型的な例で、過去の案件などの検討資料は、自分が成し遂げた仕事に対するトロフィー以外の何物でもなかったりしたわけで、間違いなく自らの「価値」、身につけた「知識」「経験」を形にしなければというコンプレックスがあったはずだと今なら思える。

捨てる前に、捨てられない自分の感情を探っていくだけでも、ちょっと向き合いたくなかった自分の身の丈を見る羽目になってしまったなあという気がしないでもないが(笑)
妻も子もいる身としては、家のモノなどは"自分にとって"必要かどうかだけでは決められないのは当たり前のことなので、まずは自分だけで決められる書斎(という名の物置き)から始めてみたいと思った。

オフィスでの体験があったからということはあるだろうが、これまでに読んだ類書(モノを捨てなさい!系)の中ではもっとも感じるところのあった一冊。
「捨てられない自分」が顔を出したときに使いたい"究極の質問"なども駆使しつつ、断捨離の道への扉を開けてみたい。
心の奥底に、僕と同じような「片付けなきゃ…」というプレッシャーを抱えている方には、ぜひお薦めしたい。
久しぶりに机の上を片付けたら気持ちよかった…という気持ちを味わったことがあるのなら、きっと本書は役に立つはずだ。


■ 関連リンク

著者ブログ: Non's ~ Insomnia ~

■ 第62回書評ブロガー達が勝手にインパク本レビュー (2010年9月4日追記)

本レビューは本魂!(ホンダマ)が企画したイベントへの参加であり、同じくイベントに参加しているブロガーの方々のレビューは以下のとおり。
是非、それぞれのブロガー独自の視点を比べて楽しんでもらいたいが、さらに、本書をお読みいただき感想を聞かせていただけたら、非常に嬉しい。

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■ 基礎データ

著者: 川畑のぶこ
監修: やましたひでこ
出版社: 同文館出版 2009年12月
紹介文:
ガラクタをひとつ捨てるだけで―片づかない部屋、忙しすぎる毎日、面倒な人間関係…停滞していたことが回り出す!なぜか“いいこと”が起こり出す。

モノを捨てればうまくいく 断捨離のすすめ (DO BOOKS)
川畑のぶこ 著
同文館出版
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【モノを捨てればうまくいく】断捨離のすすめ / 川畑のぶこ