念彼観音力

念彼観音力

全国各地の寺院・城郭の訪問記、御朱印収集、仏像見仏の記録。
現在は西国三十三所、坂東三十三所などの観音霊場や、
日本100名城スタンプラリーに挑戦中。

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兵庫県西宮市の西北部に、古来より信仰の対象となってきた甲山(かぶとやま)という山があります。その山麓に建つのが古刹・神呪寺(かんのうじ)です。

神呪寺の秘仏本尊・如意輪観音菩薩坐像は、観心寺(大阪)、室生寺(奈良)と並び『日本三大如意輪』として知られています。この神呪寺の如意輪観音は秘仏で、毎年5/18の1日のみ、開帳されます。

いつかは参拝したいと思っていたのですが、今年、ようやく開帳の日に参拝することができました。
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西宮駅から神呪寺に向かうバスに乗ると、車内は自分と同じ目的と思われる客で満員です。この人達もきっと、自分と同じようにこの特別な日を楽しみにして心を躍らせているのだなあと思うとより一層テンションが上がってしまいました。この何とも言えない高揚感、盛り上がりが「年1日開帳」の醍醐味です。

甲山山麓に位置する境内から西宮市街を眺めるとまさに絶景でした。
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甲山という名前は「神の山(コウノヤマ、カフノヤマ)」から、神呪寺も「神の寺(カミノテラ)」に由来するようです。(真言である「神呪(じんしゅ)」からも。) 実際に甲山からは祭祀用の銅戈も発掘されていて、古来より霊山として信仰の対象とされていたことがわかります。

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さあ、いよいよ本堂に上がって念願のご本尊との対面。

まず思った感想は、「生きている!!」でした。

観心寺像のような肉付きのよいグラマー感じではなく、スリムな肢体が特徴的です。顔の表情や肌の質感など全体的に生身の人間らしさを感じました。

 伝承では、如意輪観音への信仰が厚かった淳和天皇第四妃・如意尼が828年に発願し、甲山山頂の桜の木をその自身の等身大に刻んでつくらせたのがこの本尊と言われています。

 実際には9世紀よりも降って10世紀頃の作とも見られていますが、そういう伝承もあるために余計に生身の人間のような感覚を受けました。

 本像に限らず、如意輪観音には女性を想起させるものが多いですが、橘嘉智子が発願したとされる観心寺像やこの神呪寺像は、発願者が女性であるためにその傾向が特に強く感じられます。像の表現にあたって、発願者のイメージあるいは理想の女性像を意識して造られたのでしょう。

観心寺や南円堂は毎年でも拝みたい秘仏ですが、
神呪寺もそれに匹敵するすばらしさでした!

4/17,18の観心寺・如意輪観音
10/17の興福寺南円堂・不空羂索観音
5/18の神呪寺・如意輪観音
を「たいがー三大年1回開帳秘仏観音」に指定したいと思います。
久しぶりに本棚から
学研の「神仏のかたちシリーズ 観音菩薩」という本を取り出して
パラパラとめくっていたところ
今まで見落としていた思いがけない図版がありました。

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なんと、草津・橘堂の三面六臂観音の図版が載っているのです。

これは相当に珍しい!

橘堂の三面六臂観音については
こちらのエントリ
http://ameblo.jp/avalokitezvara/entry-11261572345.html

でも紹介していますが
図版が掲載されている本は決して多くはありません。

いろいろな書籍を見ていますが、自分が知る限りではサンライズ出版 「近江の祈りと美」(amazon.comへ)と、98年の滋賀県立近代美術館 展覧会図録『近江路の観音さま』くらいでしょうか。

それがまさか、仏像に興味を持った
最初期の頃から所有している本に図版が出ていたなんて・・・。

灯台下暗しとはまさにこのことだなあと思ってしまいました。

ところで、「神仏のかたちシリーズ」は
写真、解説ともに非常に充実していて
仏像ファンには有名(!?)な良書です。
観音菩薩の他に、釈迦、不動、四天王の計4冊が発行されました。
学研書籍紹介 神仏のかたち(外部ページへ)

以後、地蔵菩薩などが続刊の予定だったようですが、
発行されることなく現在に至っています。
既刊の4冊も現在は絶版となっていて、
大きな書店でたまーに在庫を見かける限りです。
(ちなみに、amazonのマーケットプレイスでは中古が何点か出品されています。)

今回、ふとしたことから改めてこのシリーズの良書っぷりを思い知りました。
まだ持ってない方は是非いまのうちに!