お別れの作品 | いつもなにかを妄想クリエイト

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3年程前でしょうか。

知り合いのお店でスナックのママさんが、

「近頃景気が悪くてね・・・昼間もお店をオープンしてカフェをやろうと思うの」



私はこのお店の「カフェ用の看板」を描かせて頂きました。
ブラックボードに店名と、ママの大好きな「猫」。
そして、その日のおすすめメニューなどをステッカーで張り替えられる様な形に仕上げました。


しっとりとした落ち着いた雰囲気のお店。

難を言えば、窓が無く閉鎖的でもありました。


「せめて窓があって店内の様子が見えれば、女性客も来るかしら・・・」と、ママ。

しかし、経営難という事で改装費もままならず。


少しでも愛らしい外観にしようと、かわいい鉢植えにお花を飾ったりと、
長く愛して来たお店を守る為に、ママは一生懸命でした。


そこで、窓が無いならせめて・・・と思い、

お店のドアにこんなイラストを描きました。

$atelier-Mikiji-

ビールの「大麦」に
コーヒーの「葉&実」
縁を結ぶ「ちょう結び」
そしてwelcome。

お店のメニューにちなんで、、、ですが、縁起の良いもので揃えてみました。

「無機質なドアがなんとなく温かくなったわね」

と言われ、とても嬉しく思いました。
寒い日に、体中にホッカイロを忍ばせて、ママのいれてくれた美味しいコーヒーを飲みながらの作業は充実したものでした。


しかし、それから1年しない間にママのお店はたたんでしまうことに。

その後、違う方がお店を経営していましたが(ドアもそのまま)、
つい先日、いなくなってしまった模様。

模様・・・というのも、たまたま改装業者さんが作業している所に
私が通りかかりまして、分かった次第です。


ふっと、後ろ髪を引かれるようにお店の前に行き、改装業者さんに

「ドアは外しちゃいますか?」と訪ねた所、
「外さないけど、ペンキ塗っちゃうよ」と言われ、
「実は、そのドアのイラスト、私が大分前に描いたものなんです。写真とっても良いですか?」

そして、その時はじめて携帯電話でそのイラストを撮影したのです。



普段は必要がなければ自分の作品を写真で撮ることはあまりしません。

世に出してしまえば「それきり」と言うと、ちょっと乱暴ですが、
作品自体が生物のように、色んな人に出会って生きて行くと思っています。
作品の責任は、産みの親の私にあるのですが、それ以上のことはしない、と言いますか・・・。
諸々、云々、制作者が語りすぎるのも、気持ちを押し付けてしまうようで良くないなぁ~と、
思っているのです。
私の作品を見た人が、見たまま・感じたままに思ってくれれば・・・と。
ある意味、自分の作品に対しては、不義理なのかもしれません。



ですので、今回の様なことが起こると「虫の知らせ」と申しましょうか。

産みの親の私に、「お別れ」を知らせてくれたように感じるのです。

名も無いドアのイラストへ、あなたは私とお店のママの愛で産まれました。
お疲れさまでした。

ちょっとしんみりしちゃいました。