The Blank Page Effect:

EFFECTS OF CONSTRAINT ON CREATIVITY

CANEEL K. JOYCE, doctoral candidate

制約は創造性に対してどのような効果をもたらすか,に関する実験研究です.心理学の領域では比較的おなじみのテーマで,創造的な仕事を行うときに,制約は創造性を阻害すると考えられがちですが,まったく制約を与えないで仕事をさせるとかえって創造性が発揮されにくくなる,といったことが議論されてきています.簡単に言えば,がんじがらめに制約するのもいけないけど,まったく制約条件を与えないというのもそれはそれで問題があるので,「適度」な制約を与えるのがいいでしょう,という主張がされています.

この研究では,健康関連の商品に関するアイディアを被験者に考えてもらう実験を行っており,自由に選ぶことのできるテーマの少なさ(糖尿病,不眠症など)が制約として設定されています.どの被験者も時間が40分与えられて,健康問題に関するデータベースが与えられ,パソコン上で閲覧することができます.アイディアの斬新さは複数の実験者が独立に評価します.被験者が誰かは聞き逃しました(たぶん学生だと思いますが).

実験結果として,テーマが完全に自由な場合と,テーマが一つだけ与えられている場合に,創造性が低く,複数のテーマ(「6つの中から」「3つの中から」)から選択する場合に,創造性が高くなる,という結果が得られています.既存研究と同じような結果です.

この実験のデザインだと,「何を選んでもかまわない」被験者も40分の時間しか与えられていないので,テーマを選ぶだけで時間を使ってしまって,おもしろいことを考え付く時間がなくなってしまう,ということになってしまうので,比較対象としてたとえば60分の時間を与えた場合の創造性を評価することが必要になると思いましたが,

人間はコンピュータみたいに頭が良くないので,制約を与えられることによって問題をきちんと捉えられるようになるから創造性が発揮されるんだよ,ということを主張したいのであれば,「40分」という条件を等しく設定することには意味があると思います(というか,こういう想定があるので,「40分」という条件を等しく設定しているのだと思いますが).

おそらく健康関連商品を実際に開発している人を対象にこの実験をすると,「何を選んでもかまわない」被験者も高い創造性を発揮するのだと思います.

この手の研究はきちんと読んだことがないのでよくわからないですが,制約が創造性に対してプラスの効果をもたらすのは,結局のところ,人間はゼロから創造的なことを考えられるほど頭が良くないからである,だけだと少々つまらない話のような気もしましたが,現実の世界では,人間の能力と時間に制約があるのが当然なので,仕事を担当する人の能力や与えられている時間,仕事の性質に応じて,どのように制約を設定すれば高い成果が得られるのかを明らかにするのは意味があることだろうと思いました.