財務省の“出先機関”となった大新聞 (日刊ゲンダイ2011/3/2)

「提言」で消費税増税の大合唱

大新聞は一体いつから、財務省の“出先機関”になったのか――。

政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」(議長・菅直人首相)が先週、基礎年金の財源捻出方法などについて、毎日、読売、日経、産経の新聞各社から提言を受けた。朝日は資料だけ提出、他の4社は論説委員らが出席した。
各社から内容を説明。基礎年金については、日経が全額税方式への移行を唱え、毎日、読売、産経は現行の社会保険方式の維持を主張したのだが、最大の焦点は消費税に対する各社の考え方。「10%」(読売)、「将来10%台半ばまで引き上げ」(日経)、「一体的な税制見直しで、消費増税は中心」(朝日)と軒並み「増税」の大合唱だったのである。会議の最後には菅が「大変有意義な会になった。特に毎日、読売、日経、産経の皆さん方、どうもありがとうございます」とリップサービスまでしてみせた。
消費税増税に向けて、財務省、官邸、大新聞がタッグを組んだのも同然だ。こんなバカげたことが許されていいのか。
メディア総合研究所事務局長の岩崎貞明氏も、こう強調する。
「政府の政策が正しいのかどうかを吟味するのがメディアの役割です。消費税増税については、中小業者などに大きな負担をかける方法が本当にいいのか、他の選択肢がないのか、本気で調査、報道するのがメディアでしょう。仮に提言報道するなら、別の側面もきちんと検証するべきです」
全くである。不祥事が相次いだ検察腐敗も、もとをただせば「従軍記者」たちの無批判タレ流し報道が生んだのである。あの場合は「リーク」という形だったが、今回は「提言」に姿を変えただけ。戦前、大マスコミはこぞって陸軍になびき、大衆をミスリードした。今や陸軍=財務省ではないか。この国のメディアの「大政翼賛」姿勢はちっとも変わっていない。