逮捕・保釈の基礎知識
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人はなぜ逮捕されるのか。そして保釈の条件とは。また、全面否認でも保釈されるきっかけとなった新制度「公判前整理手続」とは。根本から実際まで、わかりやすく解説していきます。

全面否認している被告人が保釈されるということが話題になりましたが、それは新しい制度が導入されたからです。……と、まずは逮捕・保釈の起訴知識をご説明してから、新制度(公判前整理手続)についてもご説明していきましょう。


【逮捕についての基礎知識~なぜ人は逮捕されるか】


■そもそも「なぜ逮捕するのか」という根源的な問題から

被疑者が逃亡のおそれがあったり、証拠隠滅のおそれがある場合に防止法として身柄を拘束するのが逮捕であり、正当な理由のない逮捕は許されない
なぜ、容疑者(刑事訴訟法上では「被疑者」というので、以下はこちらを使います)は逮捕されるのでしょうか。

2つの大きな理由があります。

1つは、逃亡の防止です。

被疑者は悪いことをしていると自覚しているなら、なんとかその罪を逃れようと考えるでしょう。そのための手段として「逃亡」は当然考えられます。その防止が「逮捕」ということです。

もう1つは、証拠隠滅などの防止です。

捜査の手が伸びてくることが分かってくると、逃亡は無理としても、裁判で無罪になったり、証拠不十分ということで釈放されたいと考えたりする被疑者もいるでしょう。そうした被疑者は証拠となるものを隠したり壊したりいろんな手段で証拠を消そうとするでしょう。

また、裁判の前に仲間と綿密に口裏合わせをして、無罪を勝ち取ろうとするかもしれません。

そういったことを防止するための手段としても身柄拘束=「逮捕」の意味があると考えられています。

もちろん、現行犯逮捕などの場合は、証拠はそろってますから、たとえば銃を乱射しているような被疑者はなんとか拘束しないと危険です。そんな危険防止、緊急避難的な意味も場合によってはあります。


■「逮捕状」がなければ原則逮捕されない

現行犯などを除いて、普通は裁判所の発行する逮捕状、正式には逮捕令状がなければ、警察官や検察官は人を逮捕することはできません。

人を拘束から自由にすること、つまり身体の自由はもっとも基本的かつ古典的な人権です。これを守るため、検察官や警察官が逮捕許可の請求を裁判所に行い、裁判所が逮捕が適当かどうかチェックしたうえで、許可状の意味を持つ令状を発行するのです。

ちなみに、警察官の場合は警部以上の「指定司法警察員」と呼ばれる人のみが請求できます。ヒラの刑事が思いつきでいきなり裁判所に請求する、なんてことはありません。ドラマでも見ませんね。

逮捕するには、「理由」と「必要性」が必要になります。したがって、被疑者に逃亡・証拠隠滅の恐れが全くない、またはなくなった場合、逮捕、そして勾留(こうりゅう:裁判のための身柄拘束)はできないことになります。

なお、現行犯逮捕は当然、逮捕令状が必要ありません。また、直ちに警察官などに引き渡すことを条件に、一般人にも現行犯逮捕権が認められています。

議論があるのが「緊急逮捕」です。拘束してから逮捕令状を請求するもので、正当な法廷手続を定めた憲法違反ではないかという説もありますが、最高裁は合憲との判決を下しています。

なお、逮捕令状は下のような様式になっています。


おそらくこのような形になっているはずです(『現代の裁判』有斐閣刊ほかを参考)。逮捕には裁判所の「許可」が必要であるということがおわかりでしょう。氏名・裁判所名などは実在しません


■逮捕はいつまでできるのか?

逮捕・送検・勾留にはそれぞれタイムリミットがある。警察などが複数の罪を「小出し」にして再逮捕をするのは取り調べる時間を長く取るためで、批判も強い
意外に思われるかもしれませんが、逮捕状態は「最大72時間まで」です。

厳密にいうと、警察官が逮捕した場合、48時間以内に身柄を検察に送り(送検)、検察官は24時間以内にその後の勾留(こうりゅう)請求(または起訴)をしなければなりません。検察官が逮捕した場合は48時間以内に勾留請求(または起訴)をしなければなりません。

したがって、「逮捕されている状態」は最大72時間までで、そのあとの拘束は裁判所に請求し、認められた上で行われている「勾留」なのです。


■「勾留」はいつまでできるのか?

最大20日間、というのが正解でもあり、不正解でもあります。

「被疑者の勾留」は10日間と決められていて、延長しても最大20日間までと決まっています。この間に、起訴できる証拠や供述が得られなければ、被疑者を釈放しなくてはいけません。

一方、起訴後、被疑者は「被告人」になります。「被告人の勾留」も、被告人の裁判出頭を確保するため必要なので、裁判所が勾留を命じます。起訴から2ヶ月までを原則とします。

ただし、殺人など重大事件、被告人が常習犯、証拠隠滅のおそれ、被告人の住所が不定な場合は、1ヶ月ごとに勾留期間を更新することができます。

逆にいうと、被告人に重大事件や常習犯ではなく、被告人が証拠隠滅をする可能性がなくなったり、また被告人の住所が何からの手段で定まった場合には、勾留を取り消さなければなりません。

また、100%その恐れがなくても、勾留状態を(外見上)解くことがあります。これが「保釈」というものです。次ページで見ていきましょう。


【保釈についての基礎知識~保釈の条件、保釈金の決定など】


■保釈とは?

保釈はあくまで勾留する理由が薄くなった被告人に対する措置であり、被告人への勾留状態は継続している。そのため被告人の権利はいろいろと制約される
先のページでご説明したように、被告人に重大事件や常習犯ではなく、被告人が証拠隠滅をする可能性がなくなったり、また被告人の住所が何からの手段で定まった場合には、勾留を取り消さなければなりません。

ただ、それが100%立証できなくても、そういう条件が上がってきた場合には、裁判所は被告人の勾留を外見上解除することができます。これが保釈です。

保釈には、保釈保証金が必要です。これは、現金でなくても小切手などの有価証券で構いません。被告人が逃亡など保釈条件を破った場合には、保証金は没収されます。裁判の出頭期日に意味もなく出頭しないときも、保証金没収の対象になることがあります。

保釈保証金は、被告人への心理的プレッシャーを与えるのが目的ですから、被告人に応じて、裁判官が決定します。前ページでもお話しましたが、起訴後、身柄を決定するのは基本的に検察官から裁判官に移るので、裁判官に決定権があります。

過去には「20億円の保証金」というのもあったようです。

また注意しなくてはならないのが、保釈は「勾留の停止ではない」ということです。外見上は解除されているように見えますが、勾留は法的には続いています。住所も指定されますし、場合によっては(多くの場合のようですが)旅行などの制限も受けます。


■没収されなかった場合、保証金は返ってくる?

逃亡などをしない「担保」が保証金なので、個人にどれだけ違反しないプレッシャーをかけられるかが決定のポイント。20億円保証金を支払った被告人もいる
担保的なものですから、当然返ってきます。このような場合に返還されます。

(1)勾留の取消が決定したとき(保釈は法的にはまだ勾留状態)
(2)保釈が取り消されたとき

基本的に裁判が終われば、勾留はなくなり、無罪で釈放(勾留取消)か、刑務所などへの収監となりますから、主に(1)の理由で保証金が返還されることになります。


■保釈は誰が請求できる?

被告人自らがすることができます。

また、被告人の弁護人、法定代理人、保佐人(家庭裁判所で決定)と、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、被告人の保釈の請求権を持っています。請求に却下する内容がなければ、裁判所は保釈をしなければなりません。

また、被告人の勾留は裁判官が行っているものですから、裁判官が職権で保釈を認めることができます。また、不当に長いと思われる場合は裁判官は保釈を認めなければなりません。

ただし「不当」の範囲は、ケース・バイ・ケースです。


保釈の決定に検察官は関れない?
そんなことはなく、刑事訴訟法では保釈決定をするときに検察官への意見聴取を義務づけています(第92条)。

しかし、あくまでそれは拘束力のない意見なので、裁判官はそれを聞いた上で決定を下すことができます。検察は、それに対し抗告をすることができます。


■保釈と勾留停止は違う?

勾留停止とは、住居の制限を行って親族や保護団体などに身柄を「委託」するため、釈放することです。保釈保証金が必要ない点が保釈とは異なります。

被告人が病気だったり、被告人の親族の葬祭などがあった場合、例外的に裁判官が認めることがあります。自由に出歩けるものではありません。


■ちなみに、勾留されている被告人の権利は?

まず、弁護人の選定権です。ただし、これは被疑者の段階(つまり起訴前)に与えられ、接見(会うこと)ができます。

被告人になると、弁護人以外の人と会うこともできます。また、差し入れを受け取ることもできます。ただし、裁判官は、自分の職権、または検察官の請求により、弁護人以外との接見を禁じ、差し入れ品を検閲、場合によっては没収することができます(ただし食品はのぞく)。

たとえば起訴事実に対して全面否認をしているような被告人は、検察官の請求によって弁護人以外との接見を認められないケースが多いようです。口裏合わせや証拠品を捨てる指示など、証拠隠滅のおそれがあるためといわれています。

また、被告人は自分の勾留理由を開示するよう裁判官に請求できます。公開の法廷で行われ、理由は必ず告げられなくてはなりません。


■全面否認でも「保釈」、これはなぜ?

刑事裁判はふつう、第1回目の公判における下記の冒頭手続から始まります。

(1)人定質問(確かに被告人本人かなどを確認)
(2)検察官による起訴状の朗読
(3)裁判官による被告人の権利の通知
(4)弁護人・被告人の陳述

このあと、証拠調べが始まります。

しかし、2002年の刑事訴訟法改正によって、第1回目の公判前に「公判前整理手続」が導入され(実施は2005年~)、証拠調べを公判前に行うことも可能になりました。

これが終了したことは、隠滅できる証拠はもう存在しないことを意味しますから、全面否認している被告人であっても逃亡の恐れがなければ保釈請求に応じることができることになります。

次ページではこの新しい制度「公判前整理手続」についてみていきましょう。


【「公判前整理手続」についての基礎知識~裁判は本当に迅速化されるか】


裁判迅速(じんそく)化のための公判前整理手続制度
公判前整理手続とは、公判開始前に、採用する証拠を決めておくことです。具体的には、

(1)検察官側の訴える理由・適用しようとする罰を明らかにする
(2)公判の時に双方が主張することを明らかにする
(3)証拠請求をし、その証拠についての争点を明らかにする
(4)採用証拠を決定しておく

このようなことを行います。

これは裁判官・検察官・弁護人がともに出席して行います。この手続により、証拠と争点がほぼ確定されるため、これに基づいた迅速な公判が可能になると考えられているのです。


■裁判員制度にあわせて作られた公判前整理手続制度

公判が始まってからはじめて審理をしていては、相手の手の内がわからない「ガチンコ勝負」になりしばしば裁判が遅くなる。裁判の争点を明確化することが公判前整理手続の意味
さて、なぜこのような手続制度が導入されたのでしょう。

1つには、日本の裁判があまりに時間をかけすぎていたことへの反省です。拙速な裁判は被告人の権利を侵害しますが、かといって遅すぎる裁判は、無罪の可能性が高い被告人の権利をむしろ侵害します。

しかし、日本の刑事手続は長く、また口頭でのやり取りが原則であったり、戦術のため検察官や弁護人双方が持っている証拠を出し惜しみしたりとしたため、ずいぶん裁判自体が長くかかるものになってしまいました。

それを何とかするため、迅速化が必要だとされ、「裁判迅速化法」の制定(2003年)を経て、この手続制度が導入されました(2005年より実施)。ちなみに裁判迅速化法では、第1審の審理期間の目標を「2年」と定めています(第2条1項)。

もう1つは、2009年までには実施されることが決定している裁判員制度をにらんだものです。

裁判員制度では無作為に選ばれた20歳以上の市民(国民)が義務として裁判員になります。ただ義務とはいえ、みんな仕事などを休んで裁判所に来るわけですから、今までのようなだらだらした裁判をすることはできません。

そのため、裁判員の選定と同時にこの手続を活用して、裁判を迅速に進めようと考えて、この制度が導入されたといわれています。


■なぜもっと、早くこの制度が導入されなかったのか?

「裁判官の予断排除の原則」というのが、戦後日本の刑事裁判の原則でした。

つまり、裁判官が公判前から被告人についての情報を知ってしまうと、場合によっては被告人に不利な先入観、つまり「予断を抱く」ことの危険性がある……、そのため、裁判は検察官の起訴理由→弁護人の反論→検察の……という形で行われ、証拠調べはあくまで公判のなかで行われていました。

しかし、戦後60年が経過し、裁判官が予断を持ってはいけないということは裁判官自体もよく認識するようになり、無罪判決もしばしば出るようになりました。

しかし、今度は裁判員制度導入ということになるので、「裁判員の予断」が懸念されます。なにせ一般市民ですし、裁判員制度が適用される裁判はおそらくニュースになるような重大事件です。裁判員が予断を持つな、というほうが無理でしょう。

そのため、職業裁判官が公判前、検察官や弁護人と協議し、裁判のやり方をある程度きめる必要が出てきたのです。公判前整理手続は、そのためにも有効だと考えられています。

ちなみに、日本の裁判員制度が「陪審」だと、これはそれほど意味を持ちません。アメリカなどの陪審は、市民が有罪・無罪を判断、裁判官が量刑を判断と、役割が分かれているからです。

しかし、日本の裁判員制度はフランス・ドイツ型で、市民である裁判員が職業裁判官といっしょに審理を行う「参審」です。予断を持つ市民に対し、職業裁判官がアドバイスすることができるため、公判前に裁判官が調査をすることに、大きな意味が出てくるのです。


■ライブドア裁判が与える影響

このサイトのユーザーさんでさえ大半が裁判員選任に及び腰だ。裁判員制度を定着させる一歩として、注目された「公判前整理手続」でどれだけ裁判が迅速になるのか、司法当事者は示す必要があるだろう
ライブドア裁判は経済犯罪裁判ですから、裁判員制度が適用される重大事件(殺人など)とは直接結びつきません。

しかし、証拠はかなり多いはずですから、これが公判前手続によってどれだけ整理され、裁判が迅速に進むか、一つの注目点です。

早く判決がおりる(または結審する)ことになれば、この制度の有効性が再認識され、裁判員制度に対する市民の「不審・不満」も少しは解消されるでしょう。しかし逆なら……

ちなみにこのサイトで行っている「あなたの一票」、裁判員法が制定された2004年6月に行った「あなたは裁判員に選ばれたい?」では、39%が「選ばれたくない」、34%が「選ばれたいが不安もある」でした。

このアンケートは無作為ではなく、ある程度意識がある人が対象だと思われますが、それでこの結果ですから、裁判員制度定着のためにも、ライブドア事件の裁判、意外と重要なものになってきそうです。




http://www.hokusei-law.jp/blog/?p=273

保釈金立替ビジネス(板垣謙太郎弁護士)  先日、刑事弁護を担当している被告人から、「保釈の申請をして欲しい」と頼まれた。もちろん、刑事弁護人としては、依頼されたら最善を尽くすしかないが、常に頭を悩ますのが「保釈金の工面」である。
 被告人自身が、潤沢な預貯金を有しているケースはほとんど無い。
 結局は、家族や知人に工面してもらうしかないのが一般的だ。

 昨今の相次ぐ有名人の刑事事件報道により、保釈金という言葉を聞く機会も急増した感がある。
 テレビ報道で何度も解説されているおかげで、以前のような誤解は減ったが、ざっとおさらいしておくと次のとおりだ。
 保釈金の正式名称は「保釈保証金」という。保証金という名が付くとおり、被告人が逃亡や証拠隠滅などをせず、何ら問題なく裁判が終了すれば、全額返還される。逆に、逃亡などしようものなら、全額没取されてしまう。
 簡単に言えば、「逃亡などしないための担保」とされるのが保釈金である。
 従って、保釈金の額は、被告人や家族等の経済状況に応じて、「この金額を没取されたらさぞかし困るであろう。これぐらいの金額にしておけば絶対逃げないはずだ。」という金額を裁判所が決定する。
 当然、資産家ともなれば、数億円の保釈金となってしまう。
 なお、保釈の申請が出来るのは、起訴された後に限られるので、被疑者(容疑者)の段階では、検察官が任意に釈放してくれない限り、身柄拘束を解消する有効な手段はない。

 さて、私に保釈申請を依頼してきた被告人は住所不定・無職の男である。当然だが、本人が保釈金を用意できるはずがない。
 私が「保釈金を用意してくれそうな人はいるのか。」と尋ねたところ、「頼れる者はいない。保釈金を貸してくれる制度があると聞いたので、それを利用したい。」とのこと。どうも、その手の情報は、留置場内でよく耳に入ってくるようである。
 私自身、過去に何度も保釈申請はしてきたが、保釈金は家族が用意してくれるのが一般的で、そのような申し出は初めてだったので、「調べた上で、また面会に来る。」と告げて、留置場を後にした。

 事務所に戻ってネットで調べてみると、確かに、「保釈金立替ビジネス」と呼べそうなものが数件ヒットした。近時、特に増加しているようでもある。
 どの業者も似たようなシステムで、大雑把に言えば、決定された保釈金を立て替える代わりに、立替料などの名目で対価(業者の利益)を徴収するというものだ。そして、立替料は2ヶ月を基準として設定され、保釈金を立て替えてから保釈金が返還されるまでの期間が2ヶ月を超えるごとに新たに立替料を徴収する仕組みである。仮に保釈金が200万円の場合、立替料は5~7万円程度で、立替の限度額は500万円程度というのが一般的だ。
 なお、契約当事者となるのは、当たり前だが被告人ではなく、被告人の家族などである。
 従って、件の被告人の場合、この立替制度を利用できる見込みは無く、残念ながら、その旨を本人に伝えた次第である。

 ところで、このシステムを見て、「おやっ?」と思ったことがある。
 2ヶ月ごとに立替料が発生するならば、それはまさしく「金利」ではないかという疑問である。純粋に立て替えるという「手間」に対する対価(手数料)ならば、立て替える際に一度だけ徴収すれば済むはずだからだ。
 業者の中には登録された貸金業者もいるが、貸金業登録をしていない者もいる。これは、法的には相当に問題だろう。
 しかも、もっと問題なのは、2ヶ月ごとに発生する立替料について、日割り計算しないというシステムそのものだ。要するに、2ヶ月+10日後に返済しても、2ヶ月+50日後に返済しても立替料は同じということだ。
 結果、立替料=金利とするならば、ほとんどの業者が利息制限法を超える違法金利を徴収している計算となるのである。どういうことかと言えば、こうである。
 利息制限法によれば、元本が100万円以上の場合の上限金利は年15%である。200万円であれば、2ヶ月ごとの金利は5万円が上限となる。つまり、2ヶ月+10日で10万円の金利を徴収すれば、これは明らかに違法金利なのである。
 2ヶ月ごとに立替料を5万円と設定している業者は利息制限法を意識してのことだろうと推測されるが、日割り計算しない以上は違法金利との指摘は免れないはずだ。

 それはそうとして、保釈を切望する家族からすれば、このビジネスが違法だろうが何だろうが、そんなことは関係ない。それに、違法金利だからと言って、消費者金融業者を相手とするような過払金返還請求もしないだろう。数千円を取り返すために弁護士に依頼することもあり得ないし…。
 むしろ、「これが無ければとても保釈金は用意できなかった。本当に助かった。」と賞賛する声が多いのが現実である。このビジネスに対しては、感謝こそすれ、苦情を述べる者は少ないだろう。
 しかも、前述のとおり、保釈金は全額返還されるのが通常なので、元金の返済が「焦げ付く」心配はほとんど無い。つまり、このビジネスは、ノーリスクで高金利を稼げるという点で、業者にとっても「メチャメチャおいしい商売」である。
 被告人も被告人の家族も喜ぶ、業者もウハウハ、ついでに弁護人も保釈が実現して感謝される、ということで、まさに「WIN・WIN」(みんながハッピー)の商売ということか。
 もっと言えば、現在の刑事司法は「人質司法」などと痛烈に非難され、なかなか身柄拘束が解かれないという大問題を抱えており、その点からも、保釈がされ易くなるということ自体は大変喜ばしいことなのだ。
 というわけで、みんながハッピーなら、違法金利だ何だと騒いだところで何の意味もなく、このビジネスは今後も拡大し続けるのだろう。

 ただ、刑事弁護人の立場からすれば、唯一懸念されるのは、被告人への心理的影響である。
 従来は、被告人の家族が必死になって保釈金を工面するのが普通であった。
 被告人は、家族の経済状況を知っているから、そのような家族の努力にいたく感銘を受けたものであるし、そのような家族の温情をムダにしないよう本気で更生しようと決意を新たにしたものだ。被告人の家族が、恥を忍んで、親戚や知人らに頭を下げ回って工面したというような特殊事情があれば、なおのことだ。
 ところが、保釈金立替ビジネスにおいては、数万円のコストさえ投じれば、いとも簡単に保釈金は工面できてしまう。虎の子を持ち出す必要もなければ、誰一人として嫌な思いもしないのだ。
 その当たりの「手軽さ」「気軽さ」が被告人の更生にとっては、決してプラスには働かないように思うのだが。単なる杞憂であろうか…。




押尾被告は1000万円、酒井法子は500万円 保釈金はどのように決まるのか

(MONEYzine 2010年10月10日14時30分)  http://p.tl/9UcY


事件が起こるたびに話題になるのが被告人の「保釈金」。保釈金はどのようにして決まるのか、用意できない場合に強い味方となる団体も。

 保護責任者遺棄致死罪などの罪に問われ、懲役2年6月の実刑判決を受けた元俳優の押尾学被告(32)が4日、東京・小菅の東京拘置所から保釈された。押尾被告側は、保釈保証金1000万円を現金で納付したという。

 保釈とは、住居限定や保証金の納付を条件として、勾留されている被告人の身柄の拘束を解く制度。また保釈保証金は身柄を釈放する代わりに、公判への出頭などを確保するために金銭を預けさせるためにある。金額は、犯罪の性質や、逃亡の恐れ、被告の経済力などによって決まる。ごく普通のサラリーマンなどが事件を起こした場合は、150万円~200万円くらいが相場だといわれている。

 過去の有名な例では、ライブドア元社長の堀江貴文氏は3億円で、ニッポン放送株インサイダー取引事件の村上世彰氏は5億円。また覚せい剤取締法違反などの罪に問われた元女優の酒井法子氏は、500万円だった。

 民間の金融機関では、保釈保証金の融資は行われていないことが多く、起訴のあと判決までに被告人が保釈される制度がありながら、保釈保証金が用意できずに権利を行使できない被告人が相当数いるとみられる。

 このように保釈金が準備できず、保釈されない被告人のために、保釈金の立て替えを行う組織として、日本保釈支援協会http://www.hosyaku.gr.jp/ がある。立替限度額は500万円で、担保や保証人の必要はない。覚醒剤取締法違反の支援の場合、申込人は被告人の親・子・兄弟姉妹・配偶者または担当弁護人なら申し込める。同協会の審査後、立替手数料を支払えば、立替金が振り込まれる。立替契約期間は立替実行日から2ヶ月で、延長も可能。保釈保証金は判決後に還付されるので、返還を完了する。

 保釈保証金制度は、個人の権利を尊重する制度ではあるものの、その金額はそれぞれの人によって大きく異なるようだ。



2009年11月12日 ... 昨日、酒井法子被告が保釈金500万円を納付し保釈されました。
押尾学被告、逮捕されてから301日ぶりで保釈保証金は1000万円

小室哲哉容疑者は、11月21日にも、5億円の詐欺罪推定されている額は、2000万~3000万円です。

堀江貴文被告の保釈金は、3億円

羽賀研二被告の場合は、2000万円でした

ちなみに、日本で歴史上最も高い保釈金を払った人は、「ハンナン」の元会長である浅田満氏の20億円。(ハンナン牛肉偽装事件)



(社)日本保釈支援協会

日本保釈信用株式会社  保釈 保証金立替業務。会社概要、刑事事件の流れ、立替システムの案内。 ...