[選挙資金]均等分配で過半数確保が逆に難しくなった民主党のヘタ戦術

(日刊ゲンダイ2010/6/16)

小沢幹事長のときはブーブー不満が出ていた参院選複数区の候補2人擁立が、続行されることになった。15日、民主党の安住選対委員長は、「そのまま選挙戦に突っ込む」と対象の15選挙区で候補者を一本化しないことを決めた。
安住委員長は「支持率がV字回復して共倒れの危険性がなくなった」と語ったが、理由はそれだけじゃない。
「静岡、京都をはじめ、複数区で不満を言っていたのは現職組ですが、理由は選挙資金が来なかったからです。小沢幹事長は、新人に厚く資金を流していた。しかし、小沢幹事長が辞任して、この方針が変わった。枝野幹事長や小宮山財務委員長は候補者に均等に選挙活動費を渡すことを決めた。それで不満も収まったのです」(民主党事情通)
“現金なもの”とはこのことだが、政治評論家の有馬晴海氏はこう異議を唱える。
「正しいのは、小沢さんのやり方ですよ。現職候補は地元連合などの組織も資金も知名度もあるんだから、黙っていても勝てるはず。党本部がわざわざ余分に資金を渡す必要はないのです。“通るヤツは資金ゼロでも通るんだ”――これが小沢さんの考え方です。
それに引き換え、小沢さんが擁立した2人目の候補は、新人で組織はない。選挙のやり方も分からない。選挙資金がとてつもなくかかるのは当然なのです。選挙資金を7000万円かけようと、それで通れば政党助成金が増えるから元は取れる。この小沢さんの考え方が、選挙を仕切ったことのない枝野幹事長などには分からないのです」
政界一の選挙通である小沢幹事長は、データをもとに複数擁立を決めた。過半数60議席を獲得するには、2人区の5つや6つで独占当選しないと、目標に達しないからだ。
しかし、現職組を“公平”に扱い始めたことで、新人候補は一気に苦しくなった。枝野執行部は、単独過半数確保のチャンスをあきらめたことになるかもしれない。