疑惑も「世襲」小泉進次郎、事務所費「三重計上」


(日刊ゲンダイ2010/6/11)

自民党は民主党を批判できるのか

いきなり菅新政権の閣僚たちを襲った「事務所費疑惑」噴出に、自民党が調子づいている。石破政調会長は「当然辞任に値する。首相の任命責任も問われるべき」と鼻息が荒いが、思い上がらない方がいい。今や党内きっての“人気者”小泉進次郎が親父から事務所費疑惑まで「継承」していたのを知っているのか。
横須賀市中心部にあるテナントビルの一室。表札には「自民党神奈川県第11選挙区支部」の名はあるが、「あるべきはずの政治団体」の名はない。支部にいた女性スタッフは「分かる人が出払っていて何も答えられない」と繰り返すのみ。事務所内はとても、2つの政治団体が同居しているようには見えなかった。
あまり知られていないが、国会で事務所費疑惑を追及された政治家の元祖は、進次郎の父・小泉元首相だ。03年3月、参院予算委で民主党の桜井充議員が質問した。
「総理の自宅の敷地内で、なぜ家賃が発生するのか」
疑惑の舞台は、横須賀の小泉の実家にあるプレハブ小屋。実弟が代表の政治団体「小泉純一郎同志会」が、プレハブに「主たる事務所」を置きながら、家賃などの「事務所費」を計上していた。金額は毎年、約500万円に上った。
この時、小泉は「政治には、目に見えない部分がある」とはぐらかしたが、質問の13日後に異変が起きた。同志会が「主たる事務所」を前出のテナントビル内に変更。小泉が支部長を務めた自民党第11支部と同じ場所だった。
「約110平方メートルの事務所の家賃は、月約40万円。管理費や駐車場代を含め、多めに見積もっても年間600万円程度です」(地元不動産業者)
自民党第11支部は事務所費として約700万円を計上、新たに同居した同志会も移転前と変わらず約500万円を計上した。ビルのオーナーは当時、一部報道に「家賃は変えていない。2団体分は受け取っていない」と証言した。
民主党議員は国会で再三、「家賃の二重計上ではないか」と追及したが、小泉は「政治活動は、議員それぞれ」と、またもやゴマカシ答弁で逃げ切った。その後も、二重家賃計上の状態は変わることなく、小泉は詳細な説明を拒んだまま、政界を離れてしまった。

◇親父の代からの“使途不明”6億円はどこに消えた
「同志会は事務所費以外の支出も使途不明で、収入の大半は小泉元首相の資金管理団体からの寄付で賄っていました。元首相の引退に伴って昨年に解散するまでの約30年間で、寄付総額は6億円を突破します。同志会をトンネルにして巨額の政治資金を流用してきた疑いがあるのです」(民主党関係者)
疑惑の構図は、進次郎にも引き継がれた。進次郎が後継指名された08年の政治資金収支報告書によれば、解散前の同志会と自民党支部に加え、新たに進次郎の資金管理団体「泉進会」と政治団体「小泉進次郎同志会」が、同じ前出のテナントビルの事務所に“同居”。泉進会を除く3団体が、別々に家賃などの事務所費を計上していた。
内訳は政党支部が約609万円、同志会が約379万円、進次郎同志会が32万円。総額約1020万円という“疑惑の三重計上”である。
本紙は進次郎の事務所に文書で質問したが、10日までに回答はなかった。
自民党が菅政権を攻撃するなら、小泉親子の事務所費疑惑を解明してから出直した方がいい。