8月1日~3日、横浜で行われたAIDS文化フォーラムに参加してきました!
看板はHIV・エイズ予防ですが、いろんなテーマの講演があるじゃーん!しかも無料!ということで、ありがたく、活用させていただきました。

何回かにわけて、レポートしていきたいと思います。

松本俊彦先生という精神科の超有名な先生がいらっしゃり、自傷行為や薬物依存をする子供にどう向き合うか?という講演を聞きました。

私はリスカの経験がないのですが、最近リスカの後がついている子も見ることはたまにあり、「お!」と思うことがあります。

松本先生の調査によると、
中高生の1割は自傷経験があり、
ただ、それに教員が気付いているのは1/30ほど。

自傷行為は自分ではどうすることもできない辛い体験を乗り越える、孤独への対処スキルで、性非行、摂食障害、薬物、自尊感情の低さにも関連があるそうです。

薬物依存の「ダメ・ゼッタイ」というメッセージは、ほとんどの子には「ドラッグはだめなんだ!」と印象付けることができますが、一部の子が「自分の責任なんだから使いたい人は勝手に使えばいいじゃん」と思い、本当に支援すべきなのはそのハイリスクの子である、という構造は性教育にもあてはまります。家庭・学校・地域で適切な支援を学ばなければいけないと思います。

よく考えてみると自分も中学生の頃に親とケンカして、ほんと気持ちの高ぶりをどうにもできなくて、自分の部屋の机を拳で思いっきり殴ったことがあったな~と思い出しました。
思い切り皮もめくれて血が出て痛かったんだけど(今も傷跡が残っている)、痛みによってつらい感情をごまかすことができて落ち着いたな、と。こういうのも自傷行為のひとつらしいです。

科学的にも自傷行為によって脳内麻薬物質が出て、心の痛み・体の痛みの鎮痛効果がでるとのこと。安心感を感じる、気持ちいいと感じるんだそうです。

なので、支援したい相手が、自傷行為をしたとしても、切ってしまったことを責めないことが大切で、どうしてそうしたのか?にもっと目を向ける必要があります。

※そしてここからは別の講座にハシゴしたので、別の松本先生のプレゼン資料からの引用になります。

リスカしてしまうことに対し、説教やもうしないでって約束させるよりも、リスカに置き換えられる傷付けない方法で心を落ち着けることが援助につながるとのこと。

援助を求める行動を評価し、今までの苦労をねぎらい、自傷行為のポジティブな側面に共感しながら、エスカレートを心配。チームを組み、複数で対応する。

「いのちが大切」より「あなたが大切」

リスカの置換スキルとしては、
氷を強く握りしめる
前腕を赤ペンで塗る
筋トレをする
大声で叫ぶ
マインドフル呼吸
友人・知人・家族・援助者と話す、電話をかける
など。

マインドフル呼吸ってなに?って疑問はちょっと置いておいていただき、薬物依存と同様に、極端に活発な性行動や、避妊をしないことが、自傷行為と通じることについて、私なりに考えてみました。

当事者を支援をしたいと思ったら、「なぜそんなにセックスをするのか?」「なぜ避妊しないのか?」「いけないことだ」と責めるのではなく、そうなってしまった背景に目を向ける必要があるでしょう。
ついまじめな人や熱意がある人ほど「避妊しないのは悪だ」と言ってしまいがちで(そして多くの子はそれに共感します)、ただハイリスクの一部の子は「自分の体は自分で守るべき」という意見に対して、「自分の体をどうしたって自分の勝手でしょ」「悪いことをしているのは人に知られたくないし批判されたくない」と更に支援への道を絶つことになってしまうわけです。

実際に私も以前セックスワーカーさん向けの講座で「自分を一番幸せにできるのは自分★」と最後締めたら「それはしんどい子にはツラいメッセージでしかない」「今まで大変なこともあったけど、よく頑張ってきたね、でよいと思う」とご意見いただいたこともに通じるものがあった!と思うと同時に、講演を自分の話したいことを話す場所ではなく、その人に本当に必要な情報を届ける、という立場に徹せなければ、9割よかったって言ってるからいいよね!という自己満足に終わってしまうとも思いました。

講演でも自尊感情が低く、過去や現在、避妊ができない子もいる前提で、「たしかにセックスで愛されている実感や安心感を得ることもあるよね」「けど、そのまま生活していくとどうなるかな?あなたの体が心配」というメッセージや、リスクの低い子に友達のハイリスクの子をどう支援するべきか伝えることも必要だと思いました。

佐世保の事件もあり、「いのちの教育」についても昨今、賛否両論ありますが、私は9割の子に響くメッセージを届けることも大事だし、1割の子へ配慮することも大事だなと思います。

伝えるって自尊心があるからそんな芸当ができるわけで、自尊感情が低い子ほど、声を上げることをためらうものですよね。
伝え手が受け手の心理や受け取り方を知らないと善意の暴力で、サポートどころか更に追い詰めることになってしまい、しかも伝え手自体もその事実に気付かないという事態が起こり得る。

そして受け手が勇気を出してその事実を言ったとしても、「こっちは教えてやってんのに、勝手なこと言いやがって!」と逆ギレなんかしたら更に最悪ですね。
なんのためにやってんだか。

ただ、9割の子に響くメッセージ(いのちは大事だよ、とか、避妊は自分や大切な人の人生を守るもののだよ、とか)というのも価値があると私は思うので、やはり1割の子への配慮(できない状況もあるよね、今まで大変なこともあったよね、けどこのままだとあなたのことが心配だよ、こんな方法もあるよとか)とハイリスクな子に専門家をつなげるサポートというのが重要なように思います。

今日の講演のスライドじゃないけど、同様のテーマの松本先生のプレゼン資料があるので、興味のある方は見てみてください。