以前から悩ましく思っていた問題で、最近また気になりだしたのが、個人情報保護法、企業コンプライアンス。個人情報保護法では、過度な反応が起きていて、個人情報を多く取り扱う企業や役所の対応には陳腐なものが少なくありませんが、小中学校の学級緊急連絡網リストや企業の社員住所録が作成されなくなる事態に至っては笑えない状況ですね。
そして、企業コンプライアンス(corporation compliance)。コーポレートガバナンス
の基本原理の一つで、企業
が法律
や規則
などのごく基本的なルールに従って活動すること、とされます。バブル崩壊後から注目され、2003年以降、経済誌などでこの言葉が喧伝されるようになりましたね。これ以降、企業のコンプライアンス違反報道が続出するようになったことは、逆説的なことですね。
いずれにしもこの二つの問題は本来なら至極当たり前のモラルであり、わざわざ法制化したり、ルール化する必要もないことだと思えますが、実際、個人情報流出は絶えませんし、コンプライアンスに抵触する問題も多発していますから、少なくとも法の網はかけておかねばなりませんかね。
これに加えて国際標準化機構で策定された国際規格ISO。国際化していない日本企業の多くでもこの規格取得に躍起なったのは十年ほど前だったでしょうか。国交省が建設業者にこの規格取得をアメリカのごり押しで入札の条件にしたことから、国内の多くの建設会社が取り組んだ規格でした。
この三つの施策、企業経営にとってはコストと手間ばかりがかかって、実際のところ単に足枷になっているお荷物ではないでしょうか。それぞれの意味が拡大解釈されたり、過剰反応をしたり、なんだかとらえどころのないムードにさいなまれ、その結果、無駄な事務処理に追われている、そんな感じ。
日本は法治国家。国会は法律を作るところ。そこで、いろんな障害から守ったり、障壁を崩したりして国民生活を今より円滑にするために立法、法改正が行われていますが、その中には陳腐化、形骸化したものもあれば、一部の利権を守るための恣意的な法律も生まれます。
陳腐なものとして象徴的なのは、債務軽減を謳う弁護士事務所のCM。CMの最後に絶対読めない図表が出てきますね。おそらく、契約上の様々な例外や料金の付加項目などが書かれているのでしょうが、あの図表を出すことで、弁護士たちはこのCMを見て依頼した相談者とのトラブルが起きたき、「テレビのCMにもちゃんと謳ってありましたよね」と証拠立てする気なのでしょうか。
たばこのパッケージの健康被害への脅し文句なども余計ですが、メーカーは法律や条令、官庁通達によってそうせざるを得ないわけで、こういうことを書かせる連中の上から目線には辟易します。逆にこれを逆手に取って、分厚い契約書などに顧客に対する免責事項を忍ばせる手法にも辟易しますよ。
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