今年、日本国民と日本国土が自然の猛威によって痛めつけられています。東日本大震災の後の、台風12号の紀伊半島への大きな被害。被害に遭われた方々に謹んでお悔やみ申し上げます。川の氾濫、土石流の発生などなど、今更ながら水の脅威を痛感させられます。



アラフィーオヤジの起業・夢追いセレナーデ-田老の防潮堤

東日本大震災は地震そのものの大きさもさることながら、波高10m以上にも及んだという大津波の発生が多くの人命を奪いました。それは、高さは約10メートル、上辺の幅約3メートル、総延長約2.4キロという規模で建設されていた日本一の防潮堤で「万里の長城」と称された岩手県 下閉伊(しもへい) 田老(たろう)の防潮堤」をも軽々と飲み込んでしまいました。


<「日本一の防潮堤」無残 想定外の大津波、住民ぼうぜん>

http://www.asahi.com/national/update/0319/TKY201103190440.html




本地質学会 - 三陸津波の痕跡と防災

http://www.geosociety.jp/faq/content0133.html




<宮古市田老地区(旧田老町)防潮堤 ~万里の長城~>

http://www.pa.thr.mlit.go.jp/kamaishi/bousai/b01_02.html



●防潮堤
台風などによる大波や高潮,津波の被害を防ぐ堤防のこと。より正確には、高潮による災害を防止するため設置された堤体、壁体、水門等の構造物、及び護岸、取付道路等の附属物をいう。



●防波堤
外洋からの波浪を防ぎ港湾の内部を安静に保つため、もしくは津波の被害から陸域を守るため、海中に設置された構造物。



防潮堤 - Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%B2%E6%BD%AE%E5%A0%A4






これほどの規模の防潮堤を築いても防ぐことのできなかった自然の猛威に、太平洋側に長い沿岸を持つ宿命を背負って今後日本はどう取り組んでいくのか、専門家の方々の叡智に期待するばかりですが、住民の方々に海岸を捨て山側に居を移すという短絡的な解決策では、漁業の復興にはつながるべくもなく。




だからと言って、日本の太平洋側すべてに高さ20mの構造物を再建すればいいという訳にはいかず。一方で「田老の防潮堤」がなければ、住民への被害はもっと大きなものになっていたのではないかと推測され、一定の防潮堤はやはり建設されなければなりません。



それでは、どのような防潮策が講じられるべきなのか。私はここで発想の転換が必要ではないかと思えるのです。それは押し寄せる高波真っ向からを受け止めるのではなく、「緩衝し吸収する」という発想への転換です。



たとえば、岩手県一帯の海岸はリアス式海岸という自然の緩衝地であります。田老地区もリアス式海外の一つですが、南部地区のリアス状の海岸を地図上で比較すると、その形状はかなりゆるやかなものです。この南部地区の今回の津波の影響がどの程度であったかを調べれば、おそらく何分の一程度でのものではなかったかと思えます。



海岸の利用は、漁港、砂浜、道路などに分けられますが、特に漁港として成り立つ地域には一定の防潮堤に加え、「緩衝し吸収する」という仕組みを人工的に取り入れることがコストパフォーマンス上も効果的ではないかと思うのです。



具体的にはまず、津波の勢力を緩衝させる消波。吸収機能として、海岸から津波の勢力を誘導するための長く深い川への改修。これは逆の山側からの土石流に対し、現在進められている砂防ダム(えん堤)に土石流をすべて止めるのではく、流す機能を持たせることで、土石流の力を減勢させつつ土砂は海へ流して海岸に供給するという発想ですが、これを逆に利用するというものです。



TBS「サンデーモーニング」の「考・震災~人智の限界~」で、造園家で桐蔭横浜大学 特任教授の涌井雅之さんが、自然災害多発国日本の伝統的な治山治水の手法として「間合いを置く、往()なす」というコンセプトを取り上げておられました。



行政改革の一端で、公共事業の削減が喧伝、実行され十数年が経ちました。当時私が関わっていた砂防事業にもそれは波及し、多くの計画がストップしました。土砂災害警戒区域は7/31現在、全国で226000箇所に及びます。この危険区域は、残念ながら現在の国家予算では放置されねばなりません。



主な施策:砂防 - 国土交通省

http://www.mlit.go.jp/river/sabo/




自然災害から身を守るには、警戒区域そのものから居住先を移すのが一番の対策なのですが、住み慣れた土地から移り住むことは、高齢の方々には難しい選択となります。厳しい財政の中での防災事業計画にはコンクリートで対抗するのではなく、自然の地形を生かして間合いを置く、往なす」手法を再検討する必要があると思えます。








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人と水 今日から明日へ/丹保憲仁 竹村公太郎