五十棲剛史さんの「『正義の経営』で10倍儲ける方法」から今回も注目の掲載企業を紹介します。ワイキューブは、リクルート出身の安田佳生さんが創業した人材採用コンサルタント会社です。同社は人件費や福利厚生にウエイトを置いていることで、若い人に人気の企業に成長しました。本書では、五十棲さんがコンサルティングによってプッシュ型の営業からプル型に変えたことによって同社は一気に成長の速度を早めたと述べられています。


千円札は拾うな

私は「千円札は拾うな」を読ませてもらいましたが、本書には彼の基本的な経営理念が次のように述べられています。


「私は社員みんなで生活を楽しみながら美しい会社を作りたい。そう考えるから、収益を増やし、その中の一部をタクシー代に使うことがとても素敵なことに思えるのだ。お金はまた社員と一緒に稼げばいい」。


「数や量の追求には、必ず限界があり、どこかで破綻する。たとえば、『広い家』をどこまでも追求していったとしても、ユーラシア大陸以上に広い家を作ることはできない。しかし、『美しい家』を追求していくとき、そこに限界はない。そうした意味で、企業文化というものを、これからは『数や量』ではなく『質や美意識』を追求していく時期に来ていると思う」。

「本当に豊かな生活を送っている人というのは、預金高の高い人ではなく、キャッシュフローの多い人、つまり持てる権利を十二分に行使している人のことなのだ。人が生きていく上で必要なのは、お金そのものではない。必要なときに必要なお金を作り出すことのできる能力を身につけることである」。

「三十億の会社が百億になるということは、あと七十億売るということではなく、今の三十億のビジネスモデルを手放して、百億のビジネスモデルをゼロから作り上げるということなのだ」。


ワイキューブ業績

「船井総研は、創業して30年以上経ちますが、歴史的に“営業マン”という職種の人物を採用したことは一度もありません。また、訪問営業や電話セールスといったプッシュ型セールスさえも社員にさせたことはないのです」。五十棲さんはワイキューブの経営陣にこう語りプル型の営業へのシフト変換をアドバイスしたといいます。

「そして、売上が67億円だったワイキューブは、それから5年で売上40億円を超える企業に成長しました。プル型への移行が会社をこんなに成長させると最も驚いたのは、安田さん中川さん(副社長)のお二人だと思います」。


安田佳生

安田佳生(よしお)氏は、1965年大阪生まれ。18歳でアメリカ大陸に渡り、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後、大手情報誌会社を経て90年株式会社ワイキューブ設立。主に中小・ベンチャー企業を対象とした新卒採用コンサルティング事業を展開。企業の業績向上を目的とした独自の採用コンサルティング手法により、クライアント企業の人気企業化、業績アップを実現しているこれまでに3000名の社長と30000名を超える学生と会い、2003年には著書『採用の超プロが教える』シリーズを発行。経営者、若手ビジネスマン、学生から絶大な支持を集めている。

ワイキューブサロン

<安田佳生さんのメッセージ>

過去や実績なんて大した意味は持たない。過去や実績にとらわれないで欲しいということ。過去や実績なんて、大した足かせにはならないし、逆にそこまで有利に働くこともないですよ。実際、僕自身昔はどうしようもなく勉強ができなかったし、運動だってできなかったし、リーダーシップだってない、いわゆるいじめられっこでした。(写真は同社のサロン)

だけどある程度結果を出した今はその過去があったから今がある、みたいな、つまり「意味のある過去」だと見なされる。でも、もし僕が失敗していたら、「やっぱり」と言われる過去であるハズです。要は、未来が自分の過去の価値を決めてしまうんですね。だから過去や実績にとらわれずに、自分の可能性を信じて、新しいことや変化に対して、いつも前向きに向かっていって欲しいと思っています。(「起業家人名図鑑」)

私も目下、人材採用、教育のアウトソーシング事業を立ち上げようとしています。私の場合は、中途採用中心の事業展開ですが、このワイキューブの成功はおおいに刺激になります。