仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)/鈴木 敏夫

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「この会社は毎日何が起こるかわからないから、ほんとに楽しい」。高畑勲・宮崎駿の両監督はじめ、異能の人々が集まるジブリでは、日々思いもかけない出来事の連続。だがその日常にこそ「今」という時代があり、作品の芽がある―「好きなものを好きなように」作りつづけてきた創造の現場を、世界のジブリ・プロデューサーが語る。(amazonより)

スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫目線で語られるジブリ誕生から現在(刊行時点)までのジブリを描いています。
破格の才能を持ち、人間としても異形の高畑勲・宮崎駿。ジブリはこの2人によって支えられています。しかしながらわかりやすく言ってしまえば変人2人に締め切りを守らせ、財布を預かるプロデューサー鈴木敏夫こそがジブリを支える3人目の屋台骨であり、企業としては最も重要な人物であるわけです。

そんなわけでその鈴木敏夫の目線から描かれる両監督は才能豊かである反面、実に厄介です。しかし心通わせ操縦術を覚えた鈴木敏夫が描く2人はどこかチャーミングでもあります。また難解になりがちな宮崎駿のインタビューと比べ編集者あがりの鈴木敏夫の言葉は非常にわかりやすく、同時に他人から見た姿だからこそ宮崎駿の本来を映し出していると思いえます。その意味だけでも購入の意義がある1冊ですが、この本の魅力はプロデューサーや社長を務めた鈴木敏夫の仕事を写した作品であり、それはつまりスタジオジブリがどうやって誕生し、今に至るか、あるいはある作品をどんな懐事情で、どんな思いを持って作ったのかまでもがわかる作品でもあるのです。

つまりこの本は鈴木敏夫という1人の男の半生記でもあり、スタジオジブリの自伝でもあるのです。