オー!ファーザー/伊坂 幸太郎

¥1,680
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☆☆☆☆
みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。我が家は、六人家族で大変なんだ。そんなのは珍しくない?いや、そうじゃないんだ、母一人、子一人なのはいいとして、父親が四人もいるんだよ。しかも、みんなどこか変わっていて。俺は普通の高校生で、ごく普通に生活していたいだけなのに。そして、今回、変な事件に巻き込まれて―。(amazonより)

伊坂は全部読んでいるのでとりあえずこれも購入してみました。
結構前に新聞で連載していた作品(ゴールデンスランバー以前)のようで作風は社会へのコミットメント(『モダンンタイムス』など)及び文学的なアプローチ(『SOSの猿』など)はない頃のモノです。平たく言えば『チルドレン』や『陽気なギャング』など、良くも悪くも気の利いたセリフ回しと魅力的な人物の2つに頼り切った作品です。
ファンの方なら、そういや僕たちの好きな伊坂さんはこんな感じだったな、と懐かしくもあり嬉しくもなる作品だと思います。とは言え『1Q84』を読んだ直後だからか、最近の伊坂に慣れてしまったからかあまりの軽さに気抜けして、これで1700円は…という気分にもなってしました。

若干批判的な感じで書きましたが日々の生活にゆとりと彩りを与えてくれる読書体験という意味では十分なクウォリティーですし、やっぱりこの人のこのテイストの作品を読むと頑張って生きていこうって気になります。 伏線の回収や洒脱な会話は『陽気なギャング』や『死神の精度』などに譲りますが人物造形の魅力とテンポの良さは伊坂作品の中でも上位に入ると思われます。最近の伊坂にげんなりしている人は読んでみてはいかがでしょう。