映画365本 DVDで世界を読む (朝日新書)/宮崎 哲弥

¥840
Amazon.co.jp

☆☆
世界を知る、トレンドを見る未来を読む―映画は最高の教科書だ!政治、経済、メディア、宗教、人種、科学、国際関係から哲学・思想に至るまで、ハリウッド映画を題材に、ラジカルに変化する21世紀を見定める教養エッセイ。(amazonより)

宮崎哲弥による映画評論本だが新しいのはその切り口だ。本書は映画そのものではなく映画を観ることによってアメリカ社会が見えるという点に主眼が置かれている。
例えば日本企業と違い外資系企業は人間関係などがクールなのを想像しがちだが、『プラダを着た悪魔』を観ると実際には上司のプライベートな雑用まで申しつけられていることが分かり日本の体育会以上に、奴隷並みの扱いを受けていることが分かると言った指摘がされている。
なるほど、と思う。確かにアメリカ映画を観ることでアメリカを学ぶことは出来るだろうし、またこの作業は博学な宮崎哲弥氏だからこそ可能なことだ。なぜなら『プラダを着た悪魔』で描かれる上司との関係性は映画ならではのものなのか、アナ・ウィンター(モデルとなったヴォーグのカリスマ編集長)という破格な人物が少々異常なのか、それとも多少の脚色はされているもののアメリカ社会では一般的なことなのか、といったことは一般の人々には分からないからである。
これは宮崎哲弥が語る映画評論としては実に適切かつ面白い切り口だと思う。

ただしこのレベルの評論が続けばの話だ。全体を通してはあらすじだけ紹介してwikiでも読めば誰でもわかるような俳優の蘊蓄を述べただけの回や、愚にもつかない単なる映画の感想に終始している回も多く教養を学ぶというコンセプトは守り切れていない。あたamazonのレビューで酷評されているように実際には紹介されている映画が365本ではなく、50本というのもちょっとどうかと思う。シリーズ前作にあたる『新書356冊』と並べたいがためのタイトルなのだろうが、内容的にもボリューム的にも『新書365冊』とは雲泥の差である。

新書365冊 (朝日新書)/宮崎 哲弥

¥840
Amazon.co.jp