ララピポ (幻冬舎文庫)/奥田 英朗

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☆☆☆
みんな、しあわせなのだろうか。「考えるだけ無駄か。どの道人生は続いていくのだ。明日も、あさっても」。対人恐怖症のフリーライター、NOと言えないカラオケボックス店員、AV・風俗専門のスカウトマン、デブ専裏DVD女優のテープリライター他、格差社会をも笑い飛ばす六人の、どうにもならない日常を活写する群像長篇。下流文学の白眉。 (amazonより)

「こんな見た目で…」「こんな歳にもなって…」「こんな性格だから…」
激しいコンプレックスを抱えた人々が織り成すエロ話6篇で構成されています。それも読んでいて思わず興奮してしまうようなものではなく、異常に生々しく不愉快な描写も多いです。それでも読ませてしまうのは哀愁の中に漂う滑稽さであったり、彼らのコンプレックスにどこかしら共感してしまうからです。エンディングまで読んでも彼らの状況は変わらず、むしろのっぴきならないところまで落ちていきます。しかし落ちるところまで落ちた彼らは何かに出会い、吹っ切れていきます。
この辺りの構造は「イン・ザ・プール」に始まる伊良部一郎シリーズと似通っていますね。ただし、しっかりとしたプロットがあるあちらのシリーズと違い、こちらはディティールを追及し、瞬間にこだわった作品と言えると思います。そのため、趣旨や落ちに納得のいくあちらのシリーズに作品全体としての満足感はゆずりますが、読んでいる間の面白みはこちらの方が強いと思います。
また一篇目に登場したキャラクターが2篇目では主役になりといった、連作短編的な構造も次へ次へと読み進める推進力になります。

イン・ザ・プール (文春文庫)/奥田 英朗

¥530
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