〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)/町山 智浩

¥1,680
Amazon.co.jp

☆☆☆☆
保守的で能天気な80年代ハリウッド映画の陰で、スタジオから締め出された映画作家たちは、異様な悪夢の世界を描いた映画を作っていた。その理由を、入手可能な資料と監督自身の言葉を手がかりに解きほぐす。 『ブレードランナー』の何が「二つで充分」なのか?『イレイザーヘッド』の赤ん坊の正体はウサギ?『ビデオドローム』の変態テレビ局は実在した?『未来世紀ブラジル』はなぜブラジルなのか?80年代に狂い咲いた映画作家たちの真実。『映画秘宝』連載の「Yesterday Oncemore」に大幅加筆の決定版。(amazonより)

日本で最も信頼できる映画評論家の1人、町山智浩が80年代映画評論を行った1冊です。紹介されている映画は上記で挙げたものも含め、「ビデオドローム」、「グレムリン」、「ターミネーター」、「未来世紀ブラジル」、「プラトーン」、「ブルーベルベット」、「ロボコップ」、「ブレードランナー」の8本です。どれも知名度が高いものや、映画史に残る名作、奇作の類なので映画ファンにとっては必読の1冊でしょう。

この本を読んでまず圧倒されるのは紹介されている作品や、それを作った監督でなく、圧倒的な情報量を駆使した評論術です。映画作品に投影されたと思われる監督や俳優のごく個人的な体験から、映画のバックボーンになったであろう宗教論や絵画、心理学、更にはハリウッドの映画システムなど、映画に関わることは1から10まで1次情報、2次情報織り交ぜた評論を展開します。そのため本書を読むと対象作品のみではなくリンチやクローネンバーグ、ジェームス・キャメロンなどの過去作や人生観まで知ることができます。あまりに情報量が多いために、一部話があっちこっちにいってしまっている印象もあり、少々読みにくくしている部分もあるのですが、わざわざこの本を手に取る方は相応の映画好きだと思うので、それほどは気にならないかもしれません。とは言え、この人の場合は、やはり語りで聞いた方が面白く聞けるとは思います。書き手よりも弁士としての能力の方が優れている、という印象ですね。

「評論家なんて言いっぱなしでいいんだから、楽なもんだ」常套句のように語られるこの台詞を心の底から信じている方には、是非読んでもらいたい1冊です。力のある人間が誠意を尽くして書けば、評論であってもそれは1つの作品である、ということがお分かり頂けると思います。

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks)/町山 智浩

¥1,050
Amazon.co.jp

映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)/町山 智浩

¥1,680
Amazon.co.jp

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (SHUEISHA PB SERIES)/町山智浩

¥1,000
Amazon.co.jp