光の帝国―常野物語 (集英社文庫)/恩田 陸

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☆☆
膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。(amazonより)

超能力的な力を持った常野一族を描いた連作短編集です。編ごとに視点や、描かれ方は違い、常野一族以外の視点や、常野一族に興味を持ち、彼らの伝承を探った男がある者に送った手紙など連作短編とは言いながらもあまり統一感はありません。

作者自身あとがきで、「バラバラになったある一族の日常をそれぞれ追った短編」を描きたかったと書いていますが、恐らく書きながら向かうべき方向を変えたのでしょう。書き方そのものだけでなく、内容的にも複線を匂わせるもの、壮大なテーマに展開しそうなものなど、途中から色々と埋め込まれ始めます。 2つ星になったのは、はっきりとそれが原因です。全体の統一感はなく、後半の短編では唐突に不自然なほどスピードアップし、振られた伏線は回収されず、これ1冊としては評価に値しません。

序盤の全体像を説明しない不親切な日常譚は結構好きだったので、当初の計画通り書いてくれれば中々良い感じになったと思うので余計に残念です。この作品はその後、常野物語シリーズとして展開しているのですが、あらすじを読む限りそのいずれもが本作の前ふりを膨らました形になっているので、結局のところシリーズ化のためのネタフリを書いたんだな、という印象です。

これが続編2冊です。
蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)/恩田 陸

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エンド・ゲーム―常野物語 (集英社文庫)/恩田 陸

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