パラドックス13/東野 圭吾

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☆☆
「世界が変われば善悪も変わる。
人殺しが善になることもある。
これはそういうお話です」東野圭吾

運命の13秒。人々はどこへ消えたのか?
13時13分、突如、想像を絶する過酷な世界が出現した。陥没する道路。炎を上げる車両。崩れ落ちるビルディング。破壊されていく東京に残されたのはわずか13人。なぜ彼らだけがここにいるのか。彼らを襲った“P-13 現象”とは何か。生き延びていくために、今、この世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解かなければならない!
張りめぐらされた壮大なトリック。論理と倫理の狭間でくり広げられる、究極の人間ドラマ。“奇跡”のラストまで1秒も目が離せない、東野圭吾エンターテインメントの最高傑作! (amazonより)

私の中では東野圭吾は極めて当たりはずれの多い作家です。そしてこの作品ははずれです。
基本的にはある現象により人々が消え、地震に大雨といった様々な天災に巻き込まれながら生きていくことを余儀なくされた10人ほどの人々の物語です。帯やHPでアピールしている、数学的矛盾やらパラドックスには大した意味はありません。本作で東野圭吾が描きたかったのは、無人島や隔離された施設ではなく誰もいない東京でサバイバル生活をさせることだったのでしょう。そのためにパラドック13なんていうSFっぽい概念まで持ち出しているわけですが、それ自体はエンディングへの流れも含め結構無理がある論理建てですし、ストーリー全編を通しては大してからんできません。また本作では「なぜ彼らだけが、誰もいない東京に残されてしまったのか?」というのが大きな謎として存在しているのですが、作品最大の謎なはずのそれに関して言えば、周りの人間が消えた瞬間にもうわかってしまいます。つまり冒頭からごく自然に分かるようになっており謎でもなんでもありません。

さて肝心のサバイバル生活ですが、これに関しても読み手としてはもっとうまいやり方がいくらでもあるだろうという突っ込みどころ満載の感じで進んでいきますし、隔離生活では見せ場となる心理戦なども存在しません。またキャラクターも「極めて頭は切れるが人の気持ちを全く理解しないリアリスト」「その弟で現実的ではないものの人の心を打つ行動する熱血漢」「若くて生意気でエネルギッシュな女子高生」「それまでの価値観を捨てきれず部下を顎で使おうとする横暴なオヤジ」「気はいいけどこんな状況下でも食べ物にしか頭のいかないデブ」どのキャラクターもどこかで見たような非常にステレオタイプなキャラクター達です。エンディングに関しても極めてありがちな感じですし、作品全体が様々な作品の寄せ集め、という印象なんですね。しかも名作のオマージュやインスパイアというのではなく、いずれも最もスタンダードでステレオタイプなものを突っ込んだ感じです。冒頭の東野圭吾の言葉にあるような、別の世界の別の価値観も、それほど驚かされるようなものはなく、これもありがちですし。トータルの印象としてはひどく劣化した「漂流教室」(もちろんドラマではなく漫画の方です)ですね。2つ星でもギリギリです。はい。

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