博士の愛した数式 (新潮文庫)/小川 洋子

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☆☆☆☆
80分しか記憶を保つことの出来ない元数学者の博士。その博士の家に家政婦として雇われた私。偏屈でとっつき難い人に見えていた博士との関係だったが、博士にルートと名づけられた私の息子が加わることによって温かく、喜びに満ち溢れた生活へと変わっていった。

寺尾聰と深津絵里が出演した映画としても有名な作品ですね。ずっと気になってはいたのですが、小川洋子の新作「猫を抱いて象と泳ぐ」のあらすじを読んで興味を惹かれ、とりあえずこちらから手を出してみました。

一見して偏屈で頑固な年配者が誰かと心をつなぐことで徐々に優しさを取り戻していくというプロット自体は非常にありがちなものなのですが(ちなみにこの作品に登場する博士はそこまでステレオタイプなキャラではないです)そこに数学というエッセンスを心地よい形で入れ込んだのは作家の感性の素晴らしさと小説家としての技量を感じました。

例えばある問題に取り組み、そこにある種の法則性が見えた時に感じるまるで光明が差し込むような感覚は誰もが一度は感じたことがあるでしょう。そしてそれをこの作品に登場する博士の家でたった2人あるいは3人で感じると、そっと世界の秘密を共有したかのような親密さと神秘性を感じさせてくれます。また博士は数字だけでなく料理や子どもと言った存在にも愛おしさと優しさを込めた温かい言葉をかけます。これが作品に登場する人物、さらには読者にまである種の親和性を感じさせてくれるのです。

とりたてて泣けるシーンも笑えるシーンもなくタンタンと進んでいく本作ですが、久し振りに良い本を読んだな、という気にさせてくれました。

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映画も観てみようと思っています。
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