τになるまで待って (講談社ノベルス)/森 博嗣

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Gシリーズ第3弾です。今回は車では入ることの出来ない山道を歩いた先にある「伽羅離館」が舞台です。外は嵐、しかも扉は閉ざされ館からは出ることが出来ない。そんな中で起きた密室殺人。閉じ込められた加部谷恵美、山吹早月、海月及介、探偵赤柳初朗の運命や如何に。

ということなんですが、森さんの作品ですからね。登場人物たちは相変わらず危機感0です。
しかも肝心の事件はトリックが解明されるだけで犯人も動機も、実際の犯行手法も明らかにはされません。しかも唯一解き明かされるトリックも物理的過ぎて細かいところまではとても推理なんてできるようなものじゃありません。(大筋は分かります。私も分かりました。)
それでも終わり方が含みを持たせ、読者の想像に委ねるようなタイプのものならいいんですが、そうでもないんですよね。

そもそもこの4人が伽羅離館に来た理由が収蔵されている図書から真賀田四季の情報を探るためでしたので、どうもこの作品はシリーズ内でのつなぎ的な位置づけな気がします。おそらく今回の事件については後々別作品で大きく活かされて来るんだろうと思います。

私自身はこのシリーズは1から読んでいますし、現状で第7弾まで出ているシリーズでもありますので先を読む楽しみなどから3つ星程度は楽しめました。しかし単品としてみれば文書が上手くキャラが立っているという点以外は最低ランクのミステリーです。これが何となくとった1冊であったら、あるいはシリーズの最新刊を楽しみしている状態で読んだ最新刊であったなら、金を返せってレベルですね。

シリーズ全体を読むことで明らかになる大きな物語を描くことは大歓迎です。それがシリーズ物の醍醐味ですから。しかしそれは1作1作で完結するストーリーがあってのことです。それがないなら最初から個別にタイトルなど付けずに「三国志」や「宮本武蔵」のような大長編にして1巻2巻と付けて、続けて読まなければ分からない小説であることを明示すべきでしょう。
こんな内容で何処から読んでもらっても構わないと言う作者の言葉はあまりに誠実さを欠いています。