デモクラシーの論じ方―論争の政治 (ちくま新書)/杉田 敦

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☆☆☆☆
政治学を学ぶにあったって最適な入門書の1つだと思います。
ちなみに本書では国会運営のされ方や総選挙、あるいは時事的な国際情勢についてなど、具体的な政治の運営についての言及はありません。本書で取り扱われているテーマはより概念的なものであり、それがどうあるべきか、ということについて述べられています。例えば、国民主権や憲法改正、二大政党制、選挙といった内容についてそもそもそれらがどのような意味を持つのか、あるいは持つべきなのか、ということについて書かれているわけです。

しかし本書が特徴的なのは内容というよりはその記述のされ方にあります。
民主主義を「決定手続き」と捉える側と、「民主主義はその活動自体に本質がある」と捉える2人による討論形式がとられています。もう少し端的に言えば「民主主義は多数決である」という考え方に対して「多数決で無視される少数意見にこそ本質があることだってありえるのだから、本来は多数決でなく議論にこそその意味があるのだ」と考える2者による議論が憲法や、選挙といった様々な分野において展開されていきます。
勿論実際に書いているのは杉田氏1人なので議論はバランスがとられておりどちらかが優勢になるということはありません。
高校や大学1年生がクラス単位で行おうディベートやプレゼンなどの題材として使用すれば非常に効果的であると思われる本です。こう書くとある程度の知識レベルを持った人には物足りなく思われるかもしれませんが、知識があれば知識にあっただけ学ぶことがある本です。この本の最大の価値は討論形式で普遍的本質的なことを議論することにより、私達に自分のレベルに見合った思考の機会を与えてくれる、ということです。書かれていることがうわべの知識でなく、本質的なことなので、その内容から敷衍して自分なりの議論を頭で組み立てることが出来るのです。