東京島/桐野 夏生
¥1,470
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基本的にはある程度良かった本を紹介しているので今まで星1つはつけないできましたが、この作品は…。発売されてまだそれ程時間も経っていませんので、読んだのは発売当初でしたが今更ながら書いておきます。
無人島に漂流した人間が…、という使い古された状況設定下での物語ですが、何一つとして目新しいこと、感じ入る所がありません。ほぼ男性の中女性はたった1人、そんな状況下で彼女の野生と女性性が目覚めていくというようなお話なのですが。この女、自分勝手でしかも容貌も徐々に崩れていき、共感も出来なきゃ感嘆するような心理戦も見せてくれず、ただただ醜いです。
作品全体を通しても「蝿の王」のような島の人間同士の権力闘争にまつわる心理戦もなければ、ドラマ「LOST」のような島で生きていく知恵や島にまつわる謎も出てきません。島を出ようとする必死の人間ドラマすら垣間見えませんし…。
作者は何らかのメッセージをこの小説に込めたのでしょう。それは分かります。しかしながらそれが何だったのかはさっぱり分かりません。エンターテインメントとしても社会派サスペンスとしても楽しむことは困難な作品です。