文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)/京極 夏彦

¥1,400
Amazon.co.jp

☆☆☆☆☆
京極道シリーズ第5弾
今回のテーマは「絡新婦」=フェミニズム 「理」=複雑に絡み合った事件の全貌に潜む理です。
しかし巻が進むたび長くなる京極堂シリーズも遂に文庫本としての限界の厚み1400頁に達します。(ちなみに更に長さが増す次巻では遂に上下巻になります)
今作で特徴的なのは犯人対京極堂のやりとり、つまりクライマックスが冒頭に展開される、ということです。つまりこのシーン、このセリフにむかってストーリーが収斂していくとわかって読み進めていくわけです。評価は人によりけりなのでしょうが、個人的にはこの書き方にやられました。沈没する船、ひと時だけのはかない恋と分かって観るタイタニックのようなものでしょうか?ただし、いつもは詳細に語られる京極堂の事件解説ですが、今回の場合、冒頭でそれが展開されるのでかなりぼかした書かれ方になってます。巻末で事件の全貌は見えるものの、冒頭のやり取りが犯人の心について、つまり憑き物落としをしている場面なのでそれについてはどうもはっきりとしなかったりします。というか分かりにくいです。
それはそれとして、今作では全編通して京極堂の上をいく犯人という、今までに登場しなかったタイプのキャラクターが登場しますのでかなりヤキモキ、ハラハラドキドキさせられます。何てたってミステリー史上史に残るあの明探偵(京極堂じゃないですよ、榎木津の方です)ですら翻弄される事件ですから。
とりあえず5つ星です。

京極堂シリーズをまとめた京極堂シリーズまとめはこちら