首領(ドン)―昭和闇の支配者〈3巻〉 (だいわ文庫)/大下 英治

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☆☆☆☆☆
最近事務所移転の問題で稲川会が話題になっていますね。この記事は2ヶ月ほど前に書いたんですがサクッと2行ほどの書評だったので、ちょっと内容を厚くして再アップです。

本書は日本でも5本の指に入る広域暴力団稲川会を一代で築き上げた稲川成城の物語です。つまり稲川成城の人生を描くことすなわち稲川会の歴史となるわけです。そういった視点で読めば本書は稲川成城という傑出した男の博徒としての、そして任侠に生きる者としての生き様を描いた作品であるわけです。しかし一方では一代で巨大な組織を作り上げた立身出世伝でもあるし、戦後の混迷期から自民党誕生に至るまでを描いた昭和史そのものでもあるわけです。
本書には自由党結党に影で豪腕をふるい、後にロッキード事件で世に名を知らしめることになったキングオブフィクサー児玉誉士夫との邂逅なども登場し、裏の昭和史を学ぶ上でも非常に重要な資料となり得ます。

ちなみにかのハマコーをヤクザから足を洗わせ政界に送り込んだのもこの人です。

このように多様な読み方が可能な本書はノンフィクションとしてのみではなく物語としても非常に良くできた作品です。仁義なき戦いやあるいは最近で言うクローズ、ワーストなどを好む層は非常に楽しんで読むことが出来るでしょうし、昭和史に関心の強いノンフィクション好きの需要にもこたえられる傑作です。
ちなみに今話題になっている事務所が出来た当時の話にも触れられています。



ヤクザ指定21組織の全貌―その体制、役職人事、沿革までを徹底解析! (洋泉社ムックY 55)

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近代ヤクザ肯定論―山口組の90年/宮崎 学

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