●文学の素養がある私はふと、わが郷里の詩人、萩原朔太郎の詩「フランスにいきたしとおもへども フランスはあまりにもとおし」の一節が思い浮かびます。これを今の私流に翻案するならば、〝ドイツに行ってみたいと思うのだが、ドイツ旅行は高くつくだろうなあ……〟でしょうか。
●も一つ、私の教養がひらめきました。森鷗外の 『舞姫』です。東京帝国大学医学部を卒業した鷗外は、陸軍軍医となり、陸軍省派遣留学生としてドイツで4年間を過ごしました。選良、すなわち今でいうエリートですね。しかも、〝超〟がつく1%です。その後、官僚の途をひた走りに走って行く一方、文学者としても活躍しました。その鷗外の処女作が『舞姫』です。この作品を遥か、遠い遠い昔に読んだ記憶があります。
国費留学生として学業する傍ら、ある日、クロステル通りの教会の前で涙に暮れる美少女エリスと出会ってしまったのです。彼女は家が貧しく、やむを得ずして、街頭に立つことになりました。その後、エリスは鷗外の下宿を訪れ、懇ろの仲になったのです。
これは鷗外の実際の経験に基づくものであります。子どもを身ごもったエリスは帰国した鷗外を追って、日本までやって来ました。しかし、選良である鷗外は、もちろん彼女を振りきり、その後、鷗外は陸軍省のトップ、軍医総監=中将相当まで登りつめていったのです。
●原文の冒頭と結末をお読みください。

(冒頭部分) 石炭をば早(は)や積み果てつ。中等室の卓(つくゑ)のほとりはいと静にて、熾熱燈(しねつとう)の光の晴れがましきも徒(いたづら)なり。今宵は夜毎にこゝに集ひ来る骨牌(カルタ)仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人(ひとり)のみなれば。

(結末部分) 余が病は全く癒えぬ。エリスが生ける屍(かばね)を抱きて千行(ちすぢ)の涙を濺(そゝ)ぎしは幾度ぞ。大臣に随ひて帰東の途に上ぼりしときは、相沢と議(はか)りてエリスが母に微(かすか)なる生計(たつき)を営むに足るほどの資本を与へ、あはれなる狂女の胎内に遺しゝ子の生れむをりの事をも頼みおきぬ。
 嗚呼、相沢謙吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。されど我脳裡(なうり)に一点の彼を憎むこゝろ今日までも残れりけり。 (明治二十三年一月)

●若かりし頃の私はこの作品を読んで、選良というものは本当に辛いもんだな。選良にだけはなるまい、と、深く心に決めたものです。とにかく、印象深い作品でした。
ご興味ある方は、パソコンで無料図書館『青空文庫』を検索すると、ロハで読めます。秋の読書におすすめです。


●閑話休題。ふたたび豪華ツアーです。ここからは下衆のかんぐりということになります。私自身、下衆もいいとこなんで、大いに共感の心をもって、かんぐっていきます。
●彼ら横浜市議たちは、文字通り選挙によって選ばれた選良たちです。
巨大都市=横浜の人口は現在、3,693,200人ということですから、今回の選ばれた選良たち18名は、計算してみると、0.00000485%。1%どころか、〝超〟が5桁も6桁も必要となるスーパー・エリートたちです。
で、私のかんぐりによりますと、99%、彼らは行きます。どこへ? アソコです。
●先日、時間があったので〝豪華旅行〟参加者たちの年齢を調べてみました。ほとんど40代のバリバリです。
中には頭の薄い方も何人かまじっていますが、働き盛りもいいとこです。注目の斉藤議員などは、まだ30代。ギンギンに恰幅が良く、自民党の幹事長=石原ジュニアなんかより、よっぽど政治家らしい貫禄ぶりです。
●私もかつては働き盛りでした。彼らの気持ちがよ〰くわかります。日ごろは大変なストレスです。市民の前では笑顔をふりまき、もっともらしいことをつぶやきながら、朝から晩までドブ板です。おそらく彼らにとって今回の旅行は、人生初めての豪華版。ルンルンにならないわけ、ないじゃないですか。さあ、夜の文化交流だア!とばかり、大ハッスルの先生方です。
●聞くところによると、フランクフルトにはヨーロッパ最大の歓楽街があって、しかも公営の〝飾り窓〟があるとかないとか。日ごろの活動の延長線上で、フランクフルトの公営行政は円滑に行なわれているのか、夜の探訪に出かけないはずはありません。しかも、豪華120万円です。セミ・スイートくらいのダブルベッド付きかもしれません。お持ち帰りだって、自由自在。とんでもない旅行になりそうです。

朝鮮半島を見れば日本がわかる !  ???? ?? ??? ???  !


●ここまで書いてきて、羨ましいのを通り越して、何だか馬鹿馬鹿しくなってきてしまいました。
こんなツアーに3000万円もの公費を使って、本当にいいものなのでしょうか? サッカーをやるとかいってますが、連日連夜の豪遊で、腰砕けです。昼間の研修なんかも、どうせ聞いてもいません。こっくりこっくりお昼寝です。
帰国後は、形ばかりの報告書。横浜市民のみならず、これを知ったら怒り狂うことでしょう。
何とかならないもんなんでしょうか?
●3000万円あったなら、様々な活用方法があるはずです。横浜出身の芸能人なんかを親善大使にして、市長と一緒にヨコハマを宣伝してくるとか、あるいは日本大好きのドイツの若者を数10人招待し、ホームステイでもさせながら、ヨコハマを体験してもらったほうが遥かに効果的です。横浜の放射能対策だって、ごてごてなんでしょう?
このまま彼らを放り投げてしまって、本当にいいのでしょうか?


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http://www.city.yokohama.lg.jp/shikai/meibo/meibo4.html
↑ 横浜市会議員名簿