2007-09-29 20:44:47

正造の強気と弱気と二枚舌・21

テーマ:田中正造の嘘

前述した逸見斧吉は、正造が晩年に一番数多くの手紙を書いた相手で、正造の様々な愚痴や不満がこの人に寄せられました。明治41年11月14日の書簡の内容を紹介します。


「衣食足りて礼節。飢えては権利もなし。谷中人民は愚かなるのみならず、思慮も何もないので、殺されるまでは死をも知らずです。国滅びて乞食に陥るまでは楽観して、汝の胃袋を食い破る」


「廟堂(朝廷のこと)馬車来往、錦を飾る高等官等の奢侈貪欲、胃袋を破り、法律を破り、憲法を忘れている。彼もまた殺さるるまで死を知らず。ただし神はいずれに近いか。谷中人民のこの愚鈍なる者に組するはもとよりにして、我々の光栄ここに存しては、また精神上の大勝利」


正造にとっては、貧しい農民も上流階級も気に入らないのです。だから両方に文句を言っています。しかし、寄るべき場はその時谷中村にしかなかったので、「神に近い」とまで言わざるをえませんでした。しかし、彼は死ぬまで谷中村民を自分に従わせようとしていますから、軽蔑していることには変わりありません。この手紙も明らかに二枚舌で書かれているといえます。


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2007-09-22 22:03:08

正造の強気と弱気と二枚舌⑳

テーマ:田中正造の嘘

渡良瀬川沿岸の鉱毒反対運動が終わると、彼は谷中村の遊水池化反対の孤独な運動に全精力を傾けますが、反対を訴えるために膨大な手紙を書きます。そして、ここでも又政治家の無理解に腹を立て、名前を挙げて個人攻撃を繰り返しました。


この時期に正造の数少ない理解者であった逸見斧吉(缶詰メーカー・逸見山陽堂の社長)への手紙の一つには、次のように書かれています(明治43年1月6日)。


「(遊水池の計画地域は)東西南北3,4000町、村数11ケ。皆死せるごとし。日本亡国はこれに証しても余りあるけれども、東京の代議士中にも2,3の賢者を気取る人あれども、その人々に未だ(遊水池化反対の)陳情の運びなし。卜部氏は、利島、川辺(谷中に近い村)が選挙民のいる所なりしも来てくれず。津久居、細野氏この村潰し、人殺しに賛成せり。憐れむべし、彼らの傲慢心、人の教えを聞くの得なく、悪人というにもあらでこの不義に組みせり」


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2007-09-19 21:44:38

正造の強気と弱気と二枚舌⑲

テーマ:田中正造の嘘

正造の不平不満は政治的な敵対者である国会議員や県会議員にとどまりません。
鉱毒反対運動の闘士だったかつての仲間に対してさえ、不満の捌け口を向けるのです。


紹介するのは界村の村長で被害民のリーダーだった野口春蔵に宛てた手紙ですが、野口たちは谷中村の遊水池化反対運動に背を向け、正造が強引に引っ張り込もうとしても応じなかったので、こんなことを書いたのでしょう。明治42年1月21日付け、足利の親戚の家から投函しています。


「沿岸(渡良瀬川)は年に月に貧窮に陥り、才子は逃げ、狡猾は盗み、青年は奪われ、老年は死す。流毒は止まず、すでに昨年41年の8月7,8,9日の如きは、またねずみ色の毒水流れ、新田、山田の用水路も魚死せり」


「しかれども先年のごとく人民騒がず、界村役場、植野村役場なぞこの流毒を知らず。庭田恒吉君すら川の端にいて驚かず。この大敵を見て驚かぬは熟練の兵となりたるためか」


このような状態にあるのは自分にも問題があるという意識は、この手紙からは全く感じられません。しかし、事実はそうであるに違いないのです。世間一般の人々はたいがいそのような自省をするものです。

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2007-09-15 21:18:00

正造の強気と弱気と二枚舌⑱

テーマ:田中正造の嘘

正造にとって、国会議員だけでなく栃木のほとんどの県会議員の対しても敵意をあらわにし、特に名前を挙げて徹底的に彼らの悪口を書いています。谷中村の遊水池化を推進した議員たちですから批判の対象には違いありませんが、正造と鉱毒反対運動をしていた被害農民もまた推進派だったわけですから、民意にも逆らって責め立てていたわけです。


明治44年10月15日付けの近藤政平(佐野市)宛の手紙に、彼は次のように書いています。


「たとえば清水氏の智にして、すでにこの術中(古河鉱山側の策略)に落ち込み、わずかの物を得て多大の信用にきずつけ、木塚氏物を得ずして術中の奴隷と認めらる。あに馬鹿然たり」


「たとえば横尾、野島は陸軍参謀、影山ひとり外交上にわたりて功名あり。彼等が銅山の奴(やっこ)となりてここに十余年。これに伴う下野人道の頽廃は、今日の極度に落ち果てたり。事実は山の如し」


「予今議論を好まず。ああ、県議の貴重任なること、地方において非常の資格なり。しかも県会開設以来、未だ県会議員の真権発動の美を見ず。明治は44年なりとす。真権の発動こそまほしくも思えおり候」


「未だ県会議員の真権発動の美を見ず」などと、現実にはありえない夢のようなことを言っていますが、元県議の自身は真権を発動できたのでしょうか。自分のことは相変わらず棚に上げて、他人ばかりを責めるので、つい「あなたは何様のつもり?」と批判したくなります。


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2007-09-12 20:55:22

正造の強気と弱気と二枚舌⑰

テーマ:開設にあたって

彼はすぐカットなって怒り出すタイプの人間で、帝国議会で失礼な発言を繰り返し、よく発言禁止、公式記録からの発言の削除、退場、出席停止などを命じられました。


その議会でも、しばしば馬鹿野郎発言をしていますが、彼が所属する政党の党首だった大隈重信が、外務大臣との兼任で農商務大臣に就任した時(明治30年3月29日)、農商務省が、足尾銅山などの鉱業を管轄する役所だったからでしょう、同じ党員の衆議院議員の尾崎行雄に宛てて、次のような手紙を出しています。


「犬養馬鹿尾崎馬鹿、イカナレバ伯(大隈伯爵)を農商の大臣とせしは馬鹿の馬鹿、大馬鹿三太郎よりも大馬鹿なり。その詳論を聞きたくば来たれ。正造病気中にあり候まま一書さし進じ候。頓首。3月30日。尾崎君馬鹿、犬養君馬鹿、なお武富君馬鹿、高田君馬鹿、阿部君馬鹿、島田君馬鹿、外馬鹿御中」


絶えず不満を持ち、その原因を他人にぶつけて怒りをあらわにしていた非常識さが、この手紙によく現われています。単なるユーモアとはとても思われないのです。このようにして敵をたくさん作り、晩年は友人といえる人がほとんどいなくなるのですから。


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2007-09-08 20:56:43

正造の強気と弱気と二枚舌⑯

テーマ:田中正造の嘘

手紙魔といっていいほど多くの手紙を書き続けていながら(全集のために集められた手紙は4800通余だったという)、田中正造の手紙文は日本語の文章としての体をなしておらず、意味の通じないことがしばしばあります。


ところが、彼はその自分の欠点は棚に上げて、他人の手紙文を「下手だ」といってお説教しようとするのですから、本当に驚くほかありません。


今回は、全集にある手紙に手を加えずそのままここに紹介します。明治42年9月25日付け、原田定助宛の書簡からの引用です。


「原田柳子さま何故か手紙が下手ニなりました。わたくし心配です。何か精神ニくるしみが多いのでありと考へます。この手紙其儘入御らんニます」


「湯泉の性質御取調べの上によい方角に御指示被下度候。那須か塩原ハよいと思われます。草津、いかほハなんだか相当せるか、如何。塩原の入りニ荒湯あり。荒湯の本ニ又もと湯と言ふあり、多分ハ之ハよいかと思ふ病症であるよふす。正造。二十五日、原田みき子さま」


自分より社会的地位が高い人に対しては、「悪文で申し訳ない」とへりくだっていますが、親戚の子供には「精神的に問題だある」とまでいうのです。明らかに自分は偉いんだという意識が働いているのでしょう。彼の単純さがよく理解できます。

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2007-09-05 21:38:14

正造の強気と弱気と二枚舌⑮

テーマ:田中正造の嘘

彼は、世の中のほとんどのことが気に入らず、友人達への手紙でその不満をぶちまけています。その前提は自分は正しいことをしていると言う意識ですが、しかし、単なる利己主義に過ぎないと言うことができます。
ここでは2通の手紙を紹介します。


「医者は病人すらあれば繁盛す。経済家は悪事を働けば繁盛す。法律家は愚人を欺けば繁盛し、政治家も賄賂で繁盛して、共に国家の悲惨を知らず。農民と労働者は食乏しく、家屋破れて雨は漏る。衣も汚れて虱(しらみ)多し。国家は早晩下落してほとんど株式の下落のごとし」(原田勘七郎宛。明治40年7月24日)


「国家は疾く滅亡して、社会独り苦悶の中にあり。東京はその病原地にして地方は被害地。・・・東京は実に良心保全の地にあらず。東京の一般は乱心するものの如し。本心を有する者ほど憐れなり。有するものほど悲惨なり」(逸見斧吉宛。明治42年11月10日)


彼が、物事を実に単純に、善と悪に分けていることがわかります。
農民と労働者は正直で貧乏であり、政治家や医者その他の社会の上層部の人々は悪事を働いてうまくやっている、東京は加害者で地方は被害者だ、と決めつけています。現実の世界では、このように単純ではありえません。しかし、彼は自己中心に物事を解釈しているため、世の中のことを観念でしか理解できないのです。なんと幼い精神構造なのでしょう。


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