唐辺葉介『ドッペルゲンガーの恋人』(星海社FICTIONS)を読了
シライシユウコ=イラスト
veia=カバーデザイン

2011年8月16日 第1刷発行
ISBN978-4-06-138810-9 C0093 Y1150E
定価:本体1,150円(税別)

メモあらすじ

僕の恋人は、死んだ恋人の記憶を植え付けたドッペルゲンガー。
亡くした恋人のすべての記憶を、僕はクローンに植え付けた。
新しく誕生した「恋人」との暮らしが、僕と彼女を追い詰めていくとは思いもよらずに--。
まさに待望、唐辺葉介の復活作は、胸打つSFラブストーリー。


(本書カバーより)

本

クローン研究者が みずからどつぼにはまっていくわけですが…

クローンの恋人ではなく 恋人のクローンなのです…
そこから導かれる結末は悲しみしかないというのは読む前からわかってはいるのです
恋人のクローンが クローンの恋人となることはないということを…

この手の悲恋を描く場合には
過去の恋人との思い出をあちこちに挿入し積み重ねることで
そこと現在の二人の状況の乖離を演出したりしますが
それほど本当にこの二人は密接な関係があったのかしらん?
と思えるほど なにやら描写はあっさりとたんたんとしております…
だって死んだ恋人の記憶を植え付けてまでクローンを作ろうとするんだもん
それくらいの粘着性があってもよかったのではないでしょうか
もちろんその後の主人公の展開は
ミイラ取りがミイラになるくらいに ある意味 粘着質なのですが
彼の行動にはひとすじ通ったものを感じられなかったのでした…
そのくらい恋は盲目だったのか?

一方 クローンとして意に反して蘇らされた彼女のほうは
植え付けられた記憶と現実の自分の気持ちのギャップに悩むわけです
彼女の彼からの逃避はよく理解できます
なのに あいつときたら…(笑)

本作 全編 クローン彼女の一人称語りだともっと面白いのにな…
と思いました…

独断評価:65/100

ドッペルゲンガーの恋人 (星海社FICTIONS)/唐辺 葉介

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