ミゲル・シフーコ『イルストラード』(エクス・リブリス/白水社)を読了
中野学而=訳
緒方修一=装幀
三井ヤスシ=装画

Ilustrado by Miguel Syjuco

2011年6月1日 印刷
2011年6月20日 発行
ISBN978-4-560-09016-9 C0097 Y3000E
定価:本体3,000円+税

メモあらすじ

2002年2月、ニューヨークで活動を続けてきたフィリピン人亡命作家クリスピンが、
ハドソン川にて死体で見つかった。
彼の書斎からは、近代フィリピンを牛耳ってきた歴代の富と権力の内情を暴いた、
執筆中の小説の原稿が消えていた。
クリスピンの若き教え子ミゲルは、
謎めいた死の真相を解明すべく、母国フィリピンへと旅立つ。
師の足跡を追って奔走するミゲルだが、
頻発する反政府デモ、テロ、停電、大洪水など事件や惨事がつぎつぎに起こり、
師の知人たちとの会見も難航する。
しかしそのような困難のなか、
やがて師の人生を追うことの本当の意味に気づきはじめたミゲルは、
迷宮を抜けだす道を求めて、飛行機で離島へ向かう……。

マン・アジアン文学賞受賞作


(本書カバーより)

本

ミゲル(偶然に著者と同じ名前の主人公)が師匠クリスピンの死の謎と
消失してしまった執筆途中の原稿をもとめて
ふるさとフィリピンを訪ねて回るミステリーなのです

師匠クリスピンの死のミステリーを解き明かすために
彼のふるさと(そしてミゲルのふるさとでもある)フィリピン各地を駆け巡ります
それが主軸となりつつ
クリスピンの過去の著作やミゲルがこれから執筆するクリスピン伝の原稿
インタビュー原稿の書き起こしたものやら
フィリピンに伝わる下世話な猥談や笑い話などが
さまざまな方向から流れ込んでいます

また同時に現在進行中のフィリピンの政情不安定さも伝わってきて
ミゲルの捜査は遅々として進みません
しかしさきほど述べたようなさまざまな挿話がある一定の流れを作り出しています

ミゲルは師匠を追ってフィリピンまで来たのですが
結局のところミゲルは
ミゲル自身の出自と自分が育ったフィリピンという国の現状に直面するのです

ミステリーのようであり望郷小説のようでもあり
口にするのもちょっと恥ずかしい青春小説のようでもありました

なかなか面白い作風で ちょっと新鮮

独断評価:80/100

イルストラード (エクス・リブリス)/ミゲル シフーコ

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