ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q-檻の中の女-』(ハヤカワポケットミステリ)を読了
吉田奈保子=訳
吉田薫=翻訳協力
水戸部功=装幀

Kvinden I Buret (en. Mercy / de. Erbarmen) by Jussi Adler-Olsen

2011年6月10日 印刷
2011年6月15日 発行
ISBN978-4-15-001848-1 C0297 Y1900E
定価:本体1,900円+税

メモあらすじ

「特捜部Q」未解決の重大事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。
カール・マーク警部補は「Q」の統率を命じられた。
しかし、あてがわれた部屋は暗い地下室。
部下はデンマーク語すら怪しいシリア系の変人アサドひとりのみ。
上層部への不審を募らせるカールだが、仕事ですぐに結果を出さねばならない。
自殺と片付けられていた女性議員失踪事件の再調査に着手すると、
アサドの奇行にも助けられ、驚きの新事実が次々と明らかに。
北欧の巨匠が本邦初登場!
デンマーク発の警察小説シリーズ、第一弾。


(本書表4より)

本

え? 翻訳小説なんて読まない?
カタカナの登場人物がいっぱいで誰が誰やらわからないって?
でも面白い刑事ものを読んでみたいって?
そんな方にはぜひ本書をどうぞ

登場人物たちはみんな特徴ある人物ばかりで
誰が誰やらわからなくなることはまずありません
何よりも魅力的なやつらばかりです(ちょっと危ないやつもいますが)

物語はある女性がどこかの密室に監禁されているところからはじまります
とても衝撃的なプロローグです
なぜこの場に閉じ込められているのか? どうなるのか?
それはもうこの先が知りたくなって 読者は一刻も早く次のページをめくりたくなります
うーむ この作者は惹きがうまいなー

そして本篇は数年後へ…
体よく地下へ追いやられた刑事が新部署として迷宮物件を扱うことになります
ん? その迷宮入りした事件とプロローグの監禁された女性がどうリンクするのか
これがなかなかスリリングな展開でぐいっと読ませます
数年前からつづく監禁された女性の狂気に満ちた世界と
現在(物語上の)の捜査状況が次第にひとつに収束していきます…
ふたつの時間軸がひとつにまとまったときには
思わず「キターーー」となること請け合い

主人公のカール刑事のひがみっぽい性格やら(例にもれず女好き)
ちょっと危ない(笑)アサド助手やらがいい味を出しています
このコンビは絶妙 なんだかんだと文句をいいながらも
けっこういい感じのコンビに最終的にはなっていくのだった…
シリーズ展開には重要な要素となる
魅力ある刑事&助手というキャラクタの創造に見事に成功しています
こいつらの話ならまた次も読んでみようかな?と思わせてくれます

さすがに世界でも早い段階で同性結婚を認めたお国柄だけあって
同性愛男性や女性も数多く登場します
他国の読者を考えてか その都度ちょっと地の文が回りくどい気がすることもありますが
彼ら彼女らもとても魅力的ないいやつらです

みんな心になんらかの傷を抱えて生きています
それらが複雑に絡み合った結果 生み出された悲劇でした…

ラストシーンにぐっときます
おすすめ♪

独断評価:90/100

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