フランク・シェッツィング『沈黙への三日間(上・下)』(ハヤカワ文庫NV)を読了
北川和代=訳
(C)WIN-Images/Corbis/amanaimages=カバー写真
ハヤカワ・デザイン=カバーデザイン

Lautlos by Frank Schätzing

2011年3月20日 印刷
2011年3月25日 発行
(上巻)ISBN978-4-15-041236-4 C0197 Y920E
(下巻)ISBN978-4-15-041237-1 C0197 Y920E
定価各:本体920円+税

メモあらすじ

ターゲットは世界で一番厳重に警備されている。
その人物を指定の時刻に指定の場所で暗殺する。
全世界がその光景を目撃できるよう……
ミルコと呼ばれる男の任務は不可能とも思えた。
成功するのに必要なのは奇跡だ。
動き出したミルコは、ヤナと言うコードネームで仕事を請け負う女性暗殺者に依頼する。
報酬は二千五百万ドル。
そして完璧な暗殺計画は静かに動き出した。
世界的ベストセラー作家が放つ暗殺サスペンスの最高峰。


(上巻カバーより)

本

社会情勢などがとてもリアル
それだけにそこに紛れ込んだ登場人物たちも本当にいたかもしれない
本当にこのようなことがあったのかもしれないと
思わせるほどのリアリティをもって読むことができました
小渕元首相が一瞬名前だけ出てくるのだけれども
扱われ方はとてもぞんざいで
やはり日本という国は重要性は低いのだなーと実感したのであった(笑)

さてそんなリアリティのある話なのですが
ひとつのミラーが曲がっただけで
また霧や大雨などの天候によって
さらにはかかわる人員がとても多くそれだけエラーがでる可能性を残した状態で
テロリストがある人物の暗殺を行おうとするわけですけれど
これほどまでにジョイント部分の多い計画は
たぶんすぐに破綻するだろうなという思いで読んでいたら
案の定……w
みんな精度を高めようとしているのになんでこんな暗殺計画なのだろう
ちょっとスパイ大作戦すぎやしませんか
というツッコミを入れたいのだった
この点だけファンタジックだったのだ
コソボ紛争など世界情勢の描写が説教臭かっただけに期待したのだが…

ま それはともかく暗殺サスペンスとしてはとても面白く読める
とくに下巻に入ってからは 視点の交代に加速度がつき
ぐいぐい読ませました(さすが!)
そしておそらく読者はオコナー博士の頭脳に期待して
キカとのラブロマンスを楽しむところなのだろうけれども
ワタクシは美貌の暗殺者ヤナを密かに応援していたのであった…
たとえ彼女が下巻39ページで「真逆(まぎゃく)」なんてコトバを使っていたとしても…

しかし「美貌の暗殺者」ってフレーズ
小説か映画でしか見ないなw
目立っちゃいけない存在だしな

上巻163ページで科学者がキカにいうセリフ
「……原子力をとやかく言う者の大半は、原子炉の機能なんか知らないのですよ。…」
には いまの日本で醸成されつつある空気感を髣髴とさせるものがありました

シェッツィングの作品は長いのですが
今回は上下巻でおさえてくれました
このくらいがちょうどいいです(LIMITは挫折しています)

ヤナの前日譚をぜひ描いて欲しい

独断評価:75/100

沈黙への三日間(上)(ハヤカワ文庫 NV シ 25-12) (ハヤカワ文庫NV)/フランク・シェッツィング

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