ウィリアム・コッツウィンクル『ドクター・ラット』(ストレンジ・フィクション/河出書房新社)を読了
内田昌之=訳
近藤達弥=カバーイラスト
永松大剛(BUFFALO.GYM)=ブックデザイン

Doctor Rat by William Kotzwinkle

2011年3月20日 初版印刷
2011年3月30日 初版発行
ISBN978-4-309-63003-8 C0397 Y1900E
定価:本体1,900円+税

メモあらすじ

ある日、地球上のありとあらゆる動物たちが、
何かに導かれるかのように不思議な行いをとりはじめる。
家を離れた飼犬たちはどこへ向かっているかもわからぬまま走り出し、
海じゅうの鯨たちは恍惚と踊り、ゲージのなかの雌鶏や機械に吊された雄牛、
食肉工場の雄豚までもが、つかのま希望の幻影を見る。
人間には聞こえない“呼びかけ”のもと、
動物たちは本能のままに、ひとつに結ばれようとしていた――
大学の実験室で去勢され、臓器を抜かれ、残酷な実験の末に気が狂い、
人間レベルの知性を持ってしまった鼠「ドクター・ラット」ただ一匹を除いて。

1976年に発表され、センセーションを起こして以来、長らく翻訳が待たれてきた、
グロテスクで美しい幻の寓話がついに登場!
すべてが動物たちの一人称で語られる、超問題作。世界幻想文学大賞受賞。


(本書オビなどより引用)

本

最初の50頁ほどで憂鬱になり
ネコちゃんがあんなことになったところで狂乱し
最後はぜいぜいしながら
この悪意に満ちた物語を読み終わりました

動物たちはみずから生きていくために
他者の命を犠牲にすることもあるけれども
ひるがえって
人間はどうなのかと考えさせられる
肉食系 草食系に限らず
他者を喰らって生きていることには人間も違いないけれども
はたして直接関係ないところでも他者を犠牲にしているのではないか
と そんなことを思わずにはいられないのです

自称人道主義者や動物愛護団体の方からすれば
とんでもない世界が描かれているわけですが
これが原著刊行当時の そして今も続いている人間主体の世界なのですね
目を伏せず 臭いものに蓋をせず
しっかりと目を見開いて読むべき作品でしょう

動物たちによる一人称語りというと
おとぎ話や寓話のように思われるかもしれませんが
決してそんな生易しいものではありません
動物たちの会話文がメインではあるけれども
戯曲として上演するのはきわめて難しい
陰鬱なるレーゼドラマとでもいったカンジなのです
これが映像化・舞台化されたら 観てみたい(観るのが怖いが)

ストレンジ(奇妙)で怖い話を読みたい方はぜひに

独断評価:90/100

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