三島浩司『ダイナミックフィギュア(上・下)』(ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)を読了
加藤直之=カバーイラスト
岩郷重力+S.I=装幀

2011年2月20日 初版印刷
2011年2月25日 初版発行
ISBN978-4-15-209195-6 C0093 Y1800E
定価各(本体1,800円+税)

メモあらすじ

太陽系外からやってきた謎の渡来体が地球上空に建設した軌道リング・STPFは、
地球の生物に“究極的忌避感”と呼ばれる肉体的・精神的苦痛を与える作用があった。
リングの一部は四国の剣山に落下し、一帯は壊滅する。
そこから発生した謎の生物・キッカイは特殊な遺伝メカニズムにより急速に進化し、
駆逐は困難を極めていた。
日本政府はキッカイ殲滅のため、
圧倒的な力を持つ二足歩行型特別攻撃機・ダイナミックフィギュアを開発、
栂遊星は未成年ながら従系オペレーターとして訓練を続けていた。
しかし、巨大すぎるその力の使用には世界各国との不断の政治的駆け引きが必要とされ、
遊星の人生もまた大国のパワーバランスや思想の対立に翻弄されていく―。
日本SF新人賞作家が満を持して放つ、リアル・ロボットSFの極北。


(本書/上巻のカバーより)

本

上下巻二段組み約800ページというボリュームは
なかなか手が出ないかもしれないが
上巻を プロローグ(起)と考えて じっくり読んでいくと
下巻は 承転結が 弩ド℃っと 押し寄せ 一気読み確定

突如地球外から飛来する謎の存在
人類の敵
対抗するは人類の英知を結集した決戦兵器
人類の存亡をかけた戦いをひとりの青年に託す

ん どこかで観たことあるな
と思うかもしれない
もちろん誰もが想像するあのアニメ作品と
重なるところはたくさんあります
そこを穿鑿するよりも
ワタクシは素直に最後の一大決戦までの過程と
ひとりひとりの登場人物の個人的な戦いをかみしめました

本作の魅力はこの世界観のために生み出された多数の概念
「五加一干渉」「究極的忌避感」「孤介時間」「走馬燈」「去勢」
パワーバランスを考えて起動するには大国の承認を必要とする決戦兵器
ひとりっきりで苦痛を耐えなければならない時間の存在と忌避感
謎の生命体キッカイの異様な繁殖方法
こういった独特のタームが溢れかえり
この異形なる世界をつくりだしているのは見事

そして香川県に限局していた当初のキッカイとの戦い(白兵戦)が
いつのまにか 地球全体を覆い尽くす地球外生命体(?)カラスとクラマの戦いに
人類が巻き込まれる形に変貌をとげていた

ここで視点がいっきに高みあがっていく爽快感はあったけれど
で 結局キッカイはどうなったのか 最後まで謎は残る
また土筆(つくし)がなぜ裏切ったのか
主人公と土筆の関わりがもう少し描かれていると
ワタクシ的には よりのめり込むことができたのかもしれません

映像化はあるのかしら?
変貌を遂げたこの地球の姿をヴィジュアルとして観たい気がする

独断評価:80/100

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