ゼロ円御節 | あさだぁみ動物園

ゼロ円御節

貴重な経験をしました。


「12月31日、御節作るから、手伝ってほしいな」と友人に頼まれ朝ごはんを食べて、友人宅に集合。
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友人宅はこんな感じ。

築推定100年、純日本家屋。


すでに御節作りは始まっていました。



彼女が、色川に移住してきて、3年。

御節作りも3回目。

彼女が作るのは、その名も「ゼロ円御節」。

つまり、お金かけない、のです。


ほとんどの材料は、彼女の1年の農業の結晶で、足りないものや、不作だったものは、いただいたり、代用したり。

火は全て、薪か炭。


こんな感じで作ってます。
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ちょっとわかりづらいですが、七輪2台と火鉢フル動員です。



ご飯はもちろん
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かまどです。



強火にしたり、弱火にしたり、おっとそこの七輪空いてる、もったいないからこれ煮込んで。

と言う感じで進めていきます。



31日は大つごもりらしく極寒で、雪も舞っていました。
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使った道具を洗うのは、外にある川から引いてきた水。

新美南吉『手袋を買いに』からの引用で、

「お手々ちんちん隊」が結成されました。

野菜や食器を洗ったあとは、七輪の上に手をかざし、温めます。


御節に使う野菜は家の隣の畑から、収穫してきます。


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大根



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ゲット。



これなーんだ。
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ごぼうです。



ごぼう洗うのも、大仕事。



途中、お餅を焼いて、昼食タイム。
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もちろん七輪。

「餅は貧乏人に焼かせろ」ということで、みんなでこまめにひっくり返します。



お腹いっぱいになって、午後も御節作りは続行されます。

これは、年内に終わるのか?という焦りも出てきます。




夕方、お風呂のために、薪で火をおこしました。

初めての、薪のお風呂。

湯加減が難しい!

私のときは、熱くて熱くて、ゆだるかと思いました。




あったまったところで、年越しそばの準備にかかります。

御節で使った野菜たちのくずを集めて、掻揚げに。

とにかく、彼女は、ものをなかなか捨てません。

私たちが平気で捨てるクズ野菜も、しっかり利用します。

コンポストに入れるのは、本当に最終手段。



出来上がった年越しそば。
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出汁から全て手作りです。

手前の掻揚げには、クズ野菜が使われています。

お煮しめの飾り切りのクズ、きんとんのサツマイモの皮、などなど。

奥は、お茶っぱの出がらしと出汁に使った鰹節の出がらしの掻揚げ、それからゆずのてんぷら。

ゆずのてんぷらは、目からウロコです。そうか、ゆずにこんな食べ方があったとは。

すっぱいものが得意な方は、お試しください。美味しいです。



夕食後も御節作りに精を出し、なんとかかんとか目途がつき、お重に入れる作業を彼女に託し、私たちは宿泊している家に戻りました。




紅白も見ない大晦日。

私たちは、御節作りの最後の仕上げを手伝っただけ。

彼女はこの御節を作るのに、一年かけているわけです。

米を作って、野菜作って、秋刀魚を塩で漬け込んで。

更には、薪を割って、炭を作って。

私たちにとって一大イベントの七輪や、かまど、薪のお風呂は、彼女にとっては、日常の生活。

ご飯作るのに、まず火をおこし、大事に火を使い、お風呂に入るのも、薪から火をおこさねばならない。

ごみを捨てる前に、まず、それは本当に捨てるものかを考える。

まだ使えるんじゃないの?食べられるんじゃないの?



エコとか、ロハスとか、都会で声高く言っている人が、本当にいったいどのくらいエコなのか。

彼女は私と同じく、横浜で生まれ、育ち、環境問題に心を痛め、大学で様々な地域へ足を運び、自然と共存する生活を望み、色川と出会い、移住して生活をしている。

何がエコカー減税だ。チャンチャラおかしい。

彼女の生活や、色川の人々の生活が、全ての人にできる生活か、と言われれば、きっと否だろう。

でも、私は、色川に住む人々の、生きることに謙虚でありながら力強い姿に、強い憧れを抱いたのです。



こういう生活を選択肢の一つに、と彼女は言った。

彼女は、日本で一番の大学を院まで出て、こういう生活を選ぶ、ということに、周囲から何度も「もったいない」と言われてきたのだそうだ。

一流企業に就職すること、大学3年で就職活動をすること、と同じように里山の生活を選ぶことが、もっと受け入れられる世の中に。


彼女が、「私の友だち」と紹介してくれた人たちの多くは、70代。

70代の友だちがいるなんて、なんて素敵な暮らしなんでしょう。





さて、翌日の元旦。

私たちが宿泊している集落の神社に初詣をして、彼女の家に行ったら、見事な御節が完成していました。
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では、拡大して説明します。
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一段目。

奥右から「たたきごぼう」「白豆」「栗きんとん」「なます」「黒豆」

黒豆は今年は不作だったそうで、いただいた豆だそうです。



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二段目。

昆布としいたけ以外は、収穫した作物。

こんにゃくも手作りこんにゃく。もちろん芋から。




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三段目。

右から、「煮鹿」「秋刀魚寿司」「高菜寿司」「太巻き」

海苔以外は、収穫したもの。

煮鹿!これが絶品でした。

山なので、狩をする人もいます。鹿のほかに、イノシシ、うさぎなどがいるそうです。

特に鹿やイノシシは、畑を荒らすので、定期的に猟をするのだそうで、彼女が色川でよく食べるお肉は多い順に「鹿」「鶏」「イノシシ」だそうです。

「秋刀魚寿司」と「高菜寿司」はこの地方のもの。





私は、今回生まれて初めて御節を作りました。

こんな手間隙かかった御節を、日本国内で、いったいどれだけの人が作り、口にしているでしょうか。




とても贅沢な、貴重な経験でした。