さて、今回は60歳以上級のレポート。

65歳未満なので、僕の視線からは、”若い”はずであるが、顔は結構、爺ちゃんっぽい選手がチラホラ。

しかし、身体は流石にみんな若い、が、辛口の意見を述べさせていただくと、仕上がりは、65歳、70歳の方が良い人が多かった。

多分、皆、オフはかなり”乗せる”のだろう、脂肪を。

あるいは、乗せないタイプでも、これで良い、という意識の甘さもある。

なぜなら、一昔前、臀部にストリエーションなんてのは、トップさえ”出せて”いなかった。

ハムストリングも然り。

バックポーズでは、股関節を中心に外旋すべきなのに、まっすぐ後ろに出してカーフだけ見せていた。

三角筋に力を入れ過ぎて、肩甲骨が”寄っちゃって”ても、”許された”時代。

そんな、今から見ると、”それで良かった”時代に、活躍している選手たちが揃っている。

その中で、優勝した猿山選手は、ダントツ。

豊富な筋量、バランス良く付いていて、ポージングもクセがなく、独特のかっこよさがある。

もう一人の、顔はすっかり爺ちゃんなのだが、身体はまだまだ若者、のこれまた息の長い活躍をしてきた鷲巣選手。

やや立ち方にクセはあるも、現代風に適応したしっかりしたポージングできめ細かい筋肉を魅せてくれる。

それに食い込んできたのが、俳優さんのようにカッコいい、華がありまくり、の芝原選手。

めちゃくちゃ目を惹くが、背の高い選手にありがちな、下半身特にサイドから見た時の厚み不足とカーフの弱さが惜しい。

猿山選手は、関西を取った頃から見ているが、なんでメジャーな日本タイトルが取れていないのか、ずっと不思議だった。

カッコいいし、バランスも問題なし、欠点がない、ポージングも上手い、おかしいな、と。

今回、比較審査で、なるほど、絞れているのだが、微妙に、”ボケ”たセパレーション。

背中、腹部、臀部、一般の部と戦うには、深みが乏しいのだ、と理解できた。

それでも、このクラスでは、問題なし。

僕が個人的にいいな、と思ったのは、この青いパンツの海野選手。

細いウエストから綺麗に上下に広がるアウトライン、バリバリではないが、くっきり各筋群にセパレーションが合って、小柄なのに立体感がある。

注目していた林選手は、あの伝説の小沼選手を現役時代、初めて破った選手なのだが、上半身では完璧な広がり、深みのある惚れ惚れするバック。

今回は、ミッドセクション、臀部からハムにかけての深みに欠けて順位を落とすことになった。

昨年復帰を果たした、和歌山の雄、上山選手も明らかに再デビューより密度は増したが、フロントダブルバイでの上半身の広がりや、腹部の密度が他選手よりぼやけてしまい、かつ、バックポーズでも往年のクセで、背中の筋群がくっきり見せられず敗退した。

皮膚と筋肉は、新陳代謝のスピードが違う。

長いオフで伸び切った皮膚が、筋肉の密度に”追いつく”には時間がかかる。

伸び過ぎてしまいたるんだ皮膚は、意識をしていけばし続ければ必ず筋膜に対して張り付くように戻っていく。

また、2020年代に入って若者たちはポージングにクセがない。

くせは個性なのだが、時に欠点にもなる。

若者たちは、欠点を隠してかつ、どう魅せるか、をしっかりわかっている。

往年の輝かしい選手たちには、ぜひ、迫力ある体を取り戻して欲しいと思う。

 

65歳を超える70歳未満のクラス。

はい、僕と同世代です。

爺ちゃんなんだけど、最近は爺ちゃんとは言えない”人もいる”。

25名のラインナップ。

並んだ瞬間に、桁違いのシルエット、重量感、まるでこの中にゲストポーザーが居るような錯覚。

それが三重の難波選手。

僕の記憶では、ジャパンオープンのタイトルは結局取れないままではないか、と思うが、彼がグンっと”伸びて”来たのは、多くの同世代の有名選手がマスターズには”移らず”リタイアしていってから、だと思う。

しかも、60歳くらいまでは確実に進化していってた、、、凄い。

今回、僕は30年ぶりくらいに実物を拝見したが、あの頃と変わっていない、いや、重厚感が増している。

若い頃から体重が増えない、と悩んでいたことを聞いていたが、彼の体を見ていると、継続は力なり、それを何十年も身を持って示している典型例と思えてくる、それほど、凄い!

さて、彼は別格として、それ以外に、ラインナップで目についた選手を紹介していこう。

まずは、フロントのシルエットがとても綺麗な134牧選手。

この年齢で、細いウエスト、小さな骨盤から上下に綺麗な曲線を醸し出す。

バックの臀部からハムの密度が乏しいのが惜しい。

136木下選手、脚の重量感が凄い。

前も後ろも、惚れ惚れする脚だ。

一見、肩幅が狭く寸胴だが、ポージングでうまくそれをカバーする。

ただ、サイドポーズがクセがあり、もっと他の選手のように股関節と膝関節双方で”受ける”方がむしろ安定して見える。

二人に挟まれた135岡田選手も息が長い選手だ。背中の密度もあり重量感あるカーフを持っているが、いかんせん、脚に曲線がない。

もっと脚の間の隙間を目立たせない工夫も必要、そうしないとラインナップでついていけない。

個人的には、この重量感溢れる原田選手の体型が好きなのだが、何せ、マスターズも絞りのレベルが高くないとピックアップされない時代。

もっと仕上がった時、一気に上に行けるのになと思った。

さて、トップ4のこのラインナップ。

難波選手以外、仕上がり次第で、”どうにでも変わる”と思った。

バランス的には、木下選手が2位とも言えるかもしれない。

来年はこの別格難波選手が、70歳以上クラスに移る。

その後、誰が制するか、なかなか興味深い。

 

マスターズ日本選手権、75歳を超えるクラスも、凄かった!

まず、見てください、トップ3のこの脚!

大腿4頭筋のセパレーションは”あったりまえだのクラッカー”!(若い人には通じない?)

それに、縫工筋もくっきり標準装備。

真ん中の徳田選手、細いけど綺麗な逆三角形に安定感抜群の下半身、これぞ爺ちゃんが自ら魅せる動く彫刻!

三人とも、サイドで魅せる、カーフなんか、もう惚れ惚れしちゃう。

優勝した187の山野選手は、欠点は、ダブルバイでの広がりくらい。

しっかり筋群のセパレーションが出せている。

安定したポージングを魅せる183の三部選手は綺麗に纏まっている、良いなあこの身体。

サイドチェストやトライセップなど、若者も負けちゃう迫力。

上半身の厚みでどうしても差がつくのが惜しい徳田選手。

バックに回ると流石に年齢を感じさせる皮膚感なのだが、ラットスプレッドで脚、臀部もくっきり。ハムも今どきのカットを見せちゃう。

そしてこの三名のダブルバイ、すごくない?

若者でも、パシッとここまで決めて保持できませんよ!爺ちゃんたち!!すごーい!!

アブドミナル、流石に年齢を感じるが、左端の優勝した山野選手の深みのある綺麗な腹直筋、惚れ惚れします。

多少の皮膚のたるみなんぞ、許せます!

とにかく、なんなんだ、この爺ちゃんたち!

凄すぎます、そして、拍手しかありません!

最敬礼!!

この三人が凄すぎて、昨年の優勝者の中野さんや、かつての日本王者の長宗さんが霞んでしまっていました。

筋量も大切だが、ポージングの安定感、しっかりとした調整が標準装備となっています。

日本の75歳以上のレベルって、とんでもないことになっています。

 

70歳を超えるクラスが始まって選手がラインナップしてきた時、僕は腰を抜かした。

ほとんどの選手が、腹筋が”深い”!

もちろん、若々しくはない、当たり前なのだが、顔なんて、みんな、おじいちゃん、そのものなのだが、筋繊維が”浮き出て”いるのである!

これ、大会出場経験者なら、わかると思うが、若者でも、ヘロヘロになるまで減量しても、こんなに出ないことがある、出せない!

それが、”爺ちゃんたち”すごい身体して、舞台に並んでいる、壮観である!

大腿部のこの彫りの深さ、ほんのちょっと油断しただけで消えちゃう若者もいるが、爺ちゃんたち”出してる”!

さて、そんな筋繊維丸見え爺ちゃんたちの中で、もっと丸見え、もう惚れ惚れしちゃう爺ちゃんの一人が優勝した中井選手。

顔と身体が、完全に”乖離”。

もちろん、目を凝らしてみると、腹部や、臀部に皮膚のたるみはあるのだが、浮き出している筋繊維と血管が帳消しにしている。

重量感溢れる久保田選手も、超フラットに見えてしまう。

前年優勝者の辺見選手も、凄いのだが、この中井選手と並ぶと、フラットに見える。

そして、このバックポーズが”ミス”。

人生の先輩にコメントするのは失礼だが、”広げるつもりが丸める”ミスを犯している。

この辺りを改善すると、返り咲く!

しかし、このサイドポーズの迫力あること爺ちゃんたち!

微妙に癖があるが、許しちゃう!

ハムの丸みや、臀部の意識も、”現代風”に適応!!

アブドミナルアンドサイなど見てほしい、これ、こんな深み出せますか!!!

僕は思わずパチパチ拍手していた!

なので、往年の有名選手たち、この密度が出せていないと、筋量はあってもどんどん敗退していってしまう。

みんな、笑ってない、笑えてないんだと思うが、その表情をみると、真剣勝負に来ている昭和の男共、である。

このバックダブルバイセップスの浮き出方、見てよ!!

僕は感動しました!

 

さて、男子の部、この詳細は来月発売の月刊ボデイビルディングに載るので、載せきれない、というか載せてはいけない口調の分を以下に”載せます”。

40歳から85歳までのカテゴリー。

それを午前と午後に分けて、午前の”高齢者”マスターズオーバーオールと午後からの若年者マスターズと競い合わせるやり方。

当然、一番若いのが勝つんじゃないか、と思うのですが、今の50代は、とんでもなく若い。

そして、過去全日本選手権ファイナリストがごろごろいるのが、この50代。

当然、バルク満載。

昨年の50代覇者であり、オーバーオールも制した土金選手を破ってこのオーバーオールに駒を進めたのが50歳になったばかりの佐藤茂雄くん。

多くの伸び盛りの”若手”が群雄割拠した40歳代を制した大柄で迫力満点の神田くん、60歳になったばかりの大阪の雄、猿山くんの三人。

これひと昔の全日本選手権と言ってもいいくらいの迫力。

フロントの”ぱっと見”シルエットでは、大柄な神田くんが目を惹く。

しかし、腕を上げる、振り向く、そしてサイドと、比較が進むと、佐藤くん、三角筋後部にやや弱さと上半身の広がりに欠けるが、厚み、迫力がグイグイ迫ってくる。

背中、腹部のディーテイルはやや劣るか?

写真ではうまく撮れていないが、背中の厚みはやはり佐藤くんに軍牌。

何よりサイドから見た脚、左右に並ぶ二人の脚も凄いのだが、その倍以上ある。しかも密度も超高い。

カーフなど、異次元の太さと密度を披露する玄人好みの下半身。左右の二人とカーフを比べるとその次元の違いがわかる。

参りました。

前の週に開催された静岡でのクラス別選手権では白いパンツを履いてどこか違和感があって僅差でタイトルを逃したが、今回は全日本に向けてきっちりこのタイトルを奪取。

脚を制するものはやはり強い!

ミーハーな僕は、その脚を拝みに、舞台裏まで飛んでいきました。