まだ選手たちに浸透し切れていないポーズの新バージョンにトライセップスがある。
この4人で左から二番目の椿選手が理想的なフォーム。
さすがである。
軸足は、観客側。
反対側の脚でカーフを見せる。
この”脚決め”ができないとダメ。
観客側軸足の膝の曲げが大きすぎると、反対側のつま先でバランスが取りにくく、両足の隙間が広がる。
ポーズに隙間は禁物。
サイドチェストでは、脚同士押さえつけ脚を太く見せることができるが、このポーズではしにくい。
だから軸足は力を入れ緊張を解かないようにする。
それが確実にできてから、上半身を”決める”。
すべてのポーズで言えるが、脚を決め”きれない”でいる選手は、どんなすごい筋肉を持っていても、それをッドブに捨てるだけ。
両肩を結ぶラインは少し観客側を高くする。
井上くんは逆。
大藪くんも、武道くんも安定しているが、気持ち観客側を上げる。
武道くんは軸足とそうでない脚を開きすぎ。
くどいが、隙間はなるべく少なくする。
骨盤の観客側は”気持ち”下げる。
これは軸足側の股関節が屈曲するので当然の”反射”。
すなわち、両肩関節を繋ぐ線と両股関節を繋ぐ線は、奥に行くに従ってどこかで交差する。
こうすると真正面の審査員以外でも体は立体的に見える、彫刻の基本でもある。
たとえは悪いが、台形を作り見せるのである。
迫力のある上半身を持っている井上くんが腕だけしか見せられていない、上半身を”畳んで”しまっているのがわかるだろうか?
次の写真。真ん中の日高くんも、肩のラインが逆。
せっかく美しいアウトラインや厚みを持つ上半身が”縮んで”いる。
美しい曲線と高い筋密度を持つ日高くんの脚とカーフだが、腰を下ろしすぎ。
ここでも椿選手のうまさを”真似る”べきだろう。
日高くんより、シルエットや筋量にはるかに劣る隣の長瀬くんは、このポーズをしっかりとっている。
”台形を創り、台形の広い側”を審査員や観客に見せる。
AD
僕も現役時代苦手だったが、しっかり取らないと、これほど、上体、下半身前面の欠点をさらけ出すポーズはない、というのが、アブドミナルアンドサイ(直訳は腹部と脚)。
この写真は九州クラス別75キロ以下級。
東海チャンピオンでもあるバルクもバランスもある椿選手をリラックスでのシルエットは全国レベルの日高、横山両君が挟む。
日高君は、長年のオフの後遺症か、へそ周りの真皮の新陳代謝が、皮下脂肪の減少に追いついていかないのが露呈する。
下腹部に最低でも静脈が走っていないとこのたるみは消えない。
55歳という年齢から、いつもへそ周りを意識して過ごす努力も当然だが、上部だけ、下部だけ、どちらかに意識が逃げてしまう腹筋種目以外に、このポージングでいかにたるみを見せないか、練習ありき。
もともと素晴らしく美しい腹直筋を持ち、プロポーションも抜群、そして丸みのある曲線が大腿部外側、内側とも太く長いたくましいカーフに繋がるラインを持つ。
このポーズで隙を見せないで頑張ってほしい。
普段からもっと腹筋トレ、ポーズにひねりを入れホールドして深い腹横筋、腹斜筋群を正中に向かって閉じてくるような動きを意識できるようになると、バリッとしてくる。
椿選手は、腕を挙げても、細いウエストラインも崩れず、百戦錬磨の決めるポージングだが、脚の密度が不足しているのが露呈。
隣の日高くんが良すぎるのではなく、彼くらいのセパレーションは全国区では”常識の”時代。
位置の高いカーフもうまく欠点を露呈しない左右均等にバランスを取れる足位置を取れるスキルがあるのが素晴らしい。
横山くんの脚もここで密度、セパレーションのなさを比較されてしまう。
彼の胸郭から骨盤にかけての美しいラインをより活かすには、骨盤から脚が外側、内側ともに深み丸みの曲線を描くべき。カーフの位置も高くないので、彼ならそれができる。いや、しないといけない地位にある。彼の
得意な、少し捻りを加えたポージングを練習の時に取り入れる、そして軸足を中心に、魅せる脚をコンパスで円を描くような動きでこのあたりの意識を”コンティニュアステンション”(持続負荷)でセット間にやることをお勧めしたい。もちろん左右の脚とも。
この写真は65キロ以下級、二位の佐藤くんと優勝の武道くん。
リラックスで出ている脚のセパレーションが消えている!
軸足と反対側の脚には内転筋、縫工筋、そして四頭筋、と大きなたくさん”披露しなければいけない”筋群がある。それを見せないで何なのか?
脚から決める、ポージングの基本がなっていない。
これこそ宝の持ち腐れ。
肘はもっと顔につけ、立ったまま”エア”でクランチする気持ち。
そして骨盤を”閉じる”気持ち。
白線ももっと深くなるし、下腹部の密度も高まる。
隣のポージングのお手本を示してくれる佐藤くんは、密度さえ高まれば頂点に行ける。
AD
コンテストにおいていわゆる基本ポーズは”取れて当たり前”。
取れてから個性を加える。
なぜなら魅せる競技だから。
紀元前に造られたギリシア彫刻を見ると、両肩を結ぶラインと骨盤の傾き。
目線と手指先の伸ばし、あるいは曲げ方。
軸足と反対側の足の置き方、位置関係。
真正面からだけでなく、少し正面からズレた位置からの目線も意識して立体感を醸し出している。
まっすぐ直立していないのに安定感がある。
ポージングの基本はここにある。
バックダブルバイが”うまく”できない理由は、3つある。
1)自分でダイレクトに見えないので”微調整”できない。
2)肩甲骨とそこに付着する筋群の理解不足。
たくさん筋群があるので、めんどくさい、そしてツル、痛い、言い訳ばかりできるパートでもある。
3)上半身だけ見せれば良いと思い込み、土台である脚、そして上半身と下半身の”要”である骨盤、そこに付着する大きく大切な筋群をないがしろにしがち。
今回観戦したクラス別優勝者たちのラインナップは壮観。
バックダブルバイ、皆、上背部や起立筋群がしっかり盛り上がり素晴らしい密度だが皆、一つずつくらい欠点を抱える。
右端の武道くん、セパレーション、密度は一番。よくぞ仕上げた。
軸足が”内股”、そして肩甲骨を寄せ過ぎ。
肩甲骨が胸郭のどの位置にあるのかがわかっていない。そして肘の位置。もっと気持ち上。体の中心から突起が出て行く時、その角度が変化するのは”おかしい”。
全国レベルで活躍する左から二番目の椿選手。
欠点のない身体はさすが。
でも右大腿部の外旋が不足。
そのために、臀筋の密度が出せない。ハムもぼやける。
左端の井上くんも骨盤がついていってしまうので臀筋がぼやけ、ハムとの間の溝が出ない。
でも足の位置もしっかり軸足、そうでない足にバランス良く”散らし”、一番安定感のある力強いバックダブルバイを示している。
上半身に比べ発達の遅れた大腿部から先細感が目立ちがちなカーフをポージングでうまくカバ−している右から二番目の大藪くんがこの中では理想に近いとも言える。もう少し肩甲骨を広げてもいいけれど。


AD
九州シニアにも”光る”おっさん達がいた。
まず、一般の部60キロ以下で若者を抑えて優勝した福岡の牧国久選手。
顔つきは59歳そのままか少し上(失礼)。
体の張りは最高。
バランス、シンメトリーもクロウト受けする。
審査員席や前列から見ると皮膚の薄さ、パリッとしたハードさが良い。
欠点は、まずセパレーションの乏しさ。
皮膚は薄く、皮下脂肪もしっかり取れているのに、筋群の溝が浅い。
遠目に見ると、シルエットが良いのでそれほど気にならないかもしれないが、重量感、立体感に欠けて見える。
これはバックポーズにも言える。
上背部の筋群がぼやけて見える。
ギャスパリが最後までヘイニーに勝てなかったのは、皮膚は薄くバスキュラリティーがあるのにセパレーションが劣っていたから。
もう一人、これも60歳には見えない(失礼)おじいちゃんの顔つきだが、体はマッスルだぜえ、のバルキー魅力いっぱいの佐賀の荒巻選手。
フリーポーズも良いセンス。
グイグイ力感で押してくる彼らしいムードがいい。
でもバックがダメ。
軸足に極端に重心があるので、せっかくのバルク溢れる上半身が揺れる。
先に紹介した牧選手もそうだが、ただ、足を後ろ外側に出してダブルバイしてはいけない。
ボーズとは、”曲線の集合体”であるべき。
大腿部を外旋し、なるべく骨盤を前後左右に傾かないように臀筋を緊張させ、そこから大腿外側筋の曲線を骨盤から膨れるような曲線を作る。その曲線は一旦、ひざ関節で、別のカーフが作る曲線に繋ぐ。
もちろん軸足も。
しっかり取れている宮崎選手権の上位三名のバックポーズを”若造が”などと思わず参考にすべきである。
こういうおっさん達に誰か”物申す”コーチがいて欲しいな。
個性は必要だが、基本あってのバリエーション。


僕が今回、ミスター宮崎選手権を観戦して嬉しくなったのは、そのレベルの高さ。
僕が引退する以前から、JBBFもNBBFも地方大会で、特に宮崎でのレベルは右肩下がり。
時々、すごい選手が出てくるが、ブロックで燃え尽きたり、気がつくともういなかったり。
宮崎、都城という”大きな”街で人口当たり日本1ジムが多い”はず”なのに。
欲がないのかな?
引退していたのもあって全然観戦に行く気持ちが起きなかった。
ところが、この数年は違う。
そして今年のラインナップ。
過去のチャンピオンの参戦もあるが、この四人が並んだ段階で、ワクワクした。
とにかく、”たるみ”がない。
きっちり仕上げて、かつ、ハードさがある。
ポージングもそれぞれに個性があり、”パチもの”ではない。
決め、間、そして安定感がある。

バルクも密度も、そして振る舞いも桁違いの井上くんが優勝したが、左隣の永窪くんは2011年の優勝者。
狭い肩幅、恵まれないフレームに、精一杯密度の高い筋肉をいつも披露してくれる。
細い関節から丸みのある筋肉が美しく、それに上手くひねりを加える安定したポージングが地味だが、とっても魅力的な昨年の覇者、横山くんも脚に深みが出ればもっと上に行ける。
先細のカーフが目につくが、カチっと高い質感の上半身を発達させてきた2012年優勝者、大藪くんも独特のかっこよさがある。
ポーズは直線的で、もっとひねりを入れるといいのかもしれないが、日本人離れした人目をひく魅力があることからクラス別まで制した。
彼ならフィジークと相乗りでもいけるかも。
九州の逸材に出会える暑い夏が楽しみ。