税金から見える日本プロ野球球団の経営体質 |  税理士・事業再生士補(ATP)@旭川・渡邉也寸志の「毎度さまです!」

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旭川のワタナベ会計事務所・所長 渡邉 也寸志です。
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ところで、最近TBSホールディングスが子会社である横浜ベイスターズを住生活グループに売却するのでは?との報道が新聞の紙面を賑わせていたのはご存知かと思います(結局売却交渉は決裂)。そもそも、何故、TBSホールディングスが子会社である球団の売却を検討したかと言えば、球団の経営赤字が大きく、これ以上親会社が赤字分を補填していくことは、親会社の経営状況も厳しいため困難と判断したためです。

 一見もっともな理由であるように思われますが、税理士である私には「おや?何かおかしいぞ?」と感じるのです。
 それは「親会社が子会社の赤字を補填する」という行為です。この取引行為は法人税法上「寄附」に該当します。寄附とは「無償で金銭や金銭以外の資産、経済的利益を贈与する」行為であり、更に寄付に伴う費用(寄附金)は法人税法上、国や地方公共団体等への寄付金を除き、経費算入に一定の制限が加えられています。制限を加える理由は、このケースに当てはめると、「親会社が赤字の子会社に寄付を行い、利益を圧縮することによる租税回避行為を防ぐこと」にあります。
 従って、法人税法上、球団への赤字補填は親会社にとって殆ど経費とはならず、有税で子会社を支援しているようなもので、本来何のメリットもないはずです。


 ところが、今回、私も初めて知ったのですが、国税庁は1954年に「球団経営への赤字部分への損失補てんは、親会社の広告宣伝費として処理できる」という通達(国税庁の法律解釈・見解)を出していたのです。
 なるほど、広告宣伝費であれば、法人税法上、経費となります。これが、日本の球団の多くが独立採算ではなく、親会社が赤字を補填するという経営体質を生み出した一因だったのだと言えるのではないでしょうか。

 こうなると、昨今の不況下では、広告宣伝費の削減という理由から親会社からの経済的支援が減り、球団経営が苦しくなっていくのは当然の流れだと思います。
 勿論、プロ野球人気の低迷からくる放映見料の低下等も経営状況の悪化の原因にはなっていますが、日本のプロ野球球団の「親会社の広告塔」的な経営体質が何故生まれたのか?その原因の一部に税金が関わっていたとのではないか?と言うのが今回の私の見解です