訴訟事件と非訟事件 | 福岡の弁護士による、身近な法律、その他時事ネタについてのブログ。

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 裁判所において、争いごとに白黒はっきりつける手続きは、訴訟事件と非訟事件に大別することができます。
 訴訟事件は、貸金請求事件や、交通事故などの損害賠償事件などに代表されるもので、最終的に、「判決」として、裁判所の判断が示されます。この裁判所の判断を示す過程において、裁判所が事実認定を行い、そのような事実があると認定された場合、その事実に法律を適用し(法律要件)、その効果を認める判決(請求認容判決)が示されます。逆に、そのような事実はないと認定された場合、法律効果を認めない、原告敗訴(請求棄却)の判決が下されます。よって、訴えた原告側は、一定の事実を証明しないと、法律要件がないことになり、効果を認める判決はされず、つまりは原告敗訴(棄却)ということになります。例えば、貸金訴訟の場合、お金を貸したことが法律要件であるので、訴える方は、お金を貸したことを証明し、お金を貸したという事実を裁判所に認定してもらわないといけません。裁判所は、原告がお金を貸したという事実が認定できると判断すると、法律効果である、お金を返せという判決を下します。従って、訴訟事件というのは、訴える方(一定の法律効果を求める方=原告)が、法律要件に該当する事実の証明をする必要があります。裁判所は、原告がその事実の存在の証明に成功したかどうかの事実認定を行います。つまり、民事訴訟は、原告の訴えを認めることができる事実があるかどうかの事実認定をするための手続きです。従って、事実を認定するための手続き、例えば、証人尋問や、書面による証拠の出し方のルールもきちんと定められています。また、裁判手続きは、裁判所の公平を期すため、原則公開です。判決には、原告主張の事実が認められると判断した理由が明確に書かれます。
 一方、非訟事件は、例えば、養育費や親権争いなどが代表的ですが、当事者が何かの事実を証明し、その事実が存在したことを裁判所が認定し、その効果を判決で示すというものではありません。こういう事実があったから、親権は母親、あるいは父親などということが法律ではっきり決まっているわけではありません。裁判所は、後見的立場から、親権は父母のどちらが子供にとって良いか、を本人に代わって決めているものであり、事実を認定し、その事実を法律に当てはめて、その効果である判決を示す、といった手続きをしているわけではありません。従って、証人尋問という手続きもありませんし、書面の証拠の出し方について、厳密なルールはありません。最終的に裁判所の判断は、「決定」、で示され、「判決」ではありません。もちろん、親権が父母のどちらが適切かを決めるための情報は必要ですから、家庭裁判所の調査官による調査など、判断をするために必要なことは行いますし、父母双方の言い分もきちんと聞きますが、事実の存否を認定すると言った手続きとは違い、訴訟とは性質を異にします。