調停の管轄 | 福岡の弁護士による、身近な法律、その他時事ネタについてのブログ。

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福岡の 弁護士 朝雲 秀 のブログです。身近な法律、その他、自分の興味のおもむいたこと(金融、経済など)について、書いています。

 裁判を起こす前に調停をすることはよくある。そもそも調停でしか解決できないこともあるし(遺産分割・婚姻費用分担・養育費を離婚と切り離して請求する場合など、いわゆる非訟事件は、裁判、すなわち訴訟手続きでは解決できない)、裁判をする前に必ず調停を経ないといけない場合(調停前置主義。例えば、離婚、家賃・地代増減額請求など)もある。
 裁判の場合、訴えられる側、すなわち被告の普通裁判籍の所在地で起こすことが原則である(民事訴訟法4条1項)。つまり、被告の住所や会社の場合の本店所在地などで起こすことが原則である。しかし、訴訟の場合、財産上の訴え(お金などを請求する場合)は、民事訴訟法5条で実に多くの裁判管轄の例外(4条1項の原則の例外)が定められており、これを使って、実際には、原告の普通裁判籍の所在地(原告の住所、法人の本店所在地)で訴えを起こせる場合が多い。例えば、財産上の訴えは、義務履行地で行うことができ(民事訴訟法5条1号)、多くの財産上の請求は持参債務(債務者が債権者のところにお金を持参(振込も含む)しないといけない債務)のため、義務履行地は、債権者と債務者の住所が離れている場合は、債権者の住所地となる。よって、裁判は、義務履行地である債権者、すなわち原告の住所地での訴えが可能である。もちろん、被告から移送の申し立てなどをされて、それが認められ、被告の住所地で裁判をする羽目になることもあるが(私の経験では、契約書や約款で、専属的管轄を被告の本店所在地である東京地裁などに定められている場合に、移送されるケースが時々見られる。)。
 調停の場合も、民事訴訟法4条1項と同じく、管轄は相手方の住所地である(民事調停→民事調停法3条1項、家事調停→家事事件手続法245条)。調停の場合、民事訴訟法5条で見られるような例外規定が少ない。従って、訴える側としては、相手方が遠くにいる場合、遠くで調停を起こさないといけないケースが多い。相手方が多い遺産分割調停などは、それで、相手方の中で一番近いところに住んでいる人の裁判所を選んで起こすことが多い。調停の場合も、相手方の住所地という原則の例外規定もある。例えば、家賃・地代増減額請求は、調停前置主義だが、管轄は民事調停法24条の2により、不動産所在地で起こすことが可能である。