研究室を選ぶ前に (2)研究室のメンバー構成を調べよう | あるらのアメリカ大学院留学記

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私がここであれこれ調べましょうといっているのは、



その環境がいいとか悪いとか判断しようというものではありません。
同じ環境でも本当にケースバイケースなので結論付けるのは難しいです。



ただ、絶対にお勧めなのは、
事前に自分が5年間いるであろう環境の
ありうる姿の可能性を把握して、
心の準備をして、選択することです。



わかってていくのと、入ってから
「こんなはずじゃなかった」
と思うのとでは、前者の方が気分がダンゼン楽なものです。
必要なのは「心の準備」です。


私はただ、「こんな情報が参考になるのではないか?」
と思って提案しているだけで、
その情報に基づいて最終判断を下すのは当事者で、
めぐり合った環境でどう力を発揮していかは、
すべてその人しだいです。



さて、前置きはそのくらいにしておいて・・・

研究室のメンバー構成を調べましょう。



研究室のHPにはたいていメンバーの紹介が乗っています。
そこでどの学年がどのくらいいるか、
人数構成を調べてみましょう。
ちなみに、もし乗っていれば、学年もチェックしましょう
(入学年度を調べてればわかりますね)。
ちなみに以下の私の研究室の例では、
修士を取ってから入学してきた人は3年からスタートというように換算しています。



うちの研究室は(2005秋)
教授  1人
秘書  2人

研究員 3人 
ポスドク3人 
訪問教授3人 
院1年 3人 
院2年 3人 
院3年 3人 
院4年 2人 
院5年 1人 
院6年 4人 


教授・秘書を除いて全部で計25人です。
研究室の年一度のバーベキューパーティーには、
70%が家族やガールフレンドなどを連れてくるので、
本当に大人数になります。



(A)卒業平均年数
PhDを取るのにどのくらいかかるかの平均値は知っておきたいところです。
一般的には4,5,6年ですが分野によってかなり違うと思います。
 私は入学前に教授に「平均卒業年数はどのくらいですか」
と聞いたら「5年から6年じゃないかしら?」と答えをもらいましたが、
実際に5年で卒業した人はほとんどいないという事実と、
上記の学年構成から見て、普通に6年かかるようです。
見たところ、学年の情報を乗せている研究室はそれほど多くないので
わからないかもしれません。



(B)院生のアメリカ国籍率
もしあなたがアメリカで英会話力や発音を磨きたいと思うなら、
ネイティブの同僚が多い環境の方が、
現地の英語に触れる機会がダンゼン多くなります。
 もちろん研究室の90%が日本人でラボでも日本語で会話していても
(ありえないけれど、例えば)、外でネイティブの友達を作れば
現地の英語には触れられます。
しかし、現実として研究室にこもりきりの毎日になるので、
研究室の環境が、あなたの日常の
少なくとも50%を占めると考える方が自然です。



 研究の世界では、英語の発音の良し悪しはあまり関係ありません。
プレゼンや議論は内容が第一です。
もちろん内容を理解してもらえる最低限正しい発音力は必要ですが、
「音」よりは「会話の質」が重要です。
 しかし、毎日議論する同僚が日本人か、中国人か、韓国人か、インド人か、
ネイティブかでは、6年後あなたの耳がどうなっているかは違ってくると思います。



 もし、研究室の90%がアメリカ人で
あなたがただ一人の留学生だというような環境の場合、
はじめは地獄のような疎外感と悲劇を味わうでしょう。
TOEFLのリスニングとネイティブ同士の会話は速さの桁が違います。
もしあなたがそれを克服してみんなと打ち解けられたなら、
あなたの英会話レベル・アメリカ文化への適応レベルは
相当なものになっていると期待できます。
ただ・・個人的には、少なくとも数人はアジア人留学生のいる研究室の方が、
何かと留学生としてのアドバイスをもらえるチャンスができるのでお勧めです。



 もし、研究室の90%が中国人の留学生で
あなたがただ一人の日本人という場合・・・
どうなるんでしょうね?(笑)まあ、そこまで極端な環境はあまりないと思いますが。。
公共の場・・授業や議論はどちらにしろ英語でしょうから、
英語で研究していく能力はなんにしても身につくとは思いますが、
研究室で飲み会などをすると、
みんな中国語で話すのではないでしょうか。
私がこの環境に入ったなら前向きに趣味として中国語を勉強しますね。
とにかく、前記の研究室の人とは英語の上達状況に差が出ることは
想像がつくでしょう。



 ちなみに私の研究室はアメリカ人と留学生の割合は
半々くらいで、理想的だと思います。
・・・・しかし!研究室のテーマ別グループ構成でみると、
ある特定のテーマをやっているのは全員ネイティブで、
私のサブグループは全員留学生というように、
中ではくっきり分かれているのです(これが偶然なのか、
意図的なのかはわかりません)。
そのおかげて私のChinese English とKorean Englishの
リスニング力はかなり高くなりました。
Korean Englishに関しては、アメリカ人より理解力が高いかもしれません(笑)。
しかし・・native Englishの方はまだまだイマイチです。
うちの研究室の第二共通語は教授がフランス系なのもあってフランス語です。
でも、 French Englishは大変聞き取りにくいですね。



 余談ですが、お酒が入ると私のリスニング力は
指数関数的に減少するので、飲み会も盛り上り
先輩が教授の秘密なんかを話し始める頃には
いつも話についていけないという悲しいパターンに陥っていました。



(C)ポスドク+研究員 対 院生比
 この数字だけではなんとも結論は出しにくいですが、
これもラボを特徴づける数値の一つだと思います。
うちの研究室の場合は、ポスドク9人、院生16人なので、
ポスドク率35%といったところ。
もう一つ似たようなことをやっている同じ学科の研究室を調べたところ、
ポスドク6、院生9、ポスドク率40%だったので、
実験系ではこんなもんなんでしょうね。
ポスドク率が高いのがいいか悪いかは、
ポスドク研究員が院生をサポートしているか、
労働力として使い成果を搾取しているかによるので、
この数字だけでは結論つけられません。



(D)ポスドクの研究室出身率
ポスドクのほとんどがその研究室の卒業生である場合、
あなたが卒業した後もその研究室で
ポスドクとして研究を続けるチャンスがあるということです。
しかしこれには2つの可能性があって、
卒業生がこの研究室にいたいからいるのか、
他のポスドク先・就職先を見つけられないから居残っているのか、
外からはわかりません。
卒業生のほとんどがその研究室に居座っているとなると、
あなたの卒業後の進路もやや不安な感じがします。



(D)卒業生の進路
 もし研究室の卒業生の就職先や現状が
書かれている場合には注目しましょう。
ポスドクになる人が多いか、
大学でポジションを見つけている人が多いか、
企業に就職する人が多いか、などなど。
もちろんこれはもう人それぞれの選択ですが、
その研究室の風土というか・・研究テーマや教育方針がアカデミック向きか、
企業向きかというトレンドがあるかもしれません。
将来の方向性が決まっているなら、
自分が行きたいのと同じような進路をたどっている先輩がいるかどうか調べてみるのもいいと思います。



 ちなみに私の研究室では・・・80%が企業へ就職します。
うちのラボの研究方針がかなり応用系なので、自然な流れかと思われます。
 就職先リストを見てみると、一見とても有望に見えます。
・・・しかし!!就職状況がいいのはアメリカ国籍の卒業生にだけで、
外国人留学生は非常に就職に苦労しているという裏の実態があります。
このトレンドは単純に、留学生はビザ取得の関係で
ハンディがあるという一般的なものもありますが、
もう一つはうちの研究室のテーマは国防系なので、
アメリカ国籍をもつ卒業生は国立研究所や国防系産業企業での
好条件な就職先(入社初年度から年収1200万!)もありえますが、
留学生はそういう所には就職できないので、
やや専門分野を離れないと就職先がないという背景があります。
まあ、ここまでの内部事情は当然HPには乗ってないので
入る前には知りようがありませんが。。



ここにあげた項目はきっと日本の大学院の研究室に入る時でも
調べたほうがいいのかもしれませんね。