若手弁護士の脱出劇
昨日ご紹介した腰掛け弁護士達 が、若手弁護士のExodus(脱出)第一波(小波)と致しますと、お次に来る第二波(大波)が4~5年くらい働いてみたあとで転職する若手弁護士たちです。
4年くらい働くと仕事のこともいろいろわかってくるし、周囲との競争も過酷になってきます。
シニア・アソシエイトまであと一歩、この職場でずっと働いていたらどういうところに落ち着くかという将来像も見えてきます。
あるいはシニア・アソシエイトに実際なってみて少しずつ身動きがとれにくくなっている時期でもあります。
脱出第二波には二つのタイプがあります。
第一タイプは他の法律事務所に移る人。
しかも他都市、外国が圧倒的に多いです。
第一線で歴史に残るような案件に従事して箔をつけたいというアンビシャスな弁護士達です。
いわゆる履歴書の見栄えUP作戦ってやつですね。
私の所属する部署は金融部門ということもあるのでしょうが、この部署から脱出していく弁護士達の行き先は圧倒的にロンドンが多いです。
私の知ってる弁護士だけでもう20人近くがロンドンに行ってるんじゃないかと思うほど。
NYに行く人もいますが意外と少ないんですよね。
この職場の弁護士達にとっては、カルチャーも近いロンドンがやはり一番人気のようです。
あとは、アジア系の弁護士達はシンガポールとか香港に渡っていく人も多いです。
第二タイプは法律事務所以外の企業に移る人。
銀行等の社内弁護士として働く道を選ぶ人たちが多いですが、弁護士専門のリクルート会社などでヘッドハンターになったりする人もいます。
法律という狭い範囲の仕事よりも、もっと広いビジネス全般に関わっていくことの方が魅力的に見えてきたり、仕事と家庭のバランスをとって行きたいと考えている人。
言って見れば法律事務所でこれからも働き続けることに無理を感じている人たちです。
インフラ整備などの巨大案件に運悪く引きずり込まれてしまった若手弁護士なんて、多種多様な案件に携わるチャンスもなく1年も2年もたった1つの案件の時間的奴隷となってすっかり消耗してしまうんですね。見ていても可哀想ですよ。
弊事務所はよくクライアントの企業様に弁護士を出向させるんですけれど、出向先の居心地がすっかり気に入って、そのまま転職してしまう弁護士は後を絶ちません。
事務所側にとっても、その人たちは今後クライアント側の窓口となってずっと関わり続けていくことになるわけですから喜んで送り出します。
こうやって沢山採用した司法修習生もあっという間に数が減っていきます。
(もちろん中途採用で補充はしますが)
事務所側からしてみれば第二タイプの脱出組は脱落組。
でも、ワタクシとしましてはこの弁護士達に一番共感いたしますね。
弁護士としてのキャリアという点では脱落かもしれませんが、精神的余裕のある人生を選択したという点ではむしろこちらの方がスマートなんじゃないかと思うのです。
人生、仕事だけが全てではないですよね。