結婚指輪紛失事件 | INDIGO DREAMING

結婚指輪紛失事件

結婚指輪は3年目にして紛失した。
紛失事件などと書くと今は戻って来たように聞こえるかもしれないが、今も紛失中である。

エンゲージリング とダブルでつけられるように流線型にカットされた金の指輪。

思い出した時に言ってみる。

「ねえ、もうなくしてから5年にもなるんだからさ~、いいかげんに代わりのを作ってよ!」


その度に金がないだの面倒くさいだの、なんだかんだと理由をつけられてうやむやにされる。

最後には「なくしたのは僕のせいじゃない!」「いーや、あんたがなくしたんだよ」っと責任のなすりつけあいとなり、決着のつかないまま時が過ぎる。

そしてまたしばらく指輪のことは忘れる。この繰り返しを過去5~6年続けている。


なくしたのは、合気道の道場でだった。

うっかり指輪をはめたまま道場に行ってしまったある晩、練習が始まる直前に指輪をはずして夫に預けたのである。

夫はジーパンのポケットに指輪を入れて、更衣室に向かった。

家についてみたらポケットの中にはエンゲージリングしかなかった。

翌日、道場のあたりをくまなく探し、管理人にも問い合わせたがついに帰らぬ指輪となった。

なくした張本人は夫だが、原因は私にある。
これが、決定的にどちらか一方の責任だったらツライところだろうが、我が家の場合、紛失も共同作業だったので、ケンカもどことなくヘラヘラしている。

だいたい指輪などというアクセサリー類は私にとってはブタに真珠であった。
結婚するまで指輪をはめたことがなかった私は、指が重くて重くて「こりゃあ、えらいこっちゃ」と内心思っていたくらいだから。

今、私の指は独身生活を謳歌している。



著者: トミー植松
タイトル: 英語の迷信エッセイ事典―結婚指輪の由来からスポーツ選手のジンクスまで