“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(想也くん編23)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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幸せ



23、真の幸せとは



展望デッキに移動した流星さんは美琴さんをベンチに座らせ、
横に腰掛けると涙を拭う彼女を慰め話しかけていた。
俺は少し離れた場所から二人を見守る。
決別に噎び泣く美琴さんの姿を見ていると胸を抉られるように痛い。
ここへ連れてきたのは間違いだったのではないかと、
己の判断の甘さに悔しさと情けなさが同時に襲ってくる。
佐伯さんとロビーで別れた桑染さんが、
項垂れる俺の許へ近寄ってきた。


桑染「どうした」
想也「桑染さん」
桑染「下で見た二人の姿がショッキングだったか」
想也「……」
桑染「それとも罪悪感でも湧いたのか」
想也「どちらとも、ですね。
  でも後者のほうがかなり上回ってますけど」
桑染「君は正しいと思って、彼女に遊大のことを話したんだろ」
想也「始めはそうでした。
  でも……あんな風に悲しむ美琴さんの姿を見ると、
  これで良かったのかって思えてくるんです。
  本当は俺のエゴなのかもしれないと」
桑染「エゴ、ね」
想也「はい。それに……」
桑染「それに?」
想也「俺はもうすぐ無職になります。
  美琴さんが病気で倒れたとしても助けることもできず、
  生活を立て直すまで自分のことで精一杯になるでしょう。
  佐伯さんのように『心配ないよ』と、
  彼女に寄り添える甲斐性がありません。
  中途半端な俺に何ができるんだと思うと」
桑染「君の気持ちは重々分かるが、
  今の美琴さんに何かしてやらないといけないのか?」
想也「はぁ……」
桑染「二人を合わせると言い出した君が、
  責任も罪の意識も感じるのは当然のことだよ。
  でも今の彼女に必要なのは、
  何も言わなくてもいつも見守ってくれる存在だと思うが?」
想也「いつも見守ってくれる存在」
桑染「別れっていうのは当人同士は勿論、傍が想像できないほど辛い。
  そして周囲の人間も見守ることしか出来ず、無力感に苛まれる。
  しかし辛さの先に幸せだと感じることもあるからな」 
想也「桑染さんも、
  俺と同じように罪の意識を感じたことがあるんですね」
桑染「ああ。これが生き地獄かと思うくらいな」
想也「その女性とは、その後どうなったんですか?」
桑染「その後か。
  再会した彼女は俺の妻になった。
  今じゃ、やんちゃな男の子の母親になってる。
  お腹には二人目がいてね」
想也「再会して今は桑染さんの奥さん」
桑染「とにかく美琴さんに君の本心を話して、
  経済的なことも現実的なこともそれからだろ。
  今の状況を話せば彼女は分かってくれるさ。
  一番の罪なのは自分の想いを話さないこと。
  そして一番悔しく辛いのは何も話せないことだからな」
想也「そうですよね……」


彼の言葉にも存在にも、北斗さんとは違った重みがあり、
これまで数々の苦労を背負ってきた広い背中は、
俺にはとても逞しく頼もしく映った。
離着陸する飛行機を眺めながら、桑染さんの横顔を見つめ、
彼の助言に従ってみようと決心する。
そこへ、落ち着きを取り戻した美琴さんと北斗さんがやってきた。
俺の隣に並び、佐伯さんの乗った飛行機を探す彼女の手を、
ギュッと握って声を掛ける。
彼女はその言葉を聞いた後に繋いだ手を握り返してくれた。


想也「今の俺は何もできないけど、
  これからも変わらず君の傍に居る。
  そして必ずまた逢いに行くから」
美琴「相楽さん。ありがとう……
  心が元気になったら、私も相楽さんと笑顔で逢いたいです」
想也「うん。必ず、笑顔で逢おう」


見上げた真っ青な空に静止して見える小さな飛行機を、
俺たちはただ無言で追いかける。
くっきりと浮かび広がる白い飛行機雲は一つの関係に終わりを告げ、
お互いを新たなスタートラインに立たせたかのように感じたのだった。



飛行機雲



佐伯さんと美琴さんの恋の結末を見届けた運命の日から、
早いもので2か月が経った。
時は9月に入って、
まだ気温35度超えの茹だるような熱さが続いている。
今日も俺の額や背中には大粒の汗が流れ、
首に掛けていたスポーツタオルで汗を拭う。
俺は長年務めたサカキファッション株式会社を退社し、
下請けであるムツミ物流へ再就職した。
本当なら別の土地で、まったく違う職に就きたかったのだが、
元同僚の中根湊子さんと,、

湊子さんのご主人で、俺の元上司でもある中根謡介さんの斡旋を受けた。
謡介さんは今年4月に常務に就任し、かなりの実権を握っていて、
俺のこれまでの実績を認めてくれる一人でもある。
仕事を辞めたことで今のマンションも出ていく羽目になった俺に、
困っているだろうと自宅の離れを住む場所として提供してくれたのだ。



今日も仕分け作業を終えると会社でシャワーを浴び、
まっすぐ謡介さんの家へ帰って湊子さんの手料理に舌鼓を打つ。
これが以前の我が家でなら、500mlのビールを2本と、
焼き鳥5本パックにポテトサラダを買って、
予約録画した映画を見ながら至福の時に浸っている。
今思えば、何と贅沢な生活を送っていたのだろうと、
人様の力を借りて生活している今の姿が情けない。
遠慮がちにご飯を頬張る俺に、謡介さんは穏やかに話しだす。


湊子「相楽くん、おかわりは?」
想也「いえ。もう充分頂きました」
湊子「遠慮しないでね
  ご飯もおかずもたくさんあるんだから」
想也「はい。ありがとうございます」
謡介「想也、少しは慣れたか?ムツミの仕事は」
想也「はい。今までの内勤職と違って肉体労働なんで、
  使ってなかった筋肉が毎日悲鳴あげてますけど何とか」
謡介「そうか」
想也「謡介先輩、この度は本当に感謝してます。
  収入が安定したら安いワンルームを借りて、
  先輩や湊子さんにご迷惑かけないようにしますから」
湊子「そんなに焦らなくていいのよ?
  うちの離れは謡ちゃんの弟が結婚して空いてるの。
  家って使わないとあちこち傷んでくるから、
  相楽くんが住んでくれて私たちも助かってるのよ」
謡介「そうだぞ。金の心配や至らない遠慮なんてするなよ」
想也「は、はい」
湊子「あっ。分かった。
  もしかして、彼女のこと?」
想也「えっ」
湊子「彼女を呼びたいけどうちだから遠慮してるんでしょ」
想也「いえ!そんなことは。
  それに俺に彼女なんて居ませんから」
湊子「隠さなくていいわよ。
  この間の勤務の時、響くんに会って色々聞いてるんだから。
  相楽くんにはゾッコンの女性が居るって」
謡介「そうなのか?
  もしそうなら遠慮なくここへ連れてこいよ」
湊子「私たちに紹介してほしいな」
想也「いえ。俺にはそんな女性は……」
謡介「なぁ。意地張らずにうちに戻ってこないか?
  ここだけの話だが、10月に大きな人事異動があって、
  商品企画部の上役は皆異動する。
  それに“株式会社オダス”に居た八瀬くんがうちに就社するぞ」
想也「和詩が“サカキ”に入るんですか」
謡介「ああ。実は僕がヘッドハンティングした。
  八瀬くんは君のプログラミングは凄いと言ってたし、
  また一緒に仕事が出来ると喜んでいたんだぞ」
想也「そんなこと……もう過去の話ですし、
  俺はやっちゃいけないことをしたんです。
  異動も解雇も当然の処置ですから」
謡介「あの日の出来事は、君だけの責任じゃない。
  大事な書類の提出があることを分かってて、
  係長も部長も指示を出さなかった。
  責任の一端は彼らにもあることだ。
  優秀な人材を無くすのは会社にとっても、
  僕ら役員にとっても大きな損害なんだ」
想也「で、でも」
謡介「僕が社長に事情を話せば、元いた部署にだって戻れるし、
  八瀬くんともまた仕事が出来るんだぞ。
  すぐに決めなくてもいいから、冷静になってよく考えろ。
  “サカキ”に居れば、君の大切な人を、
  迎えに行くことだって可能じゃないのか?」
想也「謡介先輩……」

  

謡介さんは俺の悩みを察して、
いつも良いアドバイスや提案をくれた。
それに甘んじ、先輩夫婦におんぶに抱っこの頼りない俺が、
その後美琴さんとどうなったのか誰もが気になるだろう。



ひまわり



仕事も住まいも、しかも食事までお世話になっている立場で、
傷ついた彼女を守り人生まで抱えられるはずもない。
美琴さんに炊きつけておきながら情けない話だけど、
結局気の利いた言葉すらかけられなかった。
流星さんと佐伯さんに抱えられるように帰っていった美琴さんと、
俺はあの日から会えていない。
ただ彼女を想う気持ちは膨らむ一方で、
彼女と共に歩む時間だけが止まっていた。
しかし時々だけど、流星さんからは連絡がある。
桑染さんが俺の仕事ぶりを気に入ったらしく、
「この世界に引きずり込んでやる」と言っているそうだ。
カメラにまったく興味のない俺に。


そして卓人や演人は変わらずで、
「就職祝いしてやるから飲みに行くぞ」と声が掛かる。
驚くことに、いつの間にか歌さんと演人が意気投合して、
頻繁に会っているという。
一週間前、卓人が職場を訪ねてきて、
久しぶりに一緒にラーメンを食った。
卓人曰く「あの二人、ありゃ付き合ってるな」と興味津々で話す。
演人からは何も聞いてはいないが、
あいつなら安心して任せられる。
そしてそれで二人が幸せになれるなら、
俺は心から祝福したいと思っている。


あれから、何もかもが大きく変わった。
四宮さんは写真館“アムール”をスターメソッドの神道社長に託し、
恋人の鈴さんとも別れた。
彼は美琴さんに話した通り、公務員への道へ歩んでいるとのこと。
まだ美琴さんへの想いは変わらないものの、
彼女の心を手にすることの出来ない虚しさも味わっていた。
そして美琴さんは“スーパーシャンティ”を退職し、
北斗さんの計らいで“アムール”からスターメソッド本社へ移動した。
そして彼は俺のことも気にかけてくれていて、
いつでも相談に乗ると言ってくれている。
でも今の俺は、自分の力で生活を立て直し、
堂々と彼女と逢いたいと考えていた。
そうしないとすべてが偽りになり、
佐伯さんに対しても胸を張れない。
変なプライドかもしれないけれど、
その先に俺が求める幸せがあると思うからだ。
しかしそんなクソ喰らえのプライドなんて、
捨ててしまえと叫ぶもう一人の俺が居る。
転職し見習い中の俺にはただの我侭だということも重々承知。
こんな軟弱で情けない男でも、
必要だと言ってくれる人たちが側にいる。
差し伸べられる多くの手に心から感謝せずにはいられない。



同日同時刻。彼女たちは新宿歌舞伎町のレストランに居た。
美琴さんと歌さんは食事しながら互いの状況を語り合っている。
彼女たちの友情は前のように平穏を取り戻しつつあった。



デザート


(都内某レストラン)


歌さんはバイキングプレートを運び席につくと、
グレープフルーツジュレを頬張りながら上機嫌で近況を話し出す。
しかし彼女のある一言で美琴さんは驚きの表情を浮かべ、
デザートフォークを持つ手が止まった。


美琴「えっ(驚)相楽さんの友達の響さんと!?」
歌 「そうなの。成り行き上ねー。
  正直言うと、私の押しの一手で落としたが正しいかな」
美琴「はーぁ。歌のバイタリティーは相変わらず健在ね。 
  じゃあ、もう付き合ってるんだ」
歌 「それがさ、まだなのよね。
  もう関係持っちゃったんだから一緒なのにさ」
美琴「か、響さんと関係をって……
  あははっ。そうなんだ」
歌 「うん。なのに想也さんに気を遣って、
  『想也に聞いてからでないと、
  僕たちは本当の意味の幸せになれない。
  あいつがうまく言ってるのを確認してからな』だって。
  まったく、彼は演人さんの親じゃないんだから、
  当人同士が良ければすべて良しだと思うんだけど。
  しかももう過去の話なんだからさ」
美琴「そうだけどね……
  私は何となく響さんの気持ち分からなくもないな。
  友情と愛情の狭間で複雑な心境なのね、彼は」
歌 「そんなものなのかね。
  てか、美琴が言うかなー」
美琴「ごめんごめん」
歌 「まぁ、私の近況はこんなところだけど、
  美琴はその後どう?想也さんとうまく言ってるの?」
美琴「それが……」


美琴さんは空港で佐伯さんと別れたあの日のことを思い返し、
歌さんに話しだした。
佐伯さんとの悲しい別れ。
そして空港に行こうと誘った言い出しっぺの俺は、
その場に立ち竦み、慰めの言葉一つも言えなかった。
その場に崩れるようにしゃがみ込む美琴さんの許へ、
真っ先に近寄ったのはあの二人で、
北斗さんと桑染さんが支えるように寄り添い連れて帰ったのだ。
それを聞いた歌さんは自分の事のように激怒する。



歌 「今の俺は何もできないって!?
  必ずまた逢いに行くなんて……
  何やってんの、想也は!」
美琴「歌……」
歌 「あっ。ごめん(苦笑)
  でもさ、私は納得出来ないよ。
  私は想也さんが美琴を好きだって言うから諦めて、
  新たな恋に前向きに進んでる。
  なのに、言い出しっぺの彼が美琴をほったらかして、
  今何もしないで必ず逢いに行くからなのよ。
  無責任極まりない」
美琴「もしかしたら、彼にも何か事情があるのかもしれないし」
歌 「それでももっとマシなこと言えるでしょ。
  好きなら、美琴が不安にならないような言葉言えるでしょ?
  私の言ってること、間違ってるかな」
美琴「ううん。歌は間違ってないよ。
  でも、相楽さんは遊さんとの同棲のことだけじゃなく、
  赤ちゃんのこともダメになっちゃったことも知ってるの。
  そんな重い現実を目の当たりしたら大半の人は引いちゃうわ。
  幻滅されてもおかしくない。
  それでも必ずって言ってくれて、それだけでも私は嬉しかったの」
歌 「美琴、甘やかしちゃダメよ。
  そんなことはあの人は百も承知で、
  美琴を好きになったんじゃないの?
  あの人はどれだけの人の心を振り回して、
  傷つけたか分かってないわよね」
美琴「歌。もしかして、まだ相楽さんのこと」
歌 「それはないから安心してよ。
  ただ意気地なしの想也さんに腹が立つだけ。
  人がしないような大胆なことしといて、
  肝心な時には何もしないあいつの身勝手さが許せないの。
  美琴。私がどうにかするから安心して」
美琴「歌……どうにかするって、何をするつもりなの」
歌 「演人と卓人さんの力を借りるの。
  ここを出て、今から電話して二人に会いに行くわよ」
美琴「えっ!?」


歌さんはバッグと伝票を持って席を立ち、
美琴さんも慌てて帰り支度をすると、二人で会計を済ませ店を出た。
そして歌さんはバッグからスマホを取り出すと、
直様演人へ電話した。



スマホ


  
(続く)



この物語はフィクションです。  





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