茶と湯
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永遠の生

今日のお軸は「山色連天」。
呉昌碩という方の筆になるもの。

春の山の色が鮮やかに生命が満ちて天に連なっていくという様をあらわしたのだとか。
なんとも壮大なことばです。





そして、お軸にあわせて、山の頂上から満開の花を見下ろす情景を生けた茶花。

軸と茶花が一体となって、壮大な自然絵巻を見せてくれたような気がします。




お茶の所作の一つひとつに生と死がこめられています。
晋彩先生はお稽古の最中、その動作に込められた意味を優しく教えてくださいます。

生と死。
人が死ぬってどういうことだろう。

心臓の鼓動は止まるけど、より多くの人の記憶の中で永遠に生きることが死というものではないかと今は思います。

思い出してくれる人がいるとき、その人の生き様を懐かしんで語るとき、その人はみんなの中で生きています。

だれも思い出す人がいなくなったときが本当の死ではないでしょうか。

だから、私達はこの国をつくり、護り、育て、必死に生き抜き死んだ先人達のことをできるだけ知り、思い出し、語り継ぐことが大切なように思います。

先人達と私たちは仲良く同居している。

茶道を学び、そう思うようになりました。

皆さんも、お近くのお茶室へぜひどうぞ。

先生の思いやり



寒風吹きすさび、雪残る今日でした。

皆さんお寒いでしょうと、今日は釣り釜に筒茶碗。

釣り釜とは、写真のように、天井から釣ってある釜です。
炉の下の空間が広く空くので、部屋が暖かくなります。
また、釣り釜は雲竜釜といわれる口の大きなもので、その分水蒸気が部屋の中に発散されるので、みんなが暖かく過ごせます。

その日の天候により道具を変え、茶室ができるだけ居心地のよい空間であるようにとの先生のお心遣いに心を打たれました。








お庭に咲いた椿の花を漆塗りの水差しに沢山生けてありました。
可愛いです。



お軸は「一を以って之を貫く」。
お筆は大徳寺前管長、雪底老師です。
ダイナミックで力強いお筆です。
貫き通せてない自分を振り返りました。


小さなことからコツコツと

晋彩先生、若先生と食事をご一緒する機会がありました。

「何が大切かは今の自分には分からないから、全てのことを丁寧にてを抜かずやることが大切だと思うようになりました。お茶をはじめるまでは、効率ばっかり追い求めていたような気がします。」と私がいうと、

「何事もコツコツと丁寧にやらなきゃダメだよ。」と晋彩先生は優しくおっしゃってくれました。

ところが、若先生が

「効率も大事ですよ。お坊さんが一番ものぐさなんです。」と、おっしゃいます。

若先生は禅寺で修行されたことがあります。その修行の経験を踏まえ、こういわれたのでしょう。

家に帰って考えたのですが、お坊さんの効率というのは、すなわち先人の知恵に沿うことなのではないか?それが一番悟りに近い。
私がいう効率は、仕事などで、自分の頭で考えた効率で、先人の経験に基づいた知恵の効率とは違うのです。

先人の知恵を借りること(知識ではダメ)。
知恵がない段階では何が大切か分からないのだから、失敗の蓄積による知恵の習得のためにも、全てをコツコツとやる。

お茶のお稽古で感じたことを、生活に活かしてみようと思う今日この頃です。










滅びの美学



初釜でお菓子を取り分けるとき、晋彩先生が仰いました。

「お皿に綺麗に盛られたお菓子を取り分けるとき、少しずつ崩れていく様をよく見ておきなさい。」

「私達は死ぬ約束の上に生まれている。いつかは死ぬということ。全ては崩壊に向かっているという道理を良く御覧なさい。」


その厳しい事実を直視するからこそ、自分も他人も生きとし生けるものが愛おしく思えてくるのでしょう。

茶道のちょっとした作法の中には、真理があり、道理があるのだと思いました。
一見何気ない動作ですので、当然、言われるまでわかりません。
言われてもサッパリわからない禅問答のような言葉も時々投げかけられます。

死ぬまでに、少しでもいいから、その境地に近づきたいという、憧れに似た気持ちを抱いています。


美しい所作

先生のの所作は、どの瞬間でも美しいです。
毎日をこんなに美しく、丁寧に生きていければと思います。

先生は、丁寧に丁寧に、一瞬一瞬を積み重ねておられるのだと思いました。

私自身を振り返ってみると、美しくない一瞬のほうが多いですし、気をつけてないと、姿勢がすぐに乱れてしまいます。

それでも、気付いたら、腰骨を立てる。
笑顔で人と接する。
履物をそろえる。
素直に謝罪する。

そんなことを積み重ねて先生の美しい所作に近づいて生きたいと思うようになりました。

難しいことや、カッコいいことを言い並べる人よりも、立ち居振る舞いが美しい人になりたいと思う今日この頃です。


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